第247話、デスティニー・Type-FIDOHERE②/ハイネヨハイネ
「センセイ、こいつはオストローデのアンドロイドだ。即刻破壊すべきだろう」
「待て待て、敵ならわざわざ「あなたを見守りに来ました……」なんて言わないだろ、それに敵意もないし、武器も持ってない。こんなチャンスはないし、話を聞いてみよう」
「センセ、モノマネ似てないッスね」
「やかましい」
黒髪の美女ハイネヨハイネは、俺をジッと見たままピクリとも動かない。
すると、頭をポリポリ掻くオクトーさんが言う。
「あー……よくわからんが、ワシはここで退散する。また後で来るからよ」
「あ、はい。ありがとうございました」
そう言って、オクトーさんは外にいたタコ魚人と行ってしまった。
これで、ここにいるのは俺たち3人とハイネヨハイネだけ。
「とりあえず座れよ。それと、何が狙いか知らんけど、敵なら容赦しないからな」
「…………」
ハイネヨハイネは俺の向かいに座り、俺も座る。
レギンレイブとシグルドリーヴァは俺の左右に座ると、露骨に警戒した。
「妙な動きをすれば斬る」
「センセ、警戒警戒」
「わかってるよ」
さて、改めて話を聞く。
「で、お前は何だ?」
「私は予言者ハイネヨハイネ。オストローデ王国の未来を見通す者」
「で、予言者さんがどうしてここに?」
「運命を覆したあなたに会うため」
「…………は?」
「私の予言が外れたのは初めてのこと……センセイ、あなたとcode04はゴエモンとの戦いで敗北し死ぬはずだった。でも、あなたは奇跡を起こし、今こうしてここにいる。私はあなたの行動がわからない。だから私は、あなたが人間とアンドロイドの戦いに予言ですら見えない何かを引き起こすと思います。私は、それが見たいのです」
「…………」
ワケ分からん。
俺とブリュンヒルデはゴエモンとの戦いで死ぬはずだった、か。確かにあの時は死ぬかと思った、でもワルキューレのおかげで助かった……正確には、俺が目覚めさせたんだけどな。
「で、見守るとは?」
「私は何もしません。あなたたちと敵対することも、オストローデ王国に戻ることも、あなたたちに協力することもない。ただ、あなたを見るだけ」
「……私がお前を破壊するかもしれんぞ」
「ちょ、シグルド姉」
「その時は、私の運命に従います」
見守るだけって……DJサ○ラみたいなこと言う奴だ。
確かに敵意は感じない。神秘的な雰囲気は感じるけど……。
「私は『超常現象観測型アンドロイド・Type-
「超常現象観測型?」
「はい。私の仕事は『チート能力』の観察と解明。様々な能力を観察し、その識別コードを身に刻みつけた結果電子頭脳にバグが発生し、未来を見通す『能力』を得ました。魔術とは違う結果ということです」
「ふーん……とにかく、戦闘系じゃないのな?」
「はい。納得出来ないのなら、この身体をお調べください」
「え」
すると、ハイネヨハイネは着ていたローブをするりと脱ぐ。ローブの下は薄い胸当てと下着みたいなパンツだけで、豊満なスタイルが丸見えだった。
「いいだろう、その役目、私が引き受ける」
「え」
際どいビキニを着たシグルドリーヴァが立ち上がり、ハイネヨハイネの隣に。
「妙な動きをした瞬間に電子頭脳を破壊する」
「…………お好きに」
シグルドリーヴァは、ハイネヨハイネの身体を弄り始めた。
顔をなで、手で身体に触れ、胸を触り、下半身に手を伸ばす。
下着を脱がし……おいおい、美女が美女を触って……。
「センセ、下半身が膨ちょ「やめろ言うな!!」
シグルドリーヴァの検査は、十分にわたって行われた……ふぅ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ちっ、不審な物は見当たらない……」
「…………」
「センセ、前屈み前屈み」
「うるさい。じゃあ俺の番だな、久しぶりに使うか」
俺はハイネヨハイネの手を掴む。
「さて、久しぶりの『
次の瞬間―――俺の意識が白く染まった。
そう、これはライオットの時と同じ、ハイネヨハイネの電子頭脳にアクセスしている。これでこいつの頭の中を―――。
『うわ……なんだこれ』
ハイネヨハイネの頭の中はめちゃくちゃだった。
ライオットの時は、一つの部屋にシャッターがあり、シャッターを開けるとそれぞれにアクセスできるようになっていたが、ハイネヨハイネの場合、迷路のように入り組んでいる。しかも人が通れるような幅ではなく、通路そのものが耐電してバチバチ光っている。
チート能力の解析が原因なのか、電子頭脳が得体の知れない力で覆われている。これがハイネヨハイネの予知能力なのか。
『迷路は進めないな……とりあえず、ここでわかることは』
周りを見ると、小さな球体が浮かんでいた。
それに触れる。
『これはハイネヨハイネの躯体データか……うん、本当に武器は搭載されていないな。俺を見に来たってマジなのか……』
とりあえず、こいつは嘘を付いていないのがよくわかった。
アクセスを解除すると、レギンレイブが心配そうに俺の腕にくっついていた。
「センセ! 大丈夫なの?」
「ん……ああ、どれくらい時間が経った?」
「20分くらいッス。センセ、ピクリとも動かなくて……」
「心配掛けた。大丈夫だ」
レギンレイブの頭をなでると、ハイネヨハイネも気が付いたようだ。
シグルドリーヴァは今にも剣を出そうとしていたが止める。
「わかっていただけましたか?」
「ああ。お前は嘘を付いていない。信じられないけど、本当に丸腰でここに来ただけだな」
「ええ、その通りです」
さて、マジでどうしようか。
まぁ……邪魔しなければいいか。オストローデ王国のアンドロイドが一体ここにいるってだけで気が楽だ。戦う必要がないならなおいい。
「わかった。邪魔しなければいてもいい」
「ありがとうございます」
「ちょ、センセ、いいの?」
「別にいいだろ。邪魔したらシグルドリーヴァが黙ってないだろうし」
「当然と言いたいが、正直なところ今斬りたい」
とにかく、こいつは無害だ。放っておいていい。
それより、ケートスを討伐することだけに集中しよう。
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