第216話、MIDBOSS タケミカヅチ・Type-SUSANO②/量産型ルーク


 アシュクロフト。

 オストローデ王国の騎士団長にしてアンドロイド、Type-KNIGHT。

 俺は確信した。こいつだけは俺がこの手で倒さなくてはならないと。


「くっ……ジークルーネ」


 ジークルーネは、胸を貫かれ倒れていた。

 補助動力でなんとか意識はあるようだが、メインウェポンは使えない。俺が直さないといけないが、目の前のアシュクロフトがそれを許さないだろう。

 

「…………」


 俺は、無言で周囲を観察する。

 ブリュンヒルデはゴエモンと戦っている。ジークルーネは倒れている。クトネたちは……。


「アリアドネ、手筈通りに」

「え……?」


 アシュクロフトがそう言うと、周囲の地面が盛り上がり何かが現れた。

 

「な、これ……ライオットか!?」


 真っ黒な全身鎧が、何十体も現れた。

 それは、ライオットの戦闘形態に酷似している。違うのは、背中や腕にある電極の数くらいだろうか。

 すると、アシュクロフトがご丁寧に説明してくれた。


「量産型Type-LUKE。あなたがデータ改ざんを行ったオリジナルType-LUKEのコピーです。性能はオリジナルに劣り、ボディの材質もありふれた金属ですが……この時代レベルなら脅威となるでしょうね」

「このっ……もう、いい加減にしろよ!!」


 俺は立ち上がり、キルストレガを抜く。

 

「ふふ、申し訳ありませんが、今日の私は戦闘装備をしていないのでね。あなたの相手は……ゴエモンに任せましょうか」

「ふざけんな!!」


 俺はキルストレガを構え、余裕ヘラヘラのアシュクロフト目掛けて突進する。

 

「おおぉぉぉぉぁぁぁぁぁっ!!」

「おっと」


 アシュクロフトを一刀両断しようと剣を振りまくるが、アシュクロフトは難なく躱す。

 しかも、俺の剣なんて目を閉じても躱せるのか、動きがほんの少ししかない。


「ははははっ、センセイ、強くなりましたね」

「やかましいっ!!」


 当たらない。

 くそ、俺はこんなにも弱い。少しは強くなった? ちょっと強くなったからなんだってんだ!!

 そういえば、キルストレガに魔力を補充していなかった。ちくしょう、戦闘の準備ができていない。全く持って気が抜けていた。


 くそ、俺もだけど、ルーシアたちは……。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「くっ……なんだこいつらは!!」

「ルーシア、どうする!!」


 敵は、地中から現れた。

 ルーシアたちはエンタープライズ号から離れ、量産型ルークと対峙していた。

 

「チィィィッ!! こいつら硬てぇぞ!! おめーら、まともな武器は通らねぇ、クトネ、魔術を使え!!」

「ははは、はいぃぃっ!!」

「アタシがサポするっ!!」


 クトネはすたこらさっさと離れ魔術の詠唱を行い、アルシェはピナカの矢で量産型ルークを牽制する。

 ルーシアは蛇腹剣を構え、ゼドも分離させた片手斧を構える。

 三日月は、きょろきょろと周囲を観察していた。


「シオン、どうした?」

「このロボット、どこかで操作されてるのかと思ったけど……そんな気配感じない。それと、あれ」


 三日月の視線は、セージと対峙する騎士団長アシュクロフトに向いていた。

 

「アシュクロフト先生……やっぱり、アンドロイドの仲間だった」


 アシュクロフトは、三日月にとってもいい先生だった。

 いつも笑顔で、女子生徒の人気がすごかったのを覚えている。でも、今は何とも感じない。セージがアシュクロフトを敵と言っていたから、それだけで敵と感じることができた。


「みんな、ここを切り抜けよう」


 三日月は、両手の爪を伸ばしネコミミを生やす。同時に尻尾も生えてきた。

 こんなところで終われない、旅はまだまだ続くのだ。


「ルーシア、ゼドさん。こういうロボットの弱点は大抵が中身。でも、中身は硬い装甲で覆われてるから……関節を狙う」

「関節?」

「うん、見てて」


 三日月は、一体の量産型ルークに向かって飛び出した。


『オオォォォンッ!!』

「しゃっ!!」


 量産型ルークのパンチを躱し、そのままジャンプして首に飛び移る。まるで肩車のような体制になった。

 

「ふんにゃぁぁぁぁっ!!」


 そして、頭を掴んで無理やり回転させ、勢いを付けて引っこ抜く。

 量産型ルークの頭が外れ、コードがブチブチと千切れて機能停止した。

 倒れる量産型ルークを足場に跳躍し、ルーシアたちの元へ。


「と、こんな感じ」

「……いや、そんなことできるのお前だけ……いや」

「へへへ。力ならワシの出番じゃな。シオンは一人で、ワシとルーシアは協力してやるぞ。ルーシアは体制を崩せ、ワシが頭を引っこ抜く!!」

「ふ、っそれしかないな!!」


 すると、量産型ルークが三日月たちに殺到する。


「ファイアーボール!!」

「飛べっ!!」


 炎の弾とピナカの矢が、量産型ルークに命中した。

 

「援護はお任せをー!!」

「射抜いてやるわ!!」


 クトネとアルシェに頷き返し、三日月は爪を、ルーシアは剣を、ゼドは斧を構える。

 

「せんせ、こっちは大丈夫」


 これからも、きっと大丈夫。

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