第五章・【レベルアップ】

第85話これからの指針

 自然都市オゾゾへ戻ってきた。

 まずは宿を取って話し合いかな。三日月というメンバーも増えたし、話すことがいっぱいある。

 俺は、フォーヴ王国から出発してから寝てばかりの三日月を揺り起こす。どうやらあの三日月ペルシャ猫形態はかなり負担が強く、使用すると眠くなるらしい。

 俺の太腿を枕にする三日月を撫でる。


「三日月、オゾゾの町に付いたぞ」

「ん〜······」 

「ほら、ネコたちも」

『んなぁ〜』『ごろごろ』

 

 香箱座りで三日月に寄り添う三毛猫と黒猫も撫でる。

 う〜ん、ネコの撫で心地はいい。


「セージ、まずは宿へ向かおう。念の為、ディザード王国側の宿を利用するぞ」

「そうだな。ブリュンヒルデ、ジークルーネ、頼むぞ」

「はーい、センセイ」

『はい、センセイ』


 御者はいつもと同じ戦乙女姉妹だ。

 接近戦最強のブリュンヒルデと、最強の回復役ジークルーネ。この2人がいれば旅の不安はない。

 

「お姉ちゃん、タウンマップをインストールするね」

『お願いします。ジークルーネ』

「おすすめは·········お、この『砂漠の宿サハーラ』にしよう! ディザードの美味しい料理が食べられるんだって!」

『センセイの許可をお取り下さい』

「もう!! お姉ちゃんは固すぎ!! ねぇセンセイ、宿はわたしが決めていいよねー?」


 うーん、ジークルーネもグイグイ来るようになった。

 まぁ、可愛いし妹みたいな感覚だ。これはこれでいい。


「いいぞー、ブリュンヒルデも少しは自分の意見を出してくれ。そういうところはジークルーネを見習えよー」

『·········』


 それから数十分。ディザード側の区画にある『砂漠の宿サハーラ』に到着した。

 砂漠の宿なんて言うが、別に地面が砂になってるわけじゃない。建物はから砂を固めたような家で、同じような建物が何件もある。どうやら宿屋というよりコテージみたいな感じだ。

 母屋で受付をしてコテージの1つを借り、馬車を止めてスタリオンを荷車から開放した。

 スタリオンには水と飼葉をたっぷり与え、世話をしたがるブリュンヒルデとジークルーネをとりあえず部屋に連れていく。まずはこれからの話し合いだ。


「へぇ、広いな」


 コテージは2階建てで、一階はダイニング、二階はベットルームになっていた。

 俺は荷物を下ろし、クトネはシリカと共にソファへダイブ、ルーシアは気が抜けたのか息を吐き、三日月はようやく目が覚めたのか背伸びした。

 ジークルーネは、ブリュンヒルデを連れてキッチンへ。どうやらお茶の支度をしてるようだ。

 

 さて、一息入れたらこれからの話をするか。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 さて、まずはどうしようか。


「とりあえず、三日月の服や装備を買って、冒険者登録するか」

「わたし、冒険者になる?」

「ああ。いつまでも俺のシャツじゃ悪いしな。ネコミミパーカーでもあればいいけど」

「欲しい!」


 まずは三日月の冒険者登録。そして装備を買ってやろう。

 すると、三日月が思い出したように言った。


「あ、そうだ。みけことくろこ、ちゃんとお礼言わないと」


 三毛猫と黒猫がテーブルに上げ、三日月は青い猫じゃらしを取り出した。


「青い猫じゃらし? なんだそれ?」

「これ、わたしの固有武器。名前は『ススキノテ』っていうの。じゃれたネコとお話できる。ほれほれ」

『うな〜お』『にゃにゃにゃ』


 三毛猫と黒猫が猫じゃらしにじゃれると、身体が一瞬だけ発光した。すると、俺たちの目の前で喋りだした。


『ふぅ、ようやく話せたわね。全く、しおんってば遅いのよ』

「ごめんみけこ。くろこも」

『別にいいよ〜、こうしてまたお話できるし〜』

「うん。2匹とも、ありがとう」


 三日月は、三毛猫と黒猫を抱っこしてハグする。

 おいおい、マジで猫が喋ってるぞ。確かに三日月の能力はネコに特化してるけど······いやはや、すげぇ。

 すると、クトネが食いついた。


「しし、シオンさん!! そ、それって猫ならどんな猫でもお話できるんですか!?」

「うん。ススキノテにじゃれたネコなら」

「じゃ、じゃあシリカも!?」

「じゃれればね」

「お、お願いしてもいいですか!! あたし、シリカとお喋りしたいです!!」

「いいよ。ほれほれ〜」

『·········』


 三日月は、クトネが無理矢理テーブルに乗せたシリカに猫じゃらしを振るが、シリカはそっぽ向いて欠伸をした。

 目の前で振ったり前足辺りで揺らしてもシリカは全く反応しない。どうやらお気に召さないようだ。


「し、シリカぁ〜」

『ふなぁ〜ご』


 シリカは欠伸をすると、なぜかブリュンヒルデの太腿の上に移動して昼寝を始めた。だめだこりゃ。

 空気を変えようとルーシアがこほんと咳をする。


「ところで、これからの予定だが。シオンを救ったことでセージの目的は達成された。なら次はどうする?」

「そうだな······オストローデ王国の情報も集めないと」

「はいはいはいはい!! セージさんセージさん、提案があります!!」

「······なんだよ」

「えー、あたしたちの冒険者等級とクラン等級を上げましょう!!」


 すると、ルーシアも賛同する。


「等級か······確かに、セージとブリュンヒルデ以外はG等級のままだからな。金も稼がないといけないし、いつまでもGというのもな」

「それにそれに、セージさんの魔術訓練や剣の訓練もハンパですし、実践を兼ねて鍛えましょう。しばらくはこの町を拠点にして、冒険者らしく依頼を受けましょう!!」

「ふむ······」


 確かに、最近は剣とか魔術とか訓練してない。

 三日月の装備を買えばお金はほとんど尽きるだろうし、宿代だってタダじゃない。


「そして、お金を稼いだらディザード王国へ行きましょう!!」

「ディザードって、砂漠王国か?」

「はい!! 砂漠王国のドワーフが作った居住車を買うんです!!」

「居住車か······そんな話もあったな」


 フォーヴ王国からここまで来たが、確かに荷車は狭かった。

 ブリュンヒルデとジークルーネは寝ないが、夜間もずっと外に立たせるのも悪い。荷車は3人しか寝れないから、俺は自動的に外でテントを張らないといけないし。

 

「·········うん。そうだな。金稼ぎとレベルアップのために、しばらくは冒険者やるのもいいか」

「おお、さっすがセージさん!!」

「うむ。私も賛成だ」

「ブリュンヒルデ、ジークルーネもそれでいいか?」

『はい、センセイ』

「はい、センセイ」

「三日月、お前も······あれ」


 三日月は、ネコを抱っこしたまま眠っていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 三日月を起こしたが、ネコたちは眠そうだったのでそのまま寝かせ、ブリュンヒルデとジークルーネはスタリオンの世話をするというので、俺と三日月とクトネとルーシアの4人で買い物に出かけた。

 買うのは三日月の服と装備。


「三日月はサポートタイプだし、ローブとかのほうがいいか?」

「わたし、格闘技も習ったよ。こう見えてクラス女子の間じゃNo3まで上り詰めた」

「じゃあ動きやすい服とネコミミパーカーでいいか。あればいいけど」

「うん。ありがとう、せんせ」

「気にすんな。それより、身体は平気か?」

「うん。あのねあのね、すごいことできるようになったの。あとで見せるね」

「すごいこと?」


 と、話してるうちに服屋へ。

 クトネに金貨を渡した。


「ではセージさん、女子だけで楽しんできまーす!」

「いってきまーす」

「やれやれ、セージ、こっちは任せてくれ」

「おう、頼んだぞルーシア」


 さて、俺はのんびり待たせてもらうかね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る