第273話、上空の乙女たち
上空。
第二着装形態『飛空艇アルビオンハイウィンド』を操るレギンレイブは、遥か下である地上の様子をモニターで確認。笑いが止まらなかった。
「あっはははは!! 敵アンドロイドは空を飛ぶ技術を持ってないみたいっスねぇ! 長い年月で航空技術が失われたとみて間違いない! にゃっははは、空はウチのもの!」
そう、敵機は空を飛ぶことができない。
これがわかっただけでも大収穫。魔術や武器の届かない上空で、レギンレイブを堕とすことはまず不可能である。
「やかましい。それより、作戦開始だ。レギンレイブ、てめーは空から支援、ヴァルトラウテはアタシと人間たちのガード、アタシは敵アンドロイドをグッチャグチャに破壊する」
「オル姉、表現が怖いっス……」
「お姉さまですからね」
「やかましいっつの。それよりレギンレイブ、敵の上位個体を確認してシグルド姉とアルヴィートに位置を送れ。雑魚は吐いて捨てるほどいるが、上位個体はタイマンじゃねーときつい。特に、ゴエモンとか言う個体はな」
「わかってるっスよ……」
レギンレイブは、飛空艇に搭載された高感度センサーで周囲の敵を検索する。
「それにしても、素晴らしい飛空艇ですわね。これが最初にあれば、大陸の横断も楽でしたのに……」
「ま、仕方ねーな。遺産を見つけるのも大変だし、七つの遺産からこれを最初に見つけたところで、レギンレイブがいないとまともに動かせないからな。ったく、アタシたちが見つけてやったってのに、シグルド姉に付いて行くなんてな」
「うっ……で、でもでも、センセが海底に行けたのは、ウチとシグルド姉がいないと無理だったっス!」
「ふふ、センセイとレギンちゃん、シグルドお姉さまの三人で海底の冒険……とっても楽しそうですわね」
「そりゃもう! サメの集団と戦ったり、可愛いシャチのリグくんとお友達になって背中に乗せてもらったり、超デカいクジラの化け物と戦ったり……とっても楽しかったっスよ!」
「ほぉ……」
ほんの少しだが、センセイとの旅をしたレギンレイブ。
間違いなく、面白かった。また冒険をしてみたいと思うほどに。
「ま、次は飛空艇があるからどこでも行ける。ヴァンピーア王国には行ったことないみてーだし、今度はみんなで行けるだろ」
「え!! それってウチも!?」
「ああ。おめーは足代わりだ」
「なんか扱い雑っス!?」
「ふふっ、昔に戻ったみたいですわ♪」
七人の姉妹は揃ったのだ。
この戦いが終われば、きっとまた昔のように笑い合える。
もちろん、センセイも一緒に……。
「……反応あり! 上位個体発見っス!」
「よし、位置を送れ。それと、アタシらも行動開始だ!! 気合入れてぶっ壊すぞ!!」
乙女たちの戦いが、幕を開ける。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「さーて、行きますか」
「ええ。ではオルトリンデちゃん。行ってきます」
「いってら~」
オルトリンデとヴァルトラウテは、飛空挺から飛び降りた。
高度は千を超えている。だが、散歩にでも出かけるような軽さで、実にあっさりと飛び降りたのである。もちろん、パラシュートなど付けていない。
「開幕……ぶっ放ぁ!!」
オルトリンデは『乙女激砲カルヴァテイン・タスラム』を呼びだし、変形させる。
形状は『
「どうよ?」
「お見事、ですわ」
空中で交わされる会話。
弾丸は、Type-JACKの電子頭脳を正確に撃ち抜き破壊した。
アンドロイドと人間の混成軍。隊列も人間とアンドロイドの組み合わせで、人間を殺せないとわかっているからこその編成だ。もしアンドロイドで編成した隊があったら、纏めて破壊されている。
人間との混成により、大規模な攻撃はできないと考えての編成だ。
「ヴァルトラウテ、壊されんなよ」
「ええ。お姉さまも無茶は厳禁ですわよ」
『オル姉、ヴァル姉、援護は任せるッス!!』
レギンレイブの通信が頭に響く。
オルトリンデは、飛び降りた時からずっと笑っていた。
「お姉さま、楽しそうですわね」
「おめーもだろ? だってよ……」
地上まであと百メートル。
オルトリンデは『皇牛モーガン・ムインファウル』を、ヴァルトラウテは『亀翁クルーマ・アクパーラ』を召喚。翠亀と黒牛の背に乗り、人間とアンドロイド軍と対峙する。
老若男女が一糸乱れずビームフェイズガンを構え、一斉に発砲。ヴァルトラウテの『乙女絶甲アイギス・アルマティア』が展開され、オルトリンデとヴァルトラウテを守る。
圧倒的数だった。
二百万近いアンドロイドと人間が、地上に降りた二人に襲い掛かる。
だが、オルトリンデは笑っていた。
「アタシら姉妹が揃って戦うなんざ、随分と久しぶりだからなぁ!!」
オルトリンデのスナイパーライフルが、Type-JACKの電子頭脳を正確に射貫く。その間もビームフェイズガンの発砲は続くが、ヴァルトラウテが防御する。
上空から、レーザー光線が降り注ぎ、アンドロイドを破壊していく。
「オラオラ、かかって来やがれ!!」
地上での戦いは、白熱していた。
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