第233話、レギンレイブとサメ軍団
ガレオン船とでも言えばいいのだろうか。少なくとも海賊とかが乗ってそうな帆船だ。
横たわった帆船には大きな穴が空き、苔や水草が自生して長い間海中にあるのが素人目でもよくわかる。
けっこうな深海だが、なぜか周囲は明るく見えた。これも皮膚と一体化した金魚鉢ヘルメットのおかげなのかな……。
そのおかげで、見たくないモノまで見えていた。
「いやいやいや、ムリムリ、むりむり。絶対に無理!!」
「センセ、ここまで来てそりゃないッスよぉ」
「そうだぞ。センセイ」
「いや、死ぬわ」
ガレオン船の周りを優雅に泳ぐサメを見て、俺は帰宅を決意した。
というかあれ、サメじゃねぇ。一般的なサメに水牛みたいなツノは生えてないし、ノコギリみたいな鼻もない。それに普通のサメって全長20メートル近くあるか? いやない。
そんなサメが20匹以上、ガレオン船の周りを優雅に泳いでやがる。
「あれが沈没船……なるほど、なかなか壮観だ」
「お前はなに言ってんだ?」
ちなみに、俺たちが今いる場所は、ガレオン船からかなり離れた岩場。
ゆっくり海中を散歩しながらレギンレイブに案内されて来たんだが、バケモノサメが泳いでるのを見て岩場に隠れたというわけだ。ちなみに二人は隠れる気がなかったので俺が無理矢理引き込んだ。
すると、シグルドリーヴァが言う。
「さて、あのサメを始末して沈没船の調査をしようか」
「お前はアホなのか?」
「……」
「ぐ、に、睨んでもダメだぞ。あんなサメ集団、さすがのお前でも無理だろ」
「問題ない。あの程度の数、全て切り刻んでやる」
「だだ、ダメダメ! いいか、魚は匂いに敏感なんだ、サメを刻んだりしたら血の匂いで危険な海のモンスターがわんさと出てくるぞ!」
「ならそれも斬ればいい」
「この脳筋バカ!」
「…………」
「に、睨んでもダメだ! 悪いが俺は譲らないぞ、俺を守るのがロキ博士の命令だろ、ここにモンスターを大量に呼び寄せたら、さすがのお前でも俺を守り切れないだろ!」
「…………む」
おし、ちょっとだけやり込められたかも。
このまま追撃と行きますか……。
「あ、ならウチがやるッスよん」
「え」
レギンレイブが挙手し、背中に巨大なステルス戦闘機みたいな翼が現れた。
◇◇◇◇◇◇
「お、おい」
「んー……レーザ兵器も火器も使えないッスけど、やりかたはいくらでもあるッスよん。んーと、推進装置をスクリューに変換してっと」
「……任せる。私はここで臆病者を守る」
「おい、臆病者って俺か?」
ジト目でシグルドリーヴァを見たが完全無視。どうやらふてくされてしまったようだ。
「じゃ、チャチャっと行ってくるッス!」
レギンレイブはステルス戦闘機みたいな翼から生えたスクリューを回転させ、優雅に泳ぐサメ集団に突っ込んだ。
「へいへーい! ウチと一緒に躍らないッスかぁ~?」
『ギィィィィッ!!』
おいおい、サメってあんな声で鳴くのかよ……めっちゃ怖いんですけど。
サメはヒレをばたつかせ、レギンレイブに向かって突進する。ツノとノコギリみたいな鼻と強靱な顎、掴まったら人間じゃまず助からない……が、レギンレイブは違った。
「ほいほーいっ!」
「おお、すっげぇ……」
サメとサメの間をすり抜けるように飛び周り、サメを翻弄していた。
水中が土俵のサメなのに全く寄せ付けない。それどころか、どうも楽しんでるように見えた。
「あいつ……楽しんでいるな」
「……お前、羨ましいのか?」
「……そんなはずないだろう」
シグルドリーヴァは、なぜかそっぽ向いた。
サメ集団と戯れるレギンレイブは満足したらしい。
「じゃ、みなさんおやすみなさ~いッス!!」
『ギュァァァァァッ!?』
サメ集団は、なぜかビチビチと痙攣し……そのままぷかーっと動かなくなった。
何をしたのかさっぱりわからなかった。
そして、レギンレイブは満足した表情で戻って来た。
「あー楽しかったッス! サメちゃんたちけっこう頑張ったッスけど、ウチに追いつくのはまだまだ~って感じッス!」
「お、おい、サメは?」
「殺してないッス。ちょ~っと酷い乗り物酔いみたいな感じにしました!」
「……?」
何をしたのかサッパリだったが、シグルドリーヴァがポツリと言う。
「強力な超音波でサメを気絶させただけだ」
「あ、そうなのか」
そういえば、サメ避けの超音波装置とかあるらしいな。海水浴場にも売ってるらしい。
なるほど、銃やレーザ兵器をぶっ放すだけじゃないんだな。
「では沈没船の調査だ」
「お前、マジでぶれないな」
「あん、センセもシグルド姉も、もうちょっちウチに感謝してもぉ~」
さて、興味ないと言いつつも、ここまで来ると少しワクワクする。
沈没船の調査、始めますか。
◇◇◇◇◇◇
結論。ヤバかった。
「う、ぉぉぉ……すっっっっっっっげぇぇぇぇぇぇっ!!」
沈没船の中に入ると、大量の人骨と宝箱があった。
人骨に驚く俺を無視し、シグルドリーヴァが宝箱を開けると……そこには、大量の白金貨が詰まっていた。もうザックザクですわ、ザックザク。
しかも、宝箱は1つ2つじゃない。ガレオン船の最低部に100や200以上ある。中身は全部白金貨、国家予算なんて目じゃないレベルです。
「お、おおがねもち……うひひ」
「気色悪いぞ、センセイ」
「ウチも引くッスよ」
「う、うるさいな。これだけの大金があれば、建国できるレベルだぞ……大昔の貴族って金持ちだったのかなぁ」
たぶん、個人じゃない。いくつもの貴族が資金隠しにこの船に積んで、それが沈没したとかか?
まぁ別に理由はいい。問題は……この金は俺たちの物ってことだ。
「センセ、スキャンの結果、白金貨八百万枚あるッスよ」
「……はっぴゃく、まん? マジか?」
「はいッス。とりあえず座標指定して……ほいっと」
レギンレイブは、全ての宝箱を亜空間収納した。
おいおい……マジでとんでもねぇぞ。
「ふむ、この船も亜空間収納しておくか。何かに使えるかもしれん」
「え、ちょ」
すると、ガレオン船が一瞬で消えた。シグルドリーヴァが亜空間収納したようだ。
「さて、この船はあとでゆっくり調べるか。なかなか面白そうだ」
「…………」
「センセイ、次は海底神殿だ。ここから2日ほどの距離がある、お父様の作った潜水艇で行くぞ」
「……あ、ああ」
「センセ、なんか疲れてるッぽいッスねぇ」
「……もうお腹いっぱいかも」
この二人、スケールがヤバいよ……海底神殿、どうなるんだ?
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