第297話、MID BOSS オーバーロード・Type-INFINITY③/乙女機神ヴァルハラー・メイデン

 七つの遺産の真の姿。真なる戦乙女。オーディン博士の最高傑作。

 呼び方はいくらでも思いつく。七つの『戦乙女の遺産ヴァルキュリア・レガシー』の合体形態。その名も『乙女機神ヴァルハラー・メイデン』だ。

 俺は、ブリュンヒルデが座るはずのコックピットに座り、ゲームセンターにあるような操縦桿を握る。

 

「みんな、力を合わせて戦うぞ!!」

「「「「「「  」」」」」」

「お、おい。放心してる場合か!! マニュアルインストールして!!」


 目の前には、漆黒のロボットが無防備に立っている……ああそうか、みんなと同様、あっちもフリーズしてるのかね。

 この乙女機神は、戦乙女型七人の力で動くロボットだ。対アンドロイド軍専用の最終兵器……オーディン博士、アンドロイド軍もロボットを出すこと知ってたのかな。

 とにかく、ブリュンヒルデの代わりに俺がしっかりしなくては。


「メインの操縦は俺がやる。お前たちは武装の制御を頼む」

「「「「「「は、はい」」」」」」


 おいおい、みんな敬語になっちゃったよ。そんなに驚くことなのか?

 すると、アシュクロフトの操る漆黒のロボ、INFINITY・OVERGEARが大剣を構える。

 俺も操縦桿を握り、クルーマ・アクパーラが変形した盾とヴィングスコルニルが変形した槍を構えた。


『最後に相応しい戦いができそうですね……センセイ』

「ああ。お前との因縁もここでケリつけてやる。まだラスボスが残ってるからな!!」


 こいつを倒してブリュンヒルデの元へ。

 そして、『Atr・za・trueアトレ・ツァ・トゥーラO-VANオーヴァン』を完全に停止させて、この戦いに終止符を打つ。

 

『さぁ、行きますよセンセイ!!』

「ああ、行くぞーーーーーッ!!」


 俺とアシュクロフト、最後の戦いが始まった。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ◇ ◇ ◇ ◇


 ◇ ◇




「な、なんだ、あれは……」

「アホみたいな光景ね……」


 ルーシアとアルシェは、遥か前方で繰り広げられる戦いに呆れていた。

 突如として現れた大量の兵器。間違いなくセージの仕業だろう……能力の覚醒が大規模なものになるとは聞いたことがあるが、ここまで大きくなるのは聞いたことがなかった。

 

「あの……」

「ん?」

「相沢先生は、大丈夫でしょうか」


 一人の少年が、ルーシアとアルシェに聞く。

 中津川将星は、不安の表情を隠しきれていなかった。


「大丈夫だ。それより、きみは仲間をまとめるように言われたのだろう? 心配するなら、セージの信頼に応えるんだ」

「……はい」

「ほら、仲間が呼んでいるぞ」

「あ……」


 篠原が、中津川を呼んでいた。

 不安がる生徒を宥めているようだが、どうも手が足りていない。助けてくれと呼んでいる。

 中津川は小さく息を吐き、篠原の元へ向かった。

 

「ルーシア、迷える少年に手を差し伸べるとは……やるじゃん」

「当然のことを言ったまでだ」


 中津川が皆をまとめ、篠原が寄り添い、三日月のネコと三日月本人は周囲を警戒している。まだ、アンドロイド軍の兵器が近くにいるかもしれない。そんな時に戦えるのは、自分たちだけ……そして、この場に避難してきた他種族の連合軍だ。


「よぉ兄貴、くたばってねぇようだな」

「ケッ、てめーもな、ゼファールド」


 ゼドとファヌーア王も再会を喜んでいる。

 他にも、ジークルーネの残したビーハイヴ・ワスプが負傷者を治療したり、前線の光景を見守る者や、エルフ族などは役目は終わったとばかりに帰る者までいた。

 

「いいのか?」

「ん?」

「エルフ族。お前の仲間だろう?」

「別に。もうあんなのどうでもいいわ。帰りたいなら帰らせれば?」

「そうか……」


 本当にどうでもいいのか、アルシェは前を向いたままだ。

 今は、セージが戦っている。何かできればいいのだが……と、ルーシアは考えるが。


「待つこと。アタシたちにはそれしかできないわ……もう、手に負えるレベルじゃないし」

「ああ。歯がゆいな……」

「だったら、待たなきゃ。あんたみたいないい女が待ってるだけでも、セージはきっと喜ぶわよ?」

「なっ……べ、別にセージとはそういう関係では」

「ふふ。先のことなんてわかんないしねー」

「アルシェ!!」


 待つこと。それが、今のルーシアたちの戦いだった。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ◇ ◇ ◇ ◇


 ◇ ◇




 決闘のように、乙女機神とINFINITY・OVERGEARは円を描きながら回る。

 手には槍、相手は剣、こっちには盾、あっちは背中に砲身……武装的にはこっちが不利か。でも、武器は槍だけじゃない。


「…………」

『…………』


 焦るな、これはコンティニューできないバトル……絶対に負けられない。

 そして、INFINITY・OVERGEARが動いた。


「盾!!」

「はいっ!!」


 大剣の一撃をクルーマ・アクパーラの盾が受け止める。俺は受け止めたまま槍を振るうが、INFINITY・OVERGEARは瞬時離脱、背中の砲塔から光弾を発射した。

 盾で光弾をガードし、こちらから仕掛ける。

 着地の場所を計算し、背中のブースターを噴射、接近して槍を振るうが、着地と同時に大剣で受け止められる。


『ほう、なかなか』

「こっちはギリだけどな……!!」


 槍と大剣がギリギリと鍔迫り合いを起こす……くそ、パワーはあっちが上みたいだ。少しずつ押されている。

 

「ふんがっ!!」

『むっ!?』


 すると、オルトリンデが下半身を操作し、INFINITY・OVERGEARの脇腹に蹴りを入れた。態勢が崩れ、前蹴りを喰らわせて距離を取る。


 やばいな、やっぱり強いぞあいつ!!

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