第257話、第六の遺産
「あっちちちちちちっ!! あと寒い寒い寒い!! 身体がイカレるぅぅぅぅっ!!」
「やかましいぞ、センセイ」
「いやいやだって、おかしいぞここ!?」
シグルドリーヴァに睨まれるが言わずにはいられない。
現在、俺たちは……真冬の火山にいた。日本語がおかしいが、事実だ。
まず、外気温がマイナス50度ある。めっちゃ吹雪いてるし、クシャミしただけで氷の粒が飛ぶ。
そして、地面が摂氏300度以上ある。マグマがすぐ下を流れているのか、ブーツを通して熱が伝わってくる。例えるなら、海水浴に行って素足で砂浜に向かって足の裏がやられてピョンピョンするやつだ。
俺たちがいるのは、ヴァンピーア領土最高峰の『ブラックバレッツ火山』だ。
ここに、第六の遺産があるらしい。飛空挺のおかげで一気に頂上までこれたが、地面に降りたら地獄だった。
まともな神経じゃこの山は登らない。というか帰りたい……。
「センセ、人工物の反応ありッス」
「ここに、運命を狂わせる歯車の欠片が……」
レギンレイブもハイネヨハイネも涼しい顔しやがって……。
というか、遺跡の数メートル先まで飛空挺で行けばいいのに。なんでこんな足の裏を火傷寸前まで追い込みながら向かってるんだよ。
「どどど、どこだどこだあっつ!? つーか足の裏やっばあっつい!?」
「センセ、あんまり騒がないでくださいよー」
「…………静粛に」
「あっついんだっつの!!」
ついにキレた俺。みんな平然と歩きやがって……登頂者ゼロの山は伊達じゃない。
あ、いいこと思いついた!!
「来い、ヴィングスコルニル!!」
俺はヴィングスコルニルを召喚し、現れた銀馬に急いで跨がる。
首には取っ手が付いているのでそれを掴むと、ようやく暑さから解放され……。
「さ、さっむ……」
吹雪が、俺の身体を叩き付けた。
暑さで忘れてた。ここ、マイナス50度あるし空気もめっちゃ薄い……う、頭痛がしてきた。高山病かも。
「れ、レギンレイブ……マジで早く見つけてくれ」
「あいあーい。えっと……あっちッスね」
レギンレイブが示す方へ、俺たちは向かう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ようやく到着した……。
雪山の頂上に、社みたいなのがある。今までの遺跡は石造りだったからちょっと意外かも。なんだか古い神社みたいで懐かしさを感じる。
「えーと、あの建物の真下っすね。金属反応ありッス」
「よし、行こう」
ヴィングスコルニルをカッポカッポと歩かせ、神社のそばで降り、俺は社の中に飛び込んだ。
「あ~……ようやく寒さと暑さから解放されたわ」
強烈な寒波を遮り、社の床はいい感じに温まっている。ここなら1日くらいなら泊まってもいい。泊まらんけど。
社の中は奥行きがあり、十二畳ほどの広さだ。最奥には神棚みたいなのがあり、意外だが腐食が少ない。
地下ということは地面……。
「センセイ、ここを見ろ」
「……ビンゴだな」
シグルドリーヴァが、床にある切れ込みを見つけ、強引にめくった。するとそこには、地下への入口があった。
さっそく四人で降りると、やはり白い通路……遺産へ続く通路があった。
奥へ進み、『
俺たちが部屋に入ると、床が開き、遺産がせり上がる。
「来た。これで六つ…………え?」
「ありゃ?」
「……なんだ、これは」
「運命を狂わせる七つの歯車……」
床から迫り上がってきたのは……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
とりあえず、搭乗者登録をして異空間へ収納した。
「こりゃ戦闘向きじゃない。たぶんジークルーネ向きだな」
「そうッスかぁ~、まぁウチには飛空挺ちゃんがいるから問題なしッス!」
「私も、今回の遺産は興味がない」
「…………六つ目の歯車」
これまで動物モチーフだったが、今回はちょっと違った。
まぁいい。形はこだわらん。問題は性能だ。
それより、これで六つ目……残り一つだ。
「よし、飛空挺に戻って、ロキ博士の指示をもらおう」
最後の遺産は、ロキ博士が直接教えてくれるらしい。それと、生徒たちの情報を聞き出さなければ。
それもあるけど……そろそろ、ブリュンヒルデたちに会いたいぜ……。
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