第265話、みんな再会

「センセ、オストローデ王国の航空領域に入るっスよ!」

「ああ、飛ばせ! 遺跡までどれくらいだ!?」

「あと三分っス!」

「速いなおい!?」


 入ってすぐに遺跡とは、この飛空艇まじぱねぇ。

 たぶん、ブリュンヒルデたちはもうオストローデ王国に入っている。もしかしたら、アンドロイ軍に位置を捕捉された可能性もある。

 全ては合流から始めよう。まずは再会、そして話をする。

 

「センセイ、合流してどうするつもりだ?」

「まず情報だ。ロキ博士から得た情報を共有して、これからのことを相談する。最終目標は、オストローデ王国のスパコンの停止。そうすれば、オストローデ王国のアンドロイドも、生徒たちの洗脳も解ける。俺たちの勝ちだ」

「なるほどな。とにかく、お父様の言いつけだ。協力はしてやる」

「ありがとよ。シグルドリーヴァ」


 シグルドリーヴァに笑いかけ、俺はもう一人の黒髪美女に言う。


「ハイネヨハイネ、お前は本当についてくるだけか?」

「はい。私の役目は見守り、見届けることです」

「わかった。ははは、敵アンドロイドなのに、ロキ博士より信用できるな」

「…………」


 無口な美女アンドロイドは黙ってしまった。

 ぶっちゃけ、見てくれはめっちゃ俺の好み。この異世界で出会った中でもどストライクなんだよなぁ。

 すると、レギンレイブが言う。


「センセ、生体反応と……ッゲ、アンドロイド反応。しかもこれ……」

「敵か? おい、敵なのか?」

「い、いやぁ~……これ、オル姉たちっスね」

「よし! 遺跡にいるのか?」

「はいっス。でもこれ、反応が……ありゃりゃ、まさかのまさか」

「……どうした?」


 レギンレイブは、意外そうに言った。


「この反応、code07……アルちゃんの反応っス」

「え、アルヴィート?」

「はい。なんか、オル姉たちに囲まれてるっスね」

「…………?」


 え、ええと……なんでここにアルヴィートが?


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 たぶん、驚いてるだろうなぁ。空からカッコいい鉄の塊……飛空艇が飛んできたんだから。


「ジークちゃんならウチの識別信号わかると思うけど……うっげぇ、オル姉たちいる……センセ、ウチが壊されないように守ってぇ~!」

「わ、わかったわかった。というか、怒らせるようなことしたのか?」

「まぁ。ウチとシグルド姉は、みんなの前でセンセを攫ったんスよ。そりゃもう悪役ばりに」

「さて、行くか」

「ちょ、センセ!?」

「冗談だ。それより、ゆっくり着陸しろよ」

「はいっス!」


 飛空艇は、ゆっくりと下降した。

 遺跡の真ん前で着陸し、入口のハッチがゆっくりと開く。

 そして、俺は地面に降り立ち、仲間たちを見て言う。


「待たせたな」


 どうよ、某スネークのセリフだぜ。一度言ってみたか「せんせ!!」


「おっぶぁ!?」

「せんせ、せんせ……よかった、よかったぁ……」

「み、三日月……」


 三日月が俺の胸に飛び込んできた。

 そうだ、ふざけてる場合じゃない。みんなに心配をかけたようだ。

 

「セージさん、生きてたぁ……」

「クトネ、久しぶり。相変わらずちっこいな」

「うぇぇ~……」

「アンタ、まじでふざけないでよ! 生きてたんなら連絡しろ!」

「す、すまんアルシェ……」

「今回はそいつの言うとおりだぜ? ったく、このバカモンが!」

「ゼドさん、心配かけました」

「センセイ、よかったっス!!」

「ライオット、お前もありがとな」

「セージ……」

「ルーシア、久しぶり。その……お前にも心配かけた」

「全くだ。この馬鹿者が……」


 クトネは泣きだし、アルシェはぷんすか怒り、ゼドさんは怒りつつも喜び、ライオットは親指をグッと立て、ルーシアは涙を浮かべて俺の肩に頭を乗せた。

 三日月は相変わらず抱き着いてる。とりあえずみんなに謝り、俺は戦乙女たちの前に。


「オルトリンデ、ヴァルトラウテ、久しぶり。元気にしてたか?」

「まーな。センセイのピンチに駆けつけたんだけど、アタシらの活躍見せれなかったのが残念だぜ」

「うふふ、でもご無事でよかったですわ」

「ジークルーネ、お前も」

「センセイ……よかったぁ」

「それと、ブリュンヒルデ」


 俺は、三日月を引き剥がしてブリュンヒルデの正面に立つ。

 ブリュンヒルデは俺をまっすぐ見て言う。


『お帰りなさい、センセイ。また会えて嬉しいです』

「俺もだ。その、ヴァルキリーハーツの調子はどうだ? 割れたけど治ったようだし、不具合とか……」

『問題ありません』

「そ、そうか。よかった」


 うん、よかった。これは俺の知ってるブリュンヒルデだ。

 cord00じゃない、code04のブリュンヒルデ。本当によかった。

 さて、再会は嬉しいが……。


「おいセンセイ、いろいろ聞きたいことあるぜ」

「俺もだ。というか、アルヴィートだよな」

「ああ。ちょいと調子わりーみてーだ。センセイ、見てやってくれ」

「ああ」

「アタシは、そこにいる奴をシメるからよ」

「ぎっくーーーーーーっ!! お、オル姉、ロキ博士から聞いてるんっしょ? そ、その」

「それはそれ、これはこれだ……覚悟はいいか、レギンレイブ?」

「ひぃぃぃぃぃっ!? ヴァル姉、ブリュ姉、ジークちゃん、助けてぇぇぇぇっ!!」


 レギンレイブの断末魔を無視し、俺はアルヴィートの元へ。


「シグルドリーヴァお姉さま……」

「シグルド姉さん、なの?」

「…………私は、お前たちの知るシグルドリーヴァではない。記憶は消え、人格も初期化された。残念だがな」

「そっか……でも、会えて嬉しいよ。ねぇヴァルトラウテ姉さま」

「ええ。ふふ、姉妹が揃いましたわね」

「ギブギブギブ!! オル姉ぇぇぇぇっ!!」

「黙りやがれこの野郎ぉぉぉぉっ!!」


 アルヴィートは、体育座りのまま動かない。ぼんやりとしたまま俯いている。


「…………」

『…………』

「あの、ブリュンヒルデさん? こちらの方は?」

「クトネ、ブリュンヒルデが知るはずないだろう。セージと一緒に来た女性だぞ?」

「でもルーシアさん、この人めっちゃ美人ですー。まさか、セージさんの……」

「なっ……そ、そんなわけあるまい。あのセージが女連れで帰ってくるなど」

「あ、その人アンドロイドっス。危害は加えないんで安心っスよぉぉぉぉぉっ!?」

「レギンレイブぅぅぅぅっ!! テメーはアタシを怒らせたぁぁぁっ!!」

「オル姉やめてぇぇぇぇぇっ!?」


 俺はアルヴィートの頭に手を乗せ、言う。


「何か、辛いことがあったのか?」

「…………うん」

「そうか。じゃあ、話してくれるか?」

「…………みんな、人間じゃなくなったの」

「…………」


 それだけで、俺は全て理解した。

 ジークルーネが、心配そうに言う。


「センセイ、アルちゃんの中に、後付けされたデータがあって、それがバグを引き起こしているの。センセイの力で消してあげて」

「わかった。やってみる」


 アルヴィートの頭に手を乗せ、俺は『接続アクセス』を使用した。

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