第300話、最後の戦いへ
「のわぁぁぁぁーーーーーっ!?」
アリアドネは、グリフィン・フリューゲルに掴まれて空を飛んでいた。
なぜかネコを抱き、とんでもないスピードでオストローデ王国の平原を飛んで行く……そして、たくさんの人が集まる場所を発見した。
「この反応……まさか!?」
生体反応。
人間やドワーフ、獣人や亜人はわかる。だが、アンドロイドの反応があった。
戦乙女以外のアンドロイド。まさかと思い、グリフィン・フリューゲルは着陸する。そこには、仲間であるアンドロイドと、自分が操作していた生徒たちが揃っていた。
「アリアドネ……あなた、破壊されなかったのね」
「アナスタシア……それはこっちのセリフ」
「おどれ、よく儂の前に顔を出せたのぉ……っ!!」
「げっ、ご、ゴエモン」
センセイの修理を拒否し、必要最低限の行動ができるように直されたゴエモンだ。
歪な鎧姿に、元の顔はボロボロに欠けている。欠けた部分は布で覆い、不完全だが人間らしく見えなくもない。
ゴエモンは、自分の電子頭脳に細工をしたアリアドネに向け、刀を向けた。アナスタシアが止めるがまるで聞いていない。
「儂の頭ん中に細工した報い、受けてもらおうかのぉ……」
「ひぃっ!? あ、あれはアシュクロフトの命令で……っ」
「ゴエモン、やめなさい」
「問答無用……ッ!!」
ゴエモンは抜刀し、アリアドネを両断しようとした……が、キキョウが割って入り剣を受け止める。
誰もが動けない中、キキョウだけが動いた。
「申し訳ありませんが、このような幼子に剣を向けるなど、あなたの正気を疑います」
「……ッチ。わかったわかった。だが、アリアドネ……償いはしてもらうからの」
アリアドネはブンブン首を振る。
自我の芽生えた今、命は惜しい。修理するしないの問題ではなかった。
剣を収めたゴエモンはどっかりと地面に座り、押し黙ってしまう。
ホッとしたのも束の間、アリアドネの手にいたネコが飛び出してしまう。
2匹の猫は生徒の中……三日月の元へ向かう。
三日月は目を見開き、2匹の猫を抱き上げた。
「とらじろー!! しろすけ!!」
『にゃあう!!』『にゃあご!!』
「あぁ……よかったぁ……無事だったんだぁ……っぐぅ」
三日月は2匹を抱き、そのまま地面に崩れ落ちる。
能力を得てすぐに仲間にした最初のネコ。三日月がオストローデ王国から脱走したときに、この2匹は残ったのだ。
こうして、再会できたのは……。
「ありがとう……ありがとう」
「へ? あ、いや、うん」
アリアドネは、三日月に感謝された。
感謝などされたことのないアリアドネは困惑するが、どうしていいかわからずにアナスタシアを、そしていつの間にかいたハイネヨハイネを見る。
「あ、ハイネヨハイネ!! あんたどこに」
「私は、見守るだけ」
「……意味分かんない。と、えーと……まぁとにかく、あたしはセンセイに助けられたから。うん」
強引に自分の立場を説明し、アナスタシアとハイネヨハイネの間に割り込んだ。
これで、残るはセンセイと戦乙女たちだけ。
この場にいる者達は、オストローデ王城を見た。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
のっしのっしとモーガン・ムインファウルは進み、ようやく王城に到着した。
王城はデカく、ところどころの壁に亀裂が入っている。これが『バシレウスルーム』とやらの力なのか。
城の入口まで来て、モーガンから降りる。
「ふむふむ、生体反応はありませんね。敷地内にある騎士の宿舎に人間の反応はありますけど、解放された人間で間違いないです」
ジークルーネが空中投影ディスプレイを出して確認する。
オルトリンデがキョロキョロし、ポニーテールを揺らしながら言った。
「ここにブリュンヒルデがいんのか?」
「先程のTypeーPAWNのお話が正しければ、ブリュンヒルデちゃんは地下にいるはずですわ」
「ブリュ姉なら負けないと思うッスけど……どうなんすかねー?」
「行けばわかるよ! センセイ、いこ!」
「あ、ああ」
アルヴィートが俺の袖を引っ張り、戦乙女たちと中へ入る。
城に入ってすぐ、大きな穴が空いていた。
ジークルーネが調べると……。
「ここ、地下に通じてる……お姉ちゃんが開けたのかも」
「強引に開けたのか……ブリュンヒルデらしいな」
穴を覗き込むと、けっこう深いことがわかる。
さすがに怖いな……石でも落としてみるか。
「行くぞ」
「え」
シグルドリーヴァが俺を掴み、何の躊躇いもなく飛び降り……えぇぇぇっ!?
シグルドリーヴァが先陣を切り、残りの乙女たちも続々と飛び込む。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
「やかましい。舌を噛むぞ」
「うぎゃぁぁぁぁーーーーーっ!? おっぶっ!?」
着地。衝撃が俺を襲う。
シグルドリーヴァは適当に俺を離し、周囲を確認した。
「ジークルーネ、周囲のマップ検索を」
「はーい、姉さん」
「う、おぉぉ……マジでビビった」
「情けない奴だな……この程度、海底での戦いに比べたら屁みたいなものだろう」
「いやいや、いきなりすぎるんだっての!!」
「私もみんなと冒険したかったなー……」
「アルちゃん。この戦いが終わったら、センセイがいろんなところに連れて行ってくれますわ」
「やった!」
おいヴァルトラウテ、勝手に決めるなよ……まぁいいけど。
マッピングを終えたジークルーネが全員にデータを共有し、ブリュンヒルデがいると思われる最深部に向かって歩き出す。
道中、敵はいない。というか静かすぎた。
「…………」
最深部近くまで来ると、全員が無言になる。
そして、最深部……扉は破壊されていた。
そして――――。
『お待ちしていました。センセイ』
「ブリュンヒルデ……お疲れ」
ブリュンヒルデが、俺たちを出迎えてくれた。
真紅の瞳、長い銀髪。そして、いつもと変わらない無表情で。
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