第256話、空を飛んで

 いや、空を飛んでる。マジで。

 

「す、すっげぇ……海底から一瞬で地上、いや……上空かよ」


 飛空挺アルビオンハイウィンド。第五の遺産グリフィン・フリューゲルの第二着装形態で、レギンレイブ専用の遺産。

 動物形態はハヤブサで、合体すると巨大な飛空挺に変形した。デカいというか、軍用ヘリくらいの大きさだが。

 コンコルドみたいな形だろうか。エンタープライズ号みたいに、空間歪曲技術なのか、コックピットはかなり広い。


 まず、レギンレイブのメインウェポンであるフリーアイカロスが変形し、操縦席みたいになっている。そして、操縦席から見下ろすように、席が六つ。たぶん、戦乙女型が六人だから六つなのだろう。

 問題は一つ。


「うっひひひーーーっ!! これがウチの飛空挺ッスよぉぉぉっ!!」


 こいつが調子に乗るくらいか……オルトリンデがいたら絶対ケンカするだろうな。

 でも、海底の遺産を無事手に入れた。残る遺産は二つ……。


「センセ、どうするッスか? このままオストローデ王国に殴り込んじゃいます?」

「あのな、調子に乗るな。とりあえずロキ博士のところに戻るか。シグルドリーヴァ、場所はわかるか?」

「待て、こちらから直接通信を入れる。ここで指示をもらった方が動きやすいだろう。レギンレイブ、通信機は内蔵されてるか?」

「もっちッス!」

「……繋げ」

「ほいほーい」


 レギンレイブが操縦席のコンソールを弄ると、目の前にデカい空中投影ディスプレイが展開する。そしてそこには……。


『素晴らしい。実に素晴らしいよセンセイ……まさか、翼を手に入れるとは』

「ああ。俺たちも驚いてる。まさか海の底で飛空挺が手に入るなんてな」

『ふふ、これなら次の遺産は楽に手に入るだろう。マップにポイントをマークしておくので、そこへ向かいたまえ。そこに第六の遺産が眠っている』

「……相変わらず展開早いな」

『ふふ、期限は残り6日、急いだ方がいいぞ?』

「……は? ちょ、おい!? 30日って二つの遺産を手に入れる期間か!? 聞いてないぞおい!!」

『では、武運を祈る。遺産を手に入れたら連絡してくれ。最後の遺産は私のところで直接話そう』

「おい、待ておい!!」


 ……通信が切れた。

 あの野郎、マジでムカつく……次に会ったら一発くらい殴ってやろうか。


「…………目的地が転送された。レギンレイブ、マップを出せ。マークする」

「ほーい」


 ディスプレイには、この世界の大陸図が映り、シグルドリーヴァがあるポイントにピンを立てた。

 

「そこ、どこだ?」

「ここはヴァンピーア領土ッスね。位置からすると、ヴァンピーア領土最高峰の『ブラックバレッツ火山』ッス」

「か、火山って……そんなところに遺産が?」

「はいッス。標高5000メートルの大火山ッスね。寒いし暑いし、人間が登った最高度は4000メートルって記録があるッスよ。でも、登った人は途中で死んじゃったみたいッス」

「…………」


 急に腹が痛くなってきた……なにその魔境。

 というか、そんなところに遺跡を作るなオーディン博士!! どうやって作ったんだよマジで……。


「ま、ウチらには関係ないッスけどね……この飛空挺なら、2日もあれば最高度まで行けるッス!」

「じゃあ頼む。マッハで行け!」

「了解っすよ!!」


 第五の遺産を手に入れて、すぐに第六か……いよいよ、大詰めになってきたな。

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