第183話、国境都市ルペペ

 ラミュロス領土手前の国境都市ルペペに到着した。

 この国境都市ルペペから北に進むと海があり、このまま進むとラミュロス領土、そして……さらにその先は、オストローデ王国がある。

 ずいぶんと、長い旅になったもんだ……。


「セージセージ! ボケッとしてないで町に入ろうよ!」

「ボケッとって……まぁいいか」


 エンタープライズ号の屋根ではしゃぐアルシェ。

 こいつ、中に入らないで屋根の上でゴロゴロしてることが多い。しかも毛布まで敷いてるし。

 

「センセイ、ギルドの駐車場でいいの?」

「ああ。そこを拠点にして、補給なり依頼を受けるなり、自由行動にしよう」

「はーい。じゃあスタリオンとスプマドール、よろしくね」

『ヒッヒィィン!』『ブルルルン!』

 

 ジークルーネが手綱を握ると、2頭は応えてくれる。 

 国境都市ルペペの検問所を抜けて、町の中へ。


「町の中央にギルドがあるはず……」

「あ、ホルアクティを飛ばして町の地形は把握しました。まっすぐギルドを目指しまーす」

「あ、はい」


 ジークルーネ、なんて優秀な子。

 町に入って30分ほどで、冒険者ギルドに到着した。


 さて、みんなに到着を伝えますか。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「さて、これからどうする?」

「あ、あたしはお買い物したいですー」

「わたし、この町のネコに挨拶してくる」

「私は……武器屋にでも行くか」

「ワシはエンタープライズ号に必要な資材を買うてくる」

「わたしはここに残って、町の情報を集めるね。ホルアクティを飛ばして情報収集しまーす」

『私はスタリオンとスプマドール、ごま吉とジュリエッタの世話をします』


 と、みんなやることは決まっていた。

 すると、アルシェが言う。


「はいはーい。アタシは冒険者ギルドに行きたいでーす。簡単なのでいいから依頼を受けたい!」

「じゃあ、俺が付き合うよ。最近運動不足だし、力を付けないとな」

「……なんかセージさんらしくないですね」


 クトネにツッコまれた。悪かったな、自分でもらしくないって思うよ。

 でも、いろんな領土を回って、俺も戦わないといけない時が来るってわかったんだ。

 ライオットの時は、奇跡が起きて倒せたようなもんだ。あの時みたいに、タイマンでアンドロイドと戦う日はきっとくる。


「じゃあ、あたしはルーシアさんとお買い物しますー。ゼドさんもどうですか?」

「ワシは遠慮しておく。女の買い物はなげぇからな!」

「お、おいクトネ。私は……まぁいい」

「くろこ、みけこ、はだお、行こう」


 クトネとルーシア、ゼドさんは出て行った。

 三日月は子猫モードに変身すると、ネコを引き連れて出て行った。

 うーん、ネコに挨拶ってなんだろうか。町を牛耳るボスネコでもいるのかな。


「じゃあ、俺とアルシェも行くよ。ブリュンヒルデ、ジークルーネ、あとはよろしくな」

『はい、センセイ』

「はーい、センセイ」

「よーし、行くわよセージ!!」

「ああ、行こう」


 さて、冒険者ギルドにはどんな依頼があるかな?


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 冒険者ギルドは、相変わらず賑わっていた。


「わぁ~~~~っ! なんか楽しそ~~~~っ!」

「おいアルシェ、あんまり騒ぐな」


 アルシェは、前の町では冒険者登録をしただけだから、ギルドの空気を感じることがなかった。でも今は、冒険者たちで賑わうギルド内に目を輝かている。

 念のため言っておく、アルシェはウチのクラン最高齢だ。


「……なんかムカつくこと考えなかった?」

「い、いや……そんなことないぞ? ほらアルシェ、依頼掲示板を見よう」

「ん、そーね! ねぇねぇ、どんな依頼を受けるかアタシが選んでいい?」

「ああ、いいぞ。ただし高ランクの依頼はナシな」

「はーい」


 ちなみに冒険者ランクだが、俺はE級、アルシェはG級だ。

 2人だけだし、高ランクの依頼は受けれない。というか受けない。受けるとしたら、薬草採取とか簡単な依頼かな。討伐系ならゴブリン退治とか。

 俺は掲示板から少し離れ、横長の椅子に座った。

 

「んー……どうしよっかな」


 アルシェは掲示板で悩んでる。

 というか、チラチラ見られていた。

 やべ、アルシェは掲示板の前で1人。しかもG級冒険者のドッグタグを提げているから、登録したばかりの新人冒険者が、どの依頼を受けようか悩んでるようにしか見えない。


「よう、よかったらオレたちと一緒に冒険しないか?」

「冒険者になったばかりだろ? オレらがアドバイスしてやるぜ」

「わぁ、エルフなんだ。しかもすっごい可愛い!」

「ん? あんたら誰?」


 すると、アルシェの傍に3人組の新人っぽい若い冒険者が来た。

 男男女のパーティーだ、アルシェが加わればいいバランスに……って、そういうわけにはいかない。


「オレらもF級になったばかりでさ、メンバー増員しようと考えてたんだ。よかったら仲間にならないか?」

「エルフは弓が得意なんだろ?」

「どうかな……?」

「え? え? ああ……その、嬉しいんだけど、アタシもうクランに所属してるのよ。ゴメン、ありがとう!」

「そ、そうなのか……残念」


 アルシェは、あっさりと断った。

 嬉しく思いつつ、本当にこれでよかったのかとも思う。

 俺たちの旅は、アンドロイドとの戦いだ。危険も伴うし、もしアルシェが望むなら普通の冒険者生活を送っても……。


 アルシェは、冒険者チームと別れ、一枚の羊皮紙を剥がして俺に持って来た。


「セージ、この『ハイオーガ退治』ってのやりたい! 依頼のランクはFだし、アタシとセージでも受けれそうだよ」

「ん……そうだな。なぁアルシェ、あの冒険者の誘い、断ってよかったのか?」

「なんで? アタシはクラン『戦乙女』の冒険者だよ?」

「そうだけど……その、俺たちの旅は危険が付きまとうし、もしアルシェが望むなら、普通の冒険者になっても……」


 アルシェはキョトンとして……ぷっと吹き出した。


「あのね、アタシが冒険者やりたいのは、アンタたちがいるからよ。危険がどうとか関係ない。どんな敵だろうと、アタシが射貫いてやるわ!」

「アルシェ……そうか、悪かったな」

「ん、じゃあさっさと依頼を受けるわよ!」

「ああ、行くか」


 余計なことだった……アルシェは、俺たちの仲間なんだよな。

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