第47話冒険者クトネ、冒険者ルーシア
この世界の町や王国の共通点として、ギルド系の建物は町の中心に据えられ、それぞれのギルドを象徴とする看板が掲げられている。実にわかりやすい。
ちなみにギルドには種類がある。
冒険者ギルド、魔術ギルド、錬金術ギルドが主なギルドで、他にも規模が小さいながらもギルドは存在するが、先に言った3つを覚えてれば問題ないらしい。
冒険者ギルドは言わずもがな、魔術ギルドは魔術師が所属するギルドで、冒険者ギルドと連携を取っている。例えば、戦士しかいないパーティに魔術師を斡旋したり、パーティが希望した属性の魔術師をレンタルしたりする。
錬金術ギルドは、回復薬であるポーションや、魔力を回復するエーテルを作って各ギルドや町の薬屋に卸してる。ちなみに、錬金術師はかなりの高給取りらしい。
馬車の中で、クトネが説明してくれた。
「と、こんなところですね」
「なるほど……これは習わなかったな。ありがとうクトネ」
「いえいえ。というかこんなの常識ですよ?」
「わ、悪かったな。というかクトネ、お前は冒険者より魔術ギルドの方がいいんじゃないのか?」
「のんのん、魔術ギルドだと自由に冒険できないんですよ。ギルド所属だとお給料は出ますけど、冒険者ギルドの斡旋依頼が入るから、常に魔術ギルドに待機してなくちゃいけないし」
クトネはシリカをなでながら言う。
すると、シリカをジロジロ見ながらルーシアが言った。
「クトネは確か『三種持ち』だったな。魔術ギルドに登録すればかなり好待遇で迎えられると思うぞ。騎士団でも『二種持ち』は私しかいなかったし、三種持ちで指輪持ちなどマジカライズ王国でもいるかどうか……」
「んふふ、そう褒めないで下さいよ。ところでルーシアさんの魔術特性は?」
「私か? 私は『水』と『闇』の二種で、『水』はD級、『闇』はE級認定を受けている」
「ほほう、かなりの使い手ですね。ちなみにあたしは『火・風・地』で3つともD級認定です」
「………ルーシアって、水と闇だったのか? てっきり水と火かと思った。紅茶淹れる時にお湯出してたし。それに、DだのEだのどういう意味だ?」
俺の疑問。
ルーシアが出したお湯は『生活魔術』というらしく、魔力さえあれば誰でも使えるらしい。
「ま、けっこうな魔力を使うから魔術師は殆ど使いませんよ。火を起こしてお湯沸かすのが楽ですし」
「確かにな。あの時は客である私たちを待たせたくなかったから魔術で湯を沸かしたが、本来の生活魔術で出す水は、傷口を洗浄したり、水のない場所で身体を清めたりするのが一般的だ」
「なるほど。それで、DだのEは?」
「それは、魔術ギルドが定めた魔術師の等級です。殆どの魔術師は一属性だけなんで等級は一種類だけですけど、あたしやルーシアさんみたいに複数の属性を持つ人は、それぞれの属性で等級試験を受けて認定されます。もちろん等級アップ試験に受かればランクも上がりますよ!」
こうして聞くと、知らない事多いな。
等級とか興味ないけど、知識として覚えておくか。
すると、ブリュンヒルデが言った。
『センセイ、間もなく冒険者ギルドに到着します』
「お、そうか」
さて、クトネとルーシアの冒険者登録と行くか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
冒険者。この大陸で最も多いかもしれない職業。
『仕事が無ければ剣を握れ、冒険者なら稼げるぞ』という言葉があるくらい仕事は多い。依頼の数は種類も多く、子守りや草むしり、ドブさらいや下水道のネズミ退治など低難易度のものがあれば、盗賊退治やモンスター討伐、討伐モンスターの素材収拾など高レベルなものも多い。
実際、等級が低いうちは高難易度の依頼を受けることが出来ない。
冒険者で最も多い等級はD等級で、冒険者たちからは『D等級の壁』と呼ばれている。このD等級を超えたC等級からはさらなる高難易度の依頼を受けることが可能だ。
だが、C等級以上の冒険者は貴族や有力者から直接の依頼を受けることがある。もちろん、有力者からの依頼を断る事なんてできないし、内容も危険なものばかり、生きて帰れる保証などない依頼ばかりなのだそうだ。
なので、D等級冒険者は無理してC等級に上がろうとしない。
D等級の依頼でも、ある程度の数をこなせばいい稼ぎになる。無理して危険な依頼を受けることなく、ベテラン冒険者としてずっと続けていける。
そんなD等級冒険者が、この世界にはそこそこいるのであった。
「と、いうことです」
「なるほど……ってクトネ、お前って冒険者じゃないのになんでそんなに詳しいんだ?」
「そりゃもちろん、知識として頭に入れてるんですよ」
ギルドの厩舎に馬車を停め、全員でギルド内へ。
クトネの説明を聞きながら、ルーシアとクトネは受付で冒険者登録の受付用紙を書いていた。
というかクトネ、受付嬢さんが渋い顏してるからそんな話すんなよって思う。
2人から登録用紙を預かった受付嬢さんは指輪の処理をして、2人に渡す。
「それでは指輪をお返しします。冒険者用の項目が増えましたので、ご確認下さい」
「はいはーい」
「ああ、ありがとう」
クトネとルーシアは指輪を嵌める。
********************
【名前】 クトネ
【職業】 魔術師(ウィザード)
【冒険者等級】 G級
********************
********************
【名前】 ルーシア
【職業】 魔剣士(マジックフェンサー)
【冒険者等級】 G級
********************
「おお、ちゃんと出ましたね」
「ああ。『能力(チート)』もちゃんと隠れているな」
「おお……これで冒険者だな。改めてよろしく」
「ええ!! ではセージさん、このまま『クラン』を結成して登録しましょう!!」
「………おう」
「………セージさん、わかってます?」
「………」
俺は目を逸らす。
すると、呆れたようにクトネが説明してくれた。
「はぁ~……いいですか、『クラン』っていうのはチームを組んだ冒険者の総称です。名前、等級、人数、クラン名で冒険者ギルドに登録するんです。そうすると、クラン専用の依頼を受けれたり、有名になると指名依頼なんてのも入ります」
「なるほど。それは知らなかった」
「クラン専用の依頼は報酬も高いぞ。結成には私も賛成だ。どうせこのパーティで冒険するなら、依頼の幅は広い方がいいからな」
「そうだな。金も稼がなきゃならないし……ブリュンヒルデもそれでいいか?」
『はい、センセイ』
ということで、クランを結成する。
受付前でこんな話をしたおかげで、目の前の受付嬢さんはすでに書類を用意していた。代表で俺が書類に記入する。
「えーと、名前……等級……人数……ん? なぁ、クランの代表って?」
「そんなのセージさんに決まってるじゃないですか。一番年上ですし」
「年功序列かよ。実力的には俺が一番下なんだが……」
「すまんが、私もセージに賛成だ」
『私もセンセイにお願いします』
「……わかったよ。じゃあクランリーダーはセージ、と………あとはクラン名だけど」
「セージさんにお任せでーす♪」
「すまん。そういう名付けは苦手だ……」
『センセイにお任せします』
ぶん投げかよ。ったく、名前名前……うーん。
俺はクトネ、ルーシア、ブリュンヒルデと視線を移す。
「うん、名前は……クラン『|戦乙女(ヴァルキュリア)』だな」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
書類を提出し、今度は全員が指輪とドッグタグの提出を求められた。
どうやら、クラン情報を指輪とタグに書き込むらしい。戻って来た指輪には項目が追加され、ブリュンヒルデのドッグタグにはクランの名前が刻まれていた。
俺たちは馬車に戻り、指輪の確認とこれからの予定を話す。
「どれどれ……おお、見て下さいセージさん、ちゃんとクランの名前が入ってます!」
********************
【名前】 クトネ
【職業】 魔術師(ウィザード)
【冒険者等級】 G級
【所属クラン】『戦乙女(ヴァルキュリア)』 G級
********************
「おお、ホントだ。って、やっぱりG級か」
「結成数分ですからね。それよりセージさんもルーシアさんも確認して下さいよ。たまーに記入漏れがありますからね」
「そうか。では私も」
********************
【名前】 ルーシア
【職業】 魔剣士(マジックフェンサー)
【冒険者等級】 G級
【所属クラン】『戦乙女(ヴァルキュリア)』 G級
********************
「うむ、問題ないな」
「じゃあ俺も……あ、やべ」
********************
【名前】 相沢誠二
【職業】 教師(ティーチャー)
【冒険者等級】 F級
【所属クラン】『戦乙女(ヴァルキュリア)』 G級
【チート】
『修理(リペア)』 レベル3
○壊れた物を修理することが可能
○欠けたパーツの修復が可能
○失ったパーツを再生させる(回数1)
『錆取(ルストクリーン)』 レベル2
○錆びを取り除く
○触れた金属を腐食させる(回数3)
『接続(アクセス)』 レベル1
○電子回路に接続、命令可能(回数1)
《近接系戦乙女型アンドロイドcode04『ブリュンヒルデ』》
*******************
指輪の項目がメッチャ増えていた。
そういえば確認するの忘れてたけど、項目がかなり増えた。『|錆取(ルストクリーン)』の能力も追加されてるし、また遺跡で検証しなきゃな。
それより、この項目って消せるんだよな? どうやるんだ?
「えーと、なぁクトネ、ルーシア。チートの項目ってどうやって消す………どうした?」
「…………」
「…………」
クトネとルーシアが、俺の画面を見て硬直していた。
なんだなんだ、誤字でも見つかったのか?
すると、唖然としたクトネとルーシアが言った。
「せ、セージさん……なんでチートを3つも持ってるんですか?」
「え? いや普通だろ?」
「ば、馬鹿を言うな!! チートは1人1つだけだ!! 1つのチートのレベルが上がれば項目が増えるが、チートそのものが増えるなんて聞いたことがない!!」
「そ、そうなのか? いやでも、増えたモンは増えたし……」
「あわわわ……こ、こんなの見つかったらどうなるかわかりませんよ!! は、はやく隠して隠して!!」
「い、いや、どうやるんだ?」
「ああもう!!」
どうやら、俺のチートはちょっとおかしいみたいだ。
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