第267話、BOSS・SYSTEM-ARACNA②/起きろ、アルヴィート
俺はビームフェイズガンを構え、システム・アラクネに向けて発砲した。
『くらいやがれこの蜘蛛野郎!!』
ギャンギャンと独特の音を発しながら、ビーム光弾が発射される。
光弾は巨大メカ蜘蛛に当たるが、アラクネはビーム光弾を無視して突っ込んできた。この野郎、硬いな。
『キシキシ、キシキシ、キシキシ!!』
『甘いっ!! たぁぁっ!!』
真っ直ぐ突っ込んでくるアラクネに対し、俺はジャンプで飛び越える。この世界では肉体ではなく精神体だ。筋力とい概念はない!!
俺は体操選手のようにひねりを加えながらジャンプしてアラクネを飛び越え、空中で体勢を変えてアラクネに向けて発砲する。
『キシキシ、キシキシ、キシキシ!!』
『この野郎、硬い!!』
光弾は命中するが、ダメージは今ひとつだ。
接近戦も考えたがやめておく。俺の勘だと……。
『キシキシ!! ピュルァァァッ!!』
『やっぱり『糸』か!! はいやぁぁっ!!』
アラクネは、口から『糸』……いや、機械のコードを吐き出した。この部屋中を覆っているコードはこいつが吐いたものだ。触れるのはヤバい。
今さらだが、この世界で俺が死ねば、現実の俺は廃人になる。身体は生きているが心は死ぬ。二度と眼を覚まさないだろう。
だから、死ぬワケにはいかない。
『アルヴィート、アルヴィート、起きろ!!』
『…………』
勝利条件は、システム・アラクネを倒してアルヴィートを覚醒させる。
アルヴィートには心がある。俺の声もきっと届く。
『わたし、センセイに言われたの。オストローデ王国のために働いてくれって……実験や分析が終わったら、自由になれるって……』
『え……?』
アルヴィートが、ポツポツ話し始めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『はじめて、わたしを見てくれる人たちがいたの』
俺はアラクネが吐くコードを躱す。
ジャンプして、キルストレガで切り払って、ひたすら逃げる。
『異世界? から来た男の子、女の子……みんな人間だった。でもね、わたしのこと『可愛い』とか、『付き合って』とか、みんな笑顔だったの。怖い顔じゃない、みんな、わたしを見て笑っていたの』
ビームフェイズガンを撃ちまくる。
目に見える弱点は眼だろうか。8つのカメラアイに向けて発砲する。
『みんな、優しかった。いっしょにごはん食べたり、お散歩したり、夜に『女子会?』を開いたり……わたし、毎日が楽しかったの』
カメラアイの1つがパリンと割れた。
だが、アラクネの動きは止まらない。当然だが、痛がる様子もない。
『でも、みんな……何も言わなくなっちゃった。話しかけても、揺さぶっても、抱きついても……みんな、動かないの。死んじゃったみたいに……』
アルヴィートの悲しみが伝わってくる。
それに、話を聞くとオストローデ王国のやり方にムカムカする。
『わたし、もうどうしたらいいかわかんない……『助ける!!』……え?』
アルヴィートが、初めて顔を上げた。
俺は、怒りを込めて言う。
『お前はどうしたいんだ!? 泣いて愚痴って俯いて、どうしたいかわからないのか!?』
『え……』
『そんなに悲しいのも、辛いのも、みんなが大好きだからだろう!? おかしいって感じてるんだろう!?……だったら、だったら……泣いてないで立てよ!!』
『あ……』
『お前に心があるから辛いんだ。植え付けられた忠誠心を上回る悲しみがあるから泣いているんだろう!? 納得出来ないんだろう!? なぁアルヴィート、お前はどうしたいんだ……答えろ!!』
俺は、全力で叫んだ。
オストローデ王国のやりかたにムカついている。そして、アルヴィートに八つ当たりするように叫んでいた。
でも、ぶつける。
アルヴィートの心を揺さぶるために、俺は叫ぶ。
『わたし、は……』
『言え!! お前の心を、気持ちを!!』
『わたしは……』
アルヴィートの真紅の瞳から、ポロリと涙が零れる。
『わたし、みんなに会いたい!! もう一度、お話したい!! わたし、友達を……助けたい!!』
やっと、アルヴィートの声を聞けた。
同時に、アルヴィートを包む透明な球体が砕け、アルヴィートがゆっくりと落ちてくる。
『キシキシ、キシキシ、キシキシ!!』
「うわっ!?」
俺を無視し、アラクネがアルヴィートを狙う。そうだ、こいつの目的は最初からアルヴィートだ、アルヴィートを取り込んで、今度こそ完全な忠誠心を植え付けるだろう。
『あ、アルヴィ『邪魔』
アルヴィートは、冷たい声でアラクネを見据える。
同時に、アルヴィートの武装が一気に展開された。
『『乙女武装ブリテン・ザ・ウェポンズ』展開。「高周波剣アロンダイト」・「超高熱剣ガラティン」・「背部殲滅砲トリスタン」・「光速翼ダイダロス」・「拒絶障壁アキレウス」全展開』
『え』
巨大な翼、両肩に巨大砲塔、両手に大剣、巨大な六角形の盾が2つ展開される。
『わたしの中から消えて』
両肩から 巨大な光弾が発射されアラクネに直撃、翼の噴射口から火が噴いて加速、両手の剣でアラクネを細切れにした。
そして、大爆発……盾でガード。おいおい、俺が苦労したのに一瞬で倒しちゃったよ……。
アルヴィートは、ふわりと俺の傍に降りてきた。
『本当に、みんなを助けるの?』
『ああ。俺の生徒たちだからな』
『わたし、みんなを助けたい。またみんなでお話したい』
『できる。一緒にやろう』
『……うん!!』
空間に張り巡らされていた蜘蛛の巣が、パラパラと落ちて消える。
アルヴィートは解放された。もう、オストローデ王国は関係ない。この子は、戦乙女型アンドロイドcode07アルヴィートだ。
『戻ろう。みんな心配してる』
『みんな……お姉ちゃんたち、怒ってるよね』
『かもな。しっかり叱られて、また仲良くやろう。な?』
『あ……うん』
俺は、アルヴィートの頭を撫でる。
猫のようにはにかみながら、アルヴィートは笑った。
これでようやく、七人の姉妹が揃ったわけだ。
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