第八章・【オルトリンデルート*大魔王サタナエル】
第151話、足が必要
オルトリンデ、ヴァルトラウテ、ライオット。
共にアンドロイドで、センセイたちと分かれて『ヴァンピーア領土』を目指して旅をしている。
目的は、最後の戦乙女型アンドロイドである、code05レギンレイブの捜索。
もちろん、ヴァンピーア領土にレギンレイブがいる可能性は低い。だが、オストローデ王国を除いた領土の中で、オルトリンデとヴァルトラウテが、捜索していない場所が多い地域である。
オルトリンデとヴァルトラウテは、再起動してからの500年間、オストローデ王国を除いた地域をある程度探索した。
その間、人類軍の施設とアンドロイド軍の施設をいくつか発見し、使えそうな部品を採取してここまで稼働してきたのである。このアストロ大陸の地理は把握していた。
センセイと合流したユグドラシル領土から、ヴァンピーア領土へ向かうには、一度ディザード王国へ戻らないといけない。そこからヴァンピーア領土へ続く道がある。
ヴァンピーア領土へ向かい、調査不完全な場所を改めて再調査、アンドロイド修復施設を見つけ、レギンレイブを再起動させる。そうすれば、オストローデ王国との戦いの戦力にもなるし、未知なる【
それに、code01以外の戦乙女型が全て目覚める。
大昔、共に戦った姉妹が、この現代で再び再稼働する……これほど、心躍ることがあるだろうか。
だが、全員を揃えるためには、code07アルヴィートを取り戻す必要がある。
やることはたくさんある。
まずは、ヴァンピーア領土へ向かい、レギンレイブの捜索を始める。
オルトリンデ・ヴァルトラウテ・ライオットの冒険が、始まった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
が…………オルトリンデは不満タラタラだった。
「だーからよー、モーガンに乗れば楽じゃねーか。なにがダメなんだよ」
「でーすーかーら、この時代にそぐわない技術は、なるべく表に出すわけにはいきません。どこでアンドロイドが見てるかわからないのに」
「へーへー、ったく……人間みたいに疲れないとはいえ、ボディを酷使すればどうなるかなんてわかりきったことじゃねーか」
「では、最寄りの町で馬を探しましょう。お金なら捨てるほどありますし」
オルトリンデたちは、500年以上行動している。
冒険者のまねごとで稼いだ金は、使う事なく取ってあった。なにしろ、人間と違って補給の必要がない。
「買うなら居住車だな。このハゲの体重何キロあると思う? 700キロを越えてやがるんだぞ? 馬になんか乗せたら足が砕けるぞ」
「うっす、申し訳ないっす……」
「そうですわね。では、適当な居住車を買いましょうか」
幸いなことに、ディザード王国は居住車の生産地だ。金はいくらでもあるし、惜しい物ではない。
3人は森を歩き、何の躊躇もなく砂漠へ踏み込んだ。
人間なら、水がなければすぐに干からびてしまう。直射日光も体力を奪い、暑さは精神を蝕んでいく。
だが、完璧な耐熱処理をされた3人は、むしろ調子がよかった。
戦乙女型アンドロイドのエネルギー源は太陽光。ライオットも光るスキンヘッドを通して充電している。
暑さなど物ともせず歩き、オアシスを無視してディザード王国へ向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
オルトリンデ一行は、ディザード王国に到着した。
検問を越え、町中へ。
ハイドラとウロボロスが暴れた町は修復が進み、活気が溢れていた。
ジークルーネからハイドラの情報をもらっていたので、町の状態など特に気にせず、真っ直ぐに居住車販売所である『ドワーフ・クルール』へ向かう。
小さな受付所には、セージたちが話しかけた受付嬢が座っていた。
「はーいいらっしゃい」
「居住車くれ。頑丈なヤツで」
「ええとー……こちらの書類に記入をお願いしまーす」
「わかった。頼むヴァルトラウテ」
「はいはーい」
ヴァルトラウテは、差し出された書類に記入する。
受付嬢に書類を返す。
「ふーむふむ、予算……え、いくらでもって」
「もちろん、そのままの意味ですわ」
「はぁ……お金、あるんですか?」
「ええ」
ヴァルトラウテは、量子分解して収納してある
伊達に500年以上稼働していない。モンスター討伐で得た収入はたっぷりある。それこそ、一国の金庫を充実させるほど。
「足りないのでしたら、まだ出せますが……」
「いやいやいやいや、もう十分でございます!! おーいあんたお客様だよーっ!! さっさと来ないか!!」
揉み手をする受付嬢ドワーフは、旦那のドワーフを呼ぶ。
きっと、とんでもない上客とでも思われてるのだろう。
奥から1人のドワーフが現れ、受付嬢ドワーフが引っ張り何かを耳打ちしてる。するとカウンターの白金貨500枚を見て愕然としていた。
そして、揉み手をしながらオルトリンデたちの前に。
「いらっしゃいませ。当店は最高品質の居住車をご用意しております。ではどうぞこちらへ」
「ああ、頼む」
「ふふっ、よろしくお願いしますわね」
「うっす、よろしくっす!!」
地下の居住車倉庫に案内され、さっそくいくつかの居住車を見繕ってもらう。
当然だが、セージたちのような空間歪曲技術は使われていない。というかオルトリンデたちは何でもよかった。
「当店のオススメはこちら、このダマスカス製のボディを使用した」
「じゃあそれでいいや。いくら?」
「え」
「それでいいって。金は足りるか?」
「え、ええと……白金貨400枚ほどで」
「じゃあ決まり。外に出してくれ、さっそく使うからさ」
こうして、オルトリンデたちは居住車を手に入れた。
銀色のドーム型で、6人乗りの高級居住車だ。だが、まだ問題がある。
「あの、件引用の動物と守護獣ですが……」
「あん? めんどくせぇな……あ、そうだ。おいライオット、コイツはオメーが引っ張れ、できるか?」
「うっす!! 問題ないっす!!」
「よーし決定。あとは守護獣だっけ? んなもん別にいらねぇな。じゃあおしまい、外に出してくれ」
「え、あの」
「申し訳ありません、お願いしますわ」
店主は困惑したが、ヴァルトラウテが頭を下げて微笑むと、言われるがまま外へ出した。
本来は馬やそれに似た力ある動物が牽引するが、居住車の前部を少し改造し、まるでリヤカーのような取っ手を設置した。どう考えても人間が引けるサイズではない。
支払いを済ませ、居住車はオルトリンデたちの物になった。
「よし、これで用は済んだな。ヴァルトラウテ、ヴァンピーア領土までのマップは?」
「大丈夫ですわ」
「おーし。ライオット、いけるか?」
「うっす、問題ないっす!!」
「よーし、じゃあ出発するか」
オルトリンデとヴァルトラウテは居住車に乗り込み、ライオットは軽々と取っ手を掴んで引き始める。
居住車は、何の問題もなく出発した。
人間が居住車を引き進む光景を、町中に晒しながらディザード王国を後にする。
「ヴァンピーア領土か……ヴァルトラウテ、レギンレイブはいると思うか?」
「レギンちゃん……どうでしょうね」
「ま、探せばわかるだろ、アタシらなら見つけられる」
「そうですわね……」
ライオットは、砂漠の砂を物ともせず、平地のように進む。
3人の旅は、ここから始まった。
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