第136話BOSS・Type-LUKE②/ロープレなら

 俺は、アホだった。

 

 打てる手は少ない。

 武器はキルストレガ、ビームフェイズガン、魔術くらいだ。短弓とナイフは通じないだろう。

 それと、チート能力も期待できない。

 そのそも、俺の能力は相手に触れないと発動しない。あんなプロレスラーみたいなガチムチ野郎に近付くのは無理だし、そもそも全身帯電してるから触れただけで感電しちまう。

 つまり、遠距離からチマチマ削るしかないってことだ。


「くっそ、走り続けんのもっ、ムズいっ!」


 俺は的にならないように、部屋の中をグルグル回っていた。

 唯一の救いは、こいつの頭がそんなによくないことだ。照準を俺に合わせようと、両手を俺に向けながら一緒に回転してる。その間は、電撃が放たれることはない。

 よし、試しに数発撃ってみるか。

 俺はビームフェイズガンを持ち、走りながらなんとか照準を合わせる。この際、当たらなくてもいい。


「喰らえっ!!」

「っ……」


 あ、当たった。

 出力『小』のビーム弾は、タンクトップハゲの頭に命中。

 バゴン!! と、鉄板に鉄球がぶつかるような音がして、タンクトップハゲの頭が揺れた。

 しかもノーダメージかよ……ぶつかった場所は僅かにめくれたが、それだけだ。


「電撃。効果無。直接攻撃」

「え」

「我。センセイ。直接攻撃」


 タンクトップハゲが、俺に向かって走り出した。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 俺とタンクトップハゲは、エレベーターホールで追いかけっこしていた。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!! こっち来んなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」


 魂の叫び。

 タンクトップのプロレスラーみたいなハゲ野郎が追いかけてくる恐怖。28年の人生でこれほど恐怖を味わったことはない。

 

「センセイ。排除」

「ぐっ……!!」


 タンクトップハゲの両腕がバコッと開き、左右合わせて8本の巨大電極がバチバチ発光する。

 俺はキルストレガを抜くと同時に、タンクトップハゲの両腕から電撃が放たれた。


「吸収ッ!!」


 だが、俺はその雷をキルストレガで吸収した。

 タンクトップハゲの足が止まり、俺の足も止まる。

 オリジンの言った通り、この雷は魔術だ。魔術に対抗するために作られた『吸魔剣キルストレガ』なら対抗できる!!

 そして、キルストレガの魔力メーターは『50/100』になっていた。吸収前の数値は『10/100』だから、一気に40ポイントも吸収したのか。

 ウソだろ、クトネの中級魔術でも5ポイントくらいしか貯まらないのに。こいつの一撃はクトネの8倍もある。しかも連射可能。

 まて、上限を超えて吸収できるのか?


「センセイ。排除」

「いやな予感しかしねぇぇぇーーーーーっ!! くらえ『魔人連牙斬』!!」


 俺はキルストレガのトリガーを1度引き、空波斬をメーターが0になるまで振った。

 真空の刃はタンクトップハゲに直撃する……そして、タンクトップハゲは吹き飛ばされた。

 

「き、効いた………のか?」


 空波斬の連射型、魔人連牙斬。まぁ剣を振りまくって真空波を飛ばしまくるだけだ。某ゲームの技名を拝借しました。

 キルストレガのメーターは0。次に雷を出しても吸収できる。

 だが、タンクトップハゲは何事もなかったかのように身体を起こす。


「戦力分析。脅威度中。『エレクトリカルアーム』使用。殺害不可能。『ボルテックモード』使用」


 バチンと、タンクトップハゲの全身が帯電を始めた。

 ゆらりと立ち上がり、全身が変わっていく。


「な、なんだ……こりゃ」


 それは、わかりやすい変形だった。

 全身に切れ目が入り、皮膚のようみ見えた装甲が裏返っていく・・・・・・

 まるで、人間のような姿が『表』で、裏返ることで別の姿に変身するような……子供のオモチャでありそうな、異形の形態。

 皮膚の裏は、黒い装甲だった。

 ゴツゴツと硬そうな全身鎧を着込んでいるような、とんでもない姿。

 これはマズい。これは俺の手に負える相手じゃない。


「ボルテックモード変形完了。センセイ殺害実行」


 両腕だけじゃない。背中からも巨大電極が生えた。

 なにこれ、パワーアップ?

 そして、タントトップハゲ······いや、黒いアンドロイドは全身を帯電させる。


「エレクトリックバースト」

「なっ······ヤベェ、ゼドさぁぁんっ!!」


 俺はキルストレガを構え、ゼドさんの前に立つ。

 全身帯電。ここから来る攻撃は?

 答え。無差別攻撃。


「ぐおァァァァァーーーっ!?」


 とんでもない熱量の雷が俺の元へ。

 キルストレガに雷が吸収される。たが、一瞬にして容量を越えてキルストレガ自体が破裂した。

 破裂した刀の破片と、吸収しきれなかった雷が俺に降り注ぐ。


「う、ぐぅぅ······あ゛あ゛っ······っあ゛」


 地面を何度も転がり、壁に叩き付けられる。

 痛みと感電で思考がおかしい。

 右腕がざっくり抉れ、胸と腹に折れた剣が刺さってる。


「うっ·········ごっぼ、え」


 吐血した。

 涙も止まらない。

 俺は、ここで死ぬのか?


「じにだぐ········な、い゛」


 意識が薄れてきた。

 俺は、死ぬ。

 帰りたい。

 家に帰りたい。

 神さま、どうかたすけてください。


「生命反応微弱」


 なんだこいつ。

 ああ、とどめをさすのか。

 くびをつかまれた。

 くるしい。からだがもちあげられる。

 ねむい。


「消去」


 あ······。

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