第261話、プロフェッサー・Type-KNIGHT/もう一人のンセイ
オストローデ王国――――アシュクロフトの執務室。
ここに、アナスタシアから報告が上がっていた。
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①ウロボロス。
ロールアウト数5000。起動テスト問題なし。
②量産型Type-LUKE。
ロールアウト数8000。起動テスト問題なし。
③カラミティジャケット。
ロールアウト数500・起動テスト問題なし。
④魔導強化兵。
総数250000体。強化処置問題なし。
⑤魔導強化生徒。
総数30。起動テスト終了。
⑥Type-SUSANO
修理完了。電子頭脳書き換え完了。アップグレード完了。
⑦Type-JACK。
ロールアウト数1000000。起動テスト問題なし。
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ここに、オストローデ王国全軍の準備が整った。
アシュクロフトは、執務用の椅子にもたれ掛かり、目を閉じる。
「……長かった」
人類軍との戦争が始まり、数千、数万年……資材が枯渇し、人類軍も滅び、戦争を知らない人類や、戦争の影響で突然変異した人類……獣人が現れ、機械生命体の存在は忘れられていった。
だが、活動停止せず動いているアンドロイドたちは、人間たちを滅ぼす機会をずっとうかがっていた。
人間だけではない。獣人もまた同じ……滅ぼすべき対象。
アシュクロフトたちオストローデシリーズの根幹にあるのは、人間への復讐、そして滅び。これらはけっして覆ることはない。
「ようやく、全ての準備が整いました……これで、ようやく始まる。そして……」
そして……。
その先は、誰にも聞こえる事なく、アシュクロフトだけの言葉だ。
異世界召喚によって呼ばれた強力なチート能力を持つ少年少女30人を木偶にして操り、かつて人類軍を苦しめた戦略兵器を現在の資源で量産し、自らの身体も改良をしながらここまで来た。
ようやく、ようやく始められる。
「人間、人類軍……機械生命を道具としか見ていない、身勝手な人間」
アシュクロフトは椅子から立ち上がり、窓際へ向かう。
オストローデ城下町は、不気味なほど静まりかえっている。城門は全て閉まり、大人も子供も老人も獣人も、誰もいない。
住人は全て、無言だった。
直立不動で、呼吸しか行動を許可されていない。
眼は虚ろで、表情もない。完全に心を奪われた木偶人形として、城下町の街道や広場に並んでいた。
静まりかえった城下町に、動く物体がある。
デッサン人形のようなアンドロイド、Type-JACK。このアンドロイドたちは、住人に『武器』を配っていた。
高出力エネルギーライフル。剣や槍ではない、強力な熱線銃である。
オストローデ王国は、これから全ての兵力を解き放つ。
睡眠も食事も必要としないアンドロイドと、思考能力を奪われた30人のチート能力者。これらを全世界に解き放ち、人間たちを滅ぼす。
チート能力者たち、魔導強化兵たちは、用が済めば自害させる予定である。
「アンドロイド軍の勝利は確定……いかにイレギュラーでも、数の暴力には勝てまい」
100万を超える大部隊だ。
いかにアンノウンの兵器を持とうが、いかにイレギュラーな存在だろうが、決して覆すことは出来ない。
アシュクロフトの策は単純。小細工より圧倒的数、物量で攻める。
これだけの準備に数千年はかかった。ようやく、計画が始められる。
「プロジェクト『ヒューマンデッド・アライブロイド』……間もなく決行の時」
そして―――執務室のドアが、ノックされた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あの、センセイ……」
「どうしたのですか? アルヴィート」
「うん……その、大きな戦いが始まるの?」
「ええ。ですが、すぐに終わります。あなたの姉妹にも、また会わせてあげますよ」
「……うん」
アルヴィートは、俯いていた。
どうにも最近、このような表情をするのだが、アシュクロフトにはその理由がわからなかった。
アリアドネのメンテナンスでも問題はないのだが……。
「センセイ、あのね……ショウセイやアカネは」
「ええ、計画通りです。立派な戦力として、このオストローデ王国のために働いてくれますよ」
「…………」
今や、生徒たちは物言わぬ存在となっていた。
カロリーコントロールにより食事や排泄もすることなく、ここ20日ほど、直立不動で兵器倉庫にいる。話しかけても返答はない。
あんなに楽しそうだった生徒たちは、ただの肉の塊と変わらない。
「センセイ、わたし……みんなとお話したいな」
「何故です?」
「ショウセイやアカネと、おしゃべりしたい……」
「……? ふむ、ですがもう不可能です。今やショウセイたちは兵器。人間ではありません、お喋りはもうできませんよ」
「…………っ」
アルヴィートは、部屋を出た。
アシュクロフトは首を傾げたが、特に気にしていない。
アルヴィートの態度こそ疑問だったが、アリアドネのメンテナンスでは問題がなかったのだ。
アルヴィートが『悲しんでいる』こともわからないアシュクロフト。
人間の感情を持つ戦乙女と、『
アルヴィートが一人で王国外に出たことを知ったのは、この数時間後だった。
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