第277話、BOSS・『Type-SUSANO・八岐大蛇』②/決着
空中に浮かぶ無数の剣。
たった一本の巨大な剣。
シグルドリーヴァとゴエモンの戦いは、最終局面に入っていた。
離れた場所では爆音と銃撃音が響いている。だが、シグルドリーヴァとゴエモンにはまるで聞こえていない。
あるのは、剣と剣の戦い。
「…………」
「…………」
互いに、ピクリとも動かない。
なにが切っ掛けなのか、先に動くと負けなのか、それとも同時に動くのか。
シグルドリーヴァとゴエモンの視線がぶつかったまま、一分が経過した。
このまま放っておけば、永遠にこのままかもしれない。
だが――――――。
きっかけは、ほんの小さな爆音。
オルトリンデが放った銃弾が、Type-JACKの頭部を砕いた。そして、Type-JACKが静かに崩れ落ち―――――。
「「ッ!!」」
シグルドリーヴァとゴエモンは、同時に動いた。
◇◇◇◇◇◇
「『
数万本の剣が、一斉に飛んできた。
それこそ、雨のように、針のように、棘のように。
無剣流の奥義。それは、バンショウが打ち倒し受け継いだ剣士の『魂』である剣を解放する技。つまり、飛来する剣全てが、バンショウの人生であり生き様なのだ。
「確かに、悪かった……」
これは、本物だ。
全てが、この何万本の剣全てが『本物』だ。紛い物などではない、生きた剣士の魂が宿った『生き様』だ。
シグルドリーヴァは謝罪する。
ゴエモンは、バンショウを打ち倒し、受け継いだのだ。
この『無剣』は、今やバンショウとゴエモンの『生き様』なのだ!!
ならば、引くことはできない。
「―――――参る」
シグルドリーヴァは、『
そんなことをすれば――――。
「ほう!! こいつはすごい!!」
ゴエモンは驚き、歓喜した。
シグルドリーヴァの身体に剣が刺さる。だが、それら全てを無視し、頭部だけを守りながらシグルドリーヴァはゴエモンの元へ向かう。
天晴れな行動にゴエモンは笑った。
「だが、我が奥義を抜けれるものかぁぁぁぁぁっ!!」
「押して参る!!」
バキン、ガキン、ビシギシッ。金属が擦れ、砕ける音が響く。
シグルドリーヴァの左腕が吹き飛び、右足に剣が何本も突き刺さる。ボディにも剣が貫通し、穴だらけになる。部品が散乱し、シグルドリーヴァの身体はゴエモンの数メートル手前で完全に停止した。
『…………』
「見事……」
シグルドリーヴァは、機能停止寸前だった。
真紅の瞳はチカチカ輝き、左半身が殆ど消失している。
それでも、一騎打ちを望み、ゴエモンに挑んだ。
『ま、だだ……』
「…………」
『お前、は、一人、じゃな、い……』
「…………?」
シグルドリーヴァは、発声装置が傷んでいるのか、聞こえづらい音声で話す。
ゴエモンは剣を構えたまま、最後の言葉を聞くことにした。
『お前と、その剣に込められた想い、見事、だった。でも、私は、知った。私、も、一人じゃ、ない。一人じゃ、できない、ことを』
「そうか……確かに、お前の一本は強い。だが、想いの差で儂の勝利じゃ」
『ち、がう。私は、一人、じゃ、ない』
ギギギギギ、ビシビシ、グギギ。
全身を軋ませ、シグルドリーヴァは立ち上がる。部品の四割を失った身体で、シグルドリーヴァは残された左手で大剣を握る。
『これ、が……私の、奥の手だ!!」
「なっ……」
シグルドリーヴァは、大剣を振り上げた。
ゴエモンは、すぐに反応できなかった。
何故なら、あれだけ損傷していたシグルドリーヴァの躯体が、一瞬で『修理』されたのだ。まるで魔法のように、シグルドリーヴァのボディが発光、気が付くと、あれだけ損傷していたボディが完全に復元していた。
そして――――ゴエモンの身体は、一瞬で斜めに両断された。
双剣を構えたが、『
ゴエモンの身体がずり落ち……地面に転がった。
「……一体、何をしたんじゃ?」
純粋な疑問だった。
シグルドリーヴァは、無傷でゴエモンを見下ろし、自分の長い銀髪を摘まむ。
「センセイのかけた保険だ。ボディの一部……この場合は『髪』をセンセイに切って渡し、私たちの合図でセンセイは『髪』に『
「……なるほどのぉ。お前さんも、一人じゃなかったのか……」
「卑怯と言うか?」
「いんや、儂も一人じゃなかったからのう……おあいこじゃ。カッカッカ!」
「ふ……そうか」
シグルドリーヴァも、ゴエモンも笑った。
アンドロイドらしくない。まるで人間のような笑いだ。
「……さて、もういいじゃろ。儂を破壊しろ」
「…………いや、ダメだ」
「はぁ?」
「お前の元の躯体データはお前の電子頭脳の中にあるか?」
「お、おい。何言っちょる? 儂を破壊」
「しない。お前にはまだ利用価値がある。戦ってわかった、お前には心が芽生えている……システムを打ち破り、人の心を持つアンドロイド。私たちと同じだ」
「…………」
「悪いな。お前は破壊しない……生きろ」
「……ッカ」
シグルドリーヴァは、ゴエモンの半身を掴み、持ち上げる。
「一度、センセイの元へ向かう……いいな?」
「好きにせい」
どことなくゴエモンが嬉しそうに見えたのは……きっと気のせいじゃないだろう。
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