第301話、LAST BOSS・『Atle・za・ture・O-VAN』①/センセイ最後の戦い
「お姉ちゃん!」
「お姉ちゃん!」
『…………』
ジークルーネとアルヴィートがブリュンヒルデに抱き着く。
ブリュンヒルデは無表情で受け止め、とくに何かするわけでもなかった。ジークルーネとアルヴィートは胸に顔をうずめているのにな。
「ったく、心配させんなよ」
「これで全員揃いましたわね」
「はぁ~、ブリュ姉も無事でよかったっス……」
オルトリンデたちも安心したようだ。
オルトリンデはブリュンヒルデに頭を撫ででは拒絶されてキレてるし、ヴァルトラウテはニコニコしてるし、レギンレイブはオルトリンデの八つ当たりを受けてるし……。
すると、シグルドリーヴァが六人を見てボンヤリしていた。なんか珍しい光景だな。
「…………」
「どうした?」
「…………いや、私は私、それだけだ」
「…………知ったんだな」
「ああ。私のヴァルキリーハーツはcode04、ブリュンヒルデの物なんだろう? 初期化されてこの身体に搭載され、私はcode01となった」
「でも、お前はお前だ。みんなの姉貴分ってことに変わりないさ」
「……そうだな」
「それと、ブリュンヒルデも同じだ。ヴァルキリーハーツの違いなんて関係ない。あの子はブリュンヒルデ、お前はシグルドリーヴァだ。俺はそう思う」
「……ありがとう、センセイ」
「ん、ああ」
うぉぉ、シグルドリーヴァが笑ったよ……。
こいつが笑うのって「ふん、面白い……八つ裂きだ」とか、「くくく、かかってくるがいい」とか、そんなときばっかりだと思ってたのに。
にこやかな、柔らかい笑み……まさか操られてんじゃ。
「不快な表情だな……斬るぞ」
「すみませんでした」
何を考えてるのかバレたようだ。
ここまで来て死にたくないので素直に謝り、最下層の中を見る。
鉄の巨人っぽいのがいた。胸に穴が空いてるけど……ブリュンヒルデがやったんだよな?
『センセイ』
「ん」
『これを。Type-QUEENの電子頭脳です』
「おお……」
ブリュンヒルデが差し出したのは、手のひらサイズのマイクロチップだった。
これがアンドロイドの頭脳であり、ヴァルキリーハーツ以外にブリュンヒルデたちにも搭載されている。
『Type-KINGの電子頭脳は破壊。サブコンであるType-QUEENの電子頭脳は念のため残しておきました』
「そっか。何かに使えるかもな……」
とりあえず、電子頭脳はブリュンヒルデに持っててもらう。
ブリュンヒルデは、部屋の中央まで進むと、切れ込みの入った床に手を突っ込み引き上げた。すると、その先に階段が通じていた。
『電子機器に干渉されない、アナログの開閉式ハッチです』
「なるほど。アナログ式とはな」
この下が真の最下層。オストローデ王国の頭脳が眠る場所。
俺は気を引き締め、咳払いする。
「みんな、この下がオストローデ王国の頭脳……『
「「「「「「「…………」」」」」」」
みんなが、俺を見ていた。
そう、最後の戦いは物理的な殴り合いじゃない。俺が直接『接続』して、内側からシャットダウンする。いわば電子の戦いだ。
最下層に続く階段を、ゆっくりと下りていく。
「何が起きるかわからない。だから、最後まで護衛をよろしくな」
「ふん……まぁいいだろう」
「けっ、長かった戦いもようやく終わりか……」
「わたくしたちの存在意義も、もうすぐなくなりますのね」
『…………』
「なんか寂しいっスねぇ……」
「わたしたちの旅も、終わりかぁ……」
みんな、どこか寂し気だった。
戦うために生まれた戦乙女型。その存在意義が終わろうと─────。
「じゃあ、終わったらみんなで遊べるんだね! えへへ~……センセイ、私だけ置いてきぼりだったから、今度はいろんなところに連れて行ってね!」
と、アルヴィートが言った。
これには、俺もみんなも驚いていた。
そうだ。存在意義なんて関係ない。彼女たちの人生は続く。物語に終わりなんてないんだ。
楽しいことだっていっぱいある。だったらせめて、この子たちが生きていける世界を俺が作ればいい。
俺の手なら、それができる。
俺は、巻き込まれてこの世界に来たんじゃない。
人とアンドロイドの手を繋ぐために、この世界に来たんだ。
「……そうだな。アルヴィートだけじゃない。今度はみんなで行こう。世界は広いんだ、行ったことのない場所なんていくらでもある」
そして、最下層に……『
「……これが」
『
それは、完全な球体だった。
銀色に輝く球体。巨大なパチンコ玉とでもいえばいいのか。大きさは直径10メートルはあり、台座の上で少しだけ浮いている。
特に機械やコードに繋がれているわけじゃない。この部屋も何もないし。ドーム型の部屋に浮かぶ巨大なパチンコ玉という表現がぴったりだった。
「よし、あとは俺に任せろ」
俺は、一歩ずつ進む。
『
「……終わらせろ」
「センセイ、やっちまえ!」
「応援してますわ!」
「やっちゃえっス!」
「センセイ、負けないで!」
「がんばれー!」
戦乙女たちの声援が、こうも心地よいとは。
「ああ、負けないさ!」
俺の名前は相沢誠二……どこにでもいる、しがない教師だ。
『センセイ』
これは、俺の最後の戦い。
機神の手を持つ冴えない教師と、この世界のアンドロイドの頭脳の、最終決戦。
ブリュンヒルデは、笑って言った。
「ご武運を」
負ける気がしない。
この世界を救う最後の戦い。
さぁ、行こうか。
「『
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