第176話、BOSS・魔道強化生徒サンプル1号&2号③/砂地の戦い
ライオットと量産型LUKEの戦いが始まった。
オルトリンデとヴァルトラウテは、そちらを全く気にせず、黒猿仮面と向き合う。
「行くぞヴァルトラウテ」
「はい、お姉さま」
メインウェポンを装備。オルトリンデは着装形態へ、ヴァルトラウテは大盾を構える。
対して、黒猿仮面の取った行動はシンプルだった。
「ヴァルトラウテ、ガードは任せ……っで!?」
「あらっ!?」
攻撃に移ろうとしたオルトリンデたちがいる砂地を、まるで噴水のように爆発させた。
この砂は全て黒猿仮面こと今野が作りだした物。今野耕一郎は、能力で作りだした砂を自在に操ることが出来る。
つまり、周囲一帯が今野の掌の上と言う事だ。
「おっわぁっ!? こなくっそぉぉっ!!」
「お姉さま、ストップ!!」
ガトリングガンの照準をなんとか黒猿仮面に合わせようと体勢を変えるが、ブリュンヒルデのようなブースターを積んでいない二人は上手く体勢を変えられない。
いかに強力な武器を持っていても、狙いが付けられなければ話にならない。
「な……なんだありゃ!?」
「くっ……着装!!」
オルトリンデたちが打ち上げられたと同時に、砂がサラサラと盛り上がり、巨大な腕がいくつも現れた。
ヴァルトラウテは【乙女絶甲アイギス・アルマティア】を二つに分離させ、両腕に装着。【装甲盾アイギス二対】を装備した。
装備することにより、細かな動きが可能になり、防御だけでなく攻撃も可能になる。
「フィールド展開!!」
アイギス二対の領域展開能力で防護フィールドを形成し、自らとオルトリンデを包み込む。
同時に、砂の腕が振り下ろされた……まるで、飛んでいる蠅を叩き潰すかのように。
そして、オルトリンデとヴァルトラウテは地面に叩き付けられる。
「ちくしょう、めんどくせ……」
叩き付けられると同時に、別の腕が振り下ろされる。しかもその手は硬く握られ、巨大な岩が落下してくるようにも見えた。
「こんのヤロッ!!」
オルトリンデは寝転がったまま、【破壊制圧砲タスラム】に搭載されているチェーンガンの照準を砂の腕に合わせ発射。弾丸は腕に命中するが、密度を高めた砂は鉄のように硬く砕くことは出来ない。
「お姉さま、わたくしが!!」
「頼む!!」
ヴァルトラウテが再度防護フィールドを形勢。砂の腕はいくつも振り下ろされ、防護フィールドを破壊しようとするが、ヴァルトラウテがガードする。
その間、オルトリンデはチェーンガンやガトリングガンで、砂の腕を破壊しようと撃ちまくっていた。
「くっそ、硬ぇぇっ!! ヴァルトラウテ、耐えれるか!?」
「あと25秒なら……ッ!!」
ヴァルトラウテの防護フィールドに亀裂が入る。
砂の腕は、ガンガンガンガンと容赦なく振り下ろされ、オルトリンデたちを潰そうとしている。
そして、オルトリンデは気が付いた。
「!?……灰色の犬仮面がいねぇぞ!?」
同時に、巨大な『氷』の塊が落ち、ヴァルトラウテの防護フィールドを破壊した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アリアドネは、今野を操作しながらドリンクを飲んでいた。
「code02は銃撃、code03は防御……昔のままのデータなら、対策は簡単」
答えはシンプル。
銃は当たらなければいい。照準から外れればいい。相手に狙いを付けさせなければいい。
砂の能力は、まさにうってつけ。
砂を巻き上げて照準を外し、2体の立つ地面を爆破させ空に飛ばす。これならまともな照準は付けられない。ヴァルトラウテの防護フィールドは、圧倒的攻撃力で叩き続ければいい。現在過去の技術では、破壊不能な材質は存在しない。必ず、限界がある。
「アナスタシア、おかわり」
「…………ねぇ、私が呼ばれたのって、あなたの世話のためかしら?」
アナスタシアは、差し出されたドリンクカップを受け取り、液体燃料で満たされた樽の柄杓を掴む。
中身を補充してアリアドネに渡すと、一気飲みされた。
「アナスタシア、おかわり」
「…………」
アナスタシアは、無言でカップを補充する。
「ねぇアナスタシア、戦乙女型を2体捕獲したらどうする?」
「もちろん、アルヴィートと同じよ」
「はいはい。じゃああたしの出番ってワケね」
現在、砂漠のど真ん中に、巨大な氷の塊が落ちている。
山岸雪子の作りだした氷だ。彼女は、レベル99の『
砂使いと氷使いというコンビが、戦乙女型を始末した。
「アナスタシア、ご注文通り、2人は無傷だよ」
「ふふ、そうね……」
「アシュクロフトのヤツにどやされず済みそうだわ……」
次の瞬間、巨大な氷が砕け散った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あっぶねぇ……あのままぺしゃんこになるところだったぜ」
オルトリンデだ。
彼女は、『皇牛モーガン・ムインファウル』の第二着装形態・【殲滅無敵砲台クジャタ・チャリオッツ】を装備していた。
漆黒のボディには最新兵器がこれでもかと搭載され、オルトリンデはその一つである、火炎放射器とミサイルを使って氷を爆破したのだ。
「チッ……最初から使えばよかったぜ」
「全くですわね」
ヴァルトラウテも、【亀翁クルーマ・アクパーラ】の第二着装形態、【翡翠障壁エメラルド・イージス】を展開し、氷の落下とオルトリンデの攻撃の余波から身を守った。
「ヴァルトラウテ、オメーは灰色の犬仮面をやれ。アタシは黒猿仮面をとっちめる」
「わかりましたわ。オルトリンデお姉さま」
灰色犬仮面こと山岸雪子は、両手に氷の剣をを生み出した。
ヴァルトラウテは、12枚のエメラルドグリーンに輝く盾を自在に操りながら、余裕の表情を浮かべている。
オルトリンデは、砂をまとい始めている黒猿仮面こと今野を注視している。
「へへ、タイマンだぜ」
「お姉さま、遊びではありませんよ?」
「わーってるっつの」
砂がサソリのような形となり、何十、何百と作られていく。
どうやら、相手も本気のようだ。
「じゃあ……行くぜ!!」
第二ラウンドが始まった。
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