第271話、最後の確認・そして戦いへ。

「…………反応あり! センセイ、来た!」

「マジか……」


 ジークルーネが、エンタープライズ号の中で言う。

 エンタープライズ号と馬たちは、遺跡の中に隠した。ここならしばらくは見つからないだろうし、ルーシアたちに守ってもらえる。

 遺跡の外では、戦乙女たちが勢揃いだ。俺も外に出る。


「みんな、ちょっといいか。いざという時のために、保険を掛けておきたい」

「保険?」

「ああ」


 ジークルーネを除いた6人がキョトンとしている。

 これは、俺にしか使えない、俺だけの保険だ。これを思いついたとき、本当に自分を褒めてやりたくなったぜ。

 保険の内容を話すと、みんな驚きつつも協力してくれた。これで安心だ。


「ジークルーネ、敵の戦力は?」

「はい。ええと……なんだろう? アンドロイド、多数の人間……あと、地中に大型熱源多数。やっぱり、とんでもない数だよ」

「映像は出せるか?」

「はい、センセイ」


 ジークルーネが手をかざすと、大きな空中投影ディスプレイが展開される。

 そこには、デッサン人形みたいなアンドロイドと、どう見ても普通の人間が写っていた。アンドロイドはType-JACKで間違いない。


 問題は人間だ。

 表情の死んだ人間。老若男女、手には不釣り合いなビームライフルを持っている。情報では操られているらしいけど……。

 そして、見えた。


「……みんな」


 生徒たちが、いた。

 オストローデ王国から出てくる人間やアンドロイドたちの後方に、見覚えのある制服を着た少年少女たちが並んでいる。まるで、生徒たちが後方から操っているように……見えない。

 生徒たちの表情もまた、死んでいた。


「…………っ」


 大丈夫。焦るな。スパコンを止めればいいだけだ。

 俺の仕事は一つ。オストローデ王城に乗り込んで、アンドロイド軍のスパコンを停止させるだけ。

 落ち着け、落ち着け……。


「……よし、最後に確認するぞ」


 作戦というほどでもない。各々がやるべきことをやる。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「オルトリンデ、ヴァルトラウテ、レギンレイブ。お前たちは雑魚アンドロイドを無力化してくれ。人間は殺すな、アンドロイドはぶっ壊せ。カラミティジャケットやウロボロス、量産型LUKEも出てくると思うけど、大丈夫か?」

「問題ねぇ。むしろやり甲斐あるね」

「守りはお任せを」

「うっしし、空を制するウチにお任せ~♪」


 code02オルトリンデ。

 code03ヴァルトラウテ。

 code05レギンレイブ。


 砲撃型のオルトリンデ、空中戦のレギンレイブがアンドロイドたちを蹴散らし、二人のガードをヴァルトラウテがする。もちろん、遺産の力をフルに使ってだ。


 皇牛モーガン・ムインファウル。

 亀翁クルーマ・アクパーラ。

 隼帝グリフィン・フリューゲル。

 

 オーディン博士の遺した遺産の力。ここで全力を発揮させる。

 

「三人とも、ガチで大暴れしていいぞ」

「っへへ。その言葉を待ってたぜ」

「うふふ、楽しみですわ」

「ウチは空を飛ぶだけッス!」


 頼んだぞ、みんな。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「シグルドリーヴァ、アルヴィート、お前たちはアンドロイドの主力を倒して欲しい。強いのが何体かいるはずだ」

「任せろ。斬る」

「アナスタシアは私が!」


 Type-SUSANOとType-WIZARDがいるはず。ゴエモンとアナスタシア。ゴエモンは修理され、アナスタシアは魔術の使い手。間違いなく強敵だ。

 でも、遺産の力がある。大規模戦闘を得意とするオルトリンデたちとは違い、シグルドリーヴァとアルヴィートはタイマンで力を発揮する。

 

 code01シグルドリーヴァ。

 code07アルヴィート。

 騎熊王ウルスス・アークトゥルス。

 紅蓮破龍サンスヴァローグ。


 きっと、この二人ならやってくれる。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ジークルーネ、お前には負担がかかる仕事を任せたい」

「はい、センセイ。わたしに任せてよ」

「うん。たぶん、かなり負担がかかるから、しばらくは俺が付いている」

「やった! センセイと一緒!」

「あ、お姉ちゃんばっかりずるいー!」

「ごめんねアルちゃん。でも、全部終わったらいっぱいセンセイに甘えていいよー」

「やったぁ!」


 アルヴィートが俺の腕に甘え、反対側にはジークルーネが。

 この二人、末っ子だから甘え上手なんだよなぁ。


 code06ジークルーネ。

 彼女にしかできないこと。そして、彼女の遺産でやってもらうこと。


 それが成功すれば、戦局は変わる。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 そして、最後だ。


「ブリュンヒルデ。お前には大役を任せる」

『はい、センセイ』

「オストローデ王城へ先行してType-KING、『不死王ノスフェラトゥ・キングヴァンホーテン』を倒してくれ」


 ロキ博士の情報で、オストローデシリーズの特性は理解した。

 現時点で、ヴァンホーテンを倒せる可能性は、ブリュンヒルデだけだ。

 それに、ブリュンヒルデの新しい力、第三着装形態もある。


「第三着装形態、『CODE00ワルキューレINVOKEドライブ』は状況によって使え。それと、絶対に負けるなよ」

『はい、センセイ』


 code04ブリュンヒルデ。

 最初に出会った戦乙女。俺の旅の始まりのアンドロイド。

 天馬ヴィングスコルニルと一緒に、戦場を駆け抜けてもらおう。


「センセイ、敵が展開してる。たぶん、徒歩で他の領土に向かうんだね」

「転移はナシだな。てっきり改良した転移装置で全ての戦力を全領土に転移ー!! とか考えてたんだけど……」

「あはは。それだったらわたしたち負けてたよ?」

「はっはっは。そうだな」


 さて、話は終わりだ。

 俺は咳払いをしてみんなに言う。


「みんな、ヤバかったら俺に通信を入れろ。いいか、絶対に無理はするな。いいな?」

「ふん、私が負けるわけがない」

「アタシだってそうだ」

「うふふ、みんな守りますわ」

「ウチは飛ぶッス!」

「センセイ、よろしくね!」

「私、やっちゃうよ!」


 ブリュンヒルデは、いつの間にかヴィングスコルニルを召喚。バイクモードにして跨がった。おいおい、行動早いぞ。


『行ってきます。センセイ』


 誰よりも速く、ブリュンヒルデは走り出した。



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