第142話、BOSS・code02&code03②/砕けた乙女
戦乙女型アンドロイドの戦いは白熱していた。
人間では追うことすらできない速度で動き回る。
ブリュンヒルデの双剣がヴァルトラウテの盾を何度も斬りつける。だが、ヴァルトラウテは己の躯体を軋ませながら、両腕に装着した盾で捌き続ける。
そして、一瞬の隙を突いてオルトリンデの砲撃……ブリュンヒルデは、散弾銃のようなベアリング弾を、背中の牽制砲である『ペンドラゴン』で相殺する。
3体が着装形態に移行して数分。
ブリュンヒルデとの相性は最悪だった。が……ブリュンヒルデが有利だった。
それもそのはず、オルトリンデとヴァルトラウテの躯体は、とうに限界を超えている。
ギシギシと関節部は悲鳴を上げ、ブリュンヒルデの隙を突く一撃ですらコンマ秒遅れる。もし2体が万全な状態だったら、ブリュンヒルデですら相手にならなかっただろう。
『…………』
決着は近い。
このまま自壊するのを待てばいい。
だが、何故だろうか……ブリュンヒルデの中に、それはダメだという意見がある。
「お姉ちゃん、Type-BISHOPを制圧したよ!! あとは姉さんたちだけ!!」
ジークルーネの言葉が届く。
あとは、この2体を無力化すればいい。
そして、2体は身体を軋ませながら動いた。
『code02オルトリンデ・【
『code03ヴァルトラウテ・【
オルトリンデのバズーカ砲が変形し、巨大な砲身を持つ『レールキャノン』へ変化する。
ヴァルトラウテの盾が分離、全身に装着され、全てを拒絶するシールドが展開される。
決着。
Type-BISHOPのウィルスの影響なのか。
だが、この攻撃を許せば、周囲に甚大な被害が出る。
『ジークルーネ。パーティーメンバーにスタリオンとスプマドールを守るように指示をお願いします』
「お姉ちゃん!? ど、どうするの……?」
『相殺します』
ブリュンヒルデはエクスカリヴァーンを掲げる。
『code04ブリュンヒルデ・【
決着は、もう間もない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ジークルーネは、これから起こるであろう、圧倒的破壊に思考を巡らせた。
そして、仲間たちに叫ぶ。
「みなさん!! これからお姉ちゃんが【
その言葉に、クトネとルーシアは青くなる。
かつてフォーヴ王国で見た【
「ま、まさか……ブリュンヒルデだけじゃない!?」
アルシェが首を傾げるが、説明してる時間はない。
誰よりも迅足に動いたのは、クトネだった。
「土よ目覚めろ、風よ息吹け、炎よ燃やせ。3種交わりて鋼鉄の壁となせ!!
『
土が壁のように盛り上がり、居住車と馬たち、クトネたちを囲む。
風が吹き荒れ、土の壁を乾燥させる。
炎が壁を焼き、鋼鉄のように硬くなる。
そしてチート能力・『
「これが、あたしの最強の守りですっ!! 全魔力持ってけやぁーーーっ!!」
そして、轟音が響き渡る。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
真っ向勝負。
ブリュンヒルデのエクスカリヴァーンが黄金の輝きを。
オルトリンデのカルヴァテインがルビーの輝きを。
ヴァルトラウテのアイギスがエメラルドの輝きを。
3体の戦乙女型の、最終奥義。
だが、ブリュンヒルデは見た。
オルトリンデとヴァルトラウテの躯体が、砕けていく瞬間を。
『広域殲滅剣【
『集中電磁砲【
『拒絶障壁【
黄金の大剣とルビ-の電磁砲が衝突し大爆発を起こし、エメラルドの障壁がオルトリンデとヴァルトラウテを守る……が、一瞬で障壁は砕け、ヴァルトラウテの両腕が爆散した。
オルトリンデも【
もちろん、ブリュンヒルデもタダでは済まない。
ルビーの砲撃は完全に相殺できず、衝撃がボディを直撃。右腕と右足を破壊されて吹っ飛んだ。
そして、衝撃波がクトネの魔術障壁と激突する。
「ふんぎぃぃぃぃぃ~~~~~ッ!!」
「がんばれクトネ!!」
「耐えろクトネ!!」
「わわわ、アタシたちかなりヤバい~~~っ!!」
クトネの魔術障壁に亀裂が入る。
戦乙女型の最終奥義同士の衝突は、環境を変えかねない威力があった。
そして……。
「今っ!!」
衝撃波に晒されながらも、ジークルーネは動いていた。
2輪だけ修復したディアンケヒトを飛ばし、華の先端からワクチン注入用の針を出す。
そして、ほぼ胴体だけの状態で転がるオルトリンデとヴァルトラウテの胸に、針が突き刺さった。
『ワクチンプログラム注入…………ブラックボックスアクセス。シャットダウン!!』
ワクチンプログラムがセルケティヘトのウィルスと一瞬だけ拮抗、その隙にブラックボックスにアクセスし、ヴァルキリーハーツと電子頭脳にアクセス。全ての機能を停止させた。
つまり、電源を落としたのである。
「……っ、はぁ」
『…………』
『…………』
オルトリンデとヴァルトラウテは、完全に停止した。
ジークルーネは、衝撃波で左腕を失ったが、行動に支障はない。
ブリュンヒルデが、エクスカリヴァーンを杖代わりにしてジークルーネの元へ。
『機能停止を確認』
「あはは……ボロボロだね」
『センセイに修復を依頼します』
「そうだね。それより、オルトリンデ姉さんとヴァルトラウテお姉さまを!!」
『はい。回収しましょう』
こうして、戦乙女型同士の戦いは終わった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あ、あんど、ろいど族……」
『族は必要ありません』
アルシェは、機械部品むき出しのブリュンヒルデたちを見て、言葉を失っていた。
人間やエルフ、獣人などは、怪我をすれば血が流れる。だがブリュンヒルデたちから流れるのは、体内を循環するオイルだ。ナノマシンによってオイルの流出は止まっているが、それでも衝撃的な光景だった。
三日月たちも、ブリュンヒルデたちがアンドロイドだと知っているが、それでもこんな姿には慣れない。
「ジークルーネ、いたくない?」
「うん、ありがとうシオンさん。わたしは大丈夫……でも」
ジークルーネの視線の先は、四肢を失って転がる2体の戦乙女型。
ブリュンヒルデとジークルーネの姉である、オルトリンデとヴァルトラウテだ。
「センセイに直してもらって、再起動して……早く起こしてあげたいな」
「大丈夫。せんせなら……」
「そうだな。それより、セージを助けに行くぞ。動けるのは……」
「あ、あたしは魔力切れで……」
「アタシは行けるよ!! ルーシアは?」
「なんとか行ける……よし、私とアルシェでユグドラシルへ向かう。みんなはここで……」
ルーシアの言葉は最後まで語られなかった。
なぜなら、周囲一帯に、地震が起きたからである。
「うわわわわわっ!? 今度はなんですかぁっ!?」
「地震!? うそ、アタシこんなの知らないよっ!!」
「なんだと!?」
「ユグドラシルでは地震なんて起きないのっ!! アタシだって生きてて初めてだしっ!!」
ジークルーネは気が付いた。
「…………なにこれ」
ジークルーネは、地中から大型の熱源反応を感知した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます