第4話チート勉強
アシュクロフト騎士団長の授業が始まると、団長……ああもう先生でいいや。アシュクロフト先生は教卓から古めかしい木箱を取り出した。
「まず、皆さんにはこれを付けていただきます」
木箱を開けると、そこにはキレイに整列した指輪があった。
アシュクロフト先生は、指輪を一つ摘む。
「これは『
指輪が配られ、生徒たちは装備する。俺も右手の人差し指にはめると、指輪のサイズがキュッと萎む。どうやら軍服と同じで装備者のサイズに変化するようだ。
「みなさん、指輪を付けた状態で念じて下さい……」
アシュクロフト先生が右手を持ち上げて念じる。すると、指輪から立体映像が現れた。
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【名前】 相沢誠二
【チート】
○壊れた物を修理することが可能
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「…………」
うーん。すごいのかすごくないのかわからん。
「わぁお、すごい」
「ん?」
隣の三日月も同じような立体映像が出てる。
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【名前】 三日月しおん
【チート】 猫使い(キャットマスター) レベル1
○ネコあつめ レベル1
○ネコじゃらし『ススキノテ』 レベル1
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うわぁ、ネコに特化したチートだな。でも三日月らしいというか、なんというか。
生徒たちは立体映像を見せあってワイワイ騒いでる。するとアシュクロフト先生がパンパン手を叩いてみんなを黙らせた。ショートホームルームでもなかなか静かにならないクラスなのに、手をパンパンするだけで黙らせるとは、やりおる。
「チートは大まかに分けて『戦闘系』と『支援系』があり、各チートには『固有武器』があります。そしてチートにはレベルが存在し、経験を重ねることでレベルが上がり、能力が増えたり強化されたりと、皆さんの強さに繋がっていきます」
「え……」
固有武器?
俺は自分のステータス画面を見るが、そんなもん見当たらない。
あるのは
「チートは、意志の力で発動が可能です。まずは己のチートを使いこなす訓練と、固有武器の特性に合った戦闘訓練を積んで行きましょう」
生徒たちは立体映像を出したり消したりして楽しんでる。
固有武器って……はぁ、俺ってマジで選ばれた三十人とやらじゃないんだな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の授業は、アナスタシア先生の歴史勉強だ。
なぜ異世界に召喚されたか、なぜ魔王が現れたのかなど、知りたいことがたくさんある。
アナスタシア先生は、魔術師ってか魔女みたいに見える。三角帽子をクイッとあげ、眼鏡の奥にある瞳を細めた。
「では、授業を始めます。まず、どうしてあなたたちが召喚されたのか……それは、異世界人であるあなたたちのが、強力なチートを授かり現れるからよ」
アナスタシア先生の話はこうだ。
このオストローデ王国だけでなく、世界全域を見ても、チートを持って生まれてくる人間は三割にも満たない。そこで大昔の予言者とやらが『この世界とは異なる世界には、希望の光が存在する』と予言したらしい。そして召喚のチートを持つ魔術師が異世界召喚を行い、俺たちのような日本人が呼ばれたそうな。
「現に、あなたたちは全員、強力なチートを宿してるわ。ふふふ、みんなスゴイわね」
うむむ、アナスタシア先生の微笑みもスゴい。
とにかく、俺たちが呼ばれた理由はわかった。
「そして、七人の魔王……どういう存在なのか、わかってることは殆どないの。わかってることと言えば……魔王たちは、
なんじゃそりゃ。わけわからんね。
でも、少し心をくすぐられる。古の超文明とか、社会科教師の俺としては心惹かれるワードだ。
とにかく、帰るためには魔王とやらを倒す必要がある。生徒たちに頼り切りになるが、俺もできるだけ頑張ろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後、戦闘チート持ちと支援チート持ちに分かれ、これからの訓練日程などの話し合いをすることになった。
場所は騎士団や魔術師団が鍛錬をする修練所。
俺はというと、どっちつかずのチートなのでどうすればいいかわからない。なので、とりあえず戦闘グループに混ぜてもらう。
「先生、大丈夫なんですか?」
「中津川、先生を甘く見るなよ? こう見えても高校大学と工事現場のバイトで身体を鍛えたんだ。それに教師になってからは趣味でゲーセン通いもしてる。プライズキャッチャーの腕前ならお前にも負けないぞ」
「は、はぁ……ゲーセンと戦闘は関係ないんじゃ?」
最後のツッコミはシカトした。
戦闘チートはクラスの半分、ちょうど15人だった。中津川と篠原はもちろん、青木もいる。
「相沢センセー、修理でどうやって戦うんすかー?」
「う、うるさいぞ城島、先生だって男だ、やるときゃやるんだ」
「あっはは、センセーかっくぃーっ‼」
「岩城、お前もか」
くそ、丸刈り坊主の野球部
すると、アシュクロフト先生が戦闘グループの前に来た。
「では皆さん、まずは『固有武器』の発現から始めましょう。やり方は簡単です、意識を自分の内側に集中させて願うのです……すると、このように」
アシュクロフト先生の手に、カッコいい片手剣が現れた。
一瞬だけ手が発光したと思ったら、既に剣が手にあった。
「では皆さん、さっそくやってみましょう。意識を内側に向け……」
「うわっ⁉」「きゃっ⁉」
説明の途中で、中津川と篠原が叫んだ。すると二人の手が発光し、中津川の手には黄金に装飾された長剣、篠原の手には紫色でゴテゴテした杖が握られていた。
これにはアシュクロフト先生も驚いていた。
「ま、まさか、一瞬で……す、素晴らしい」
中津川と篠原は、お互いの顔を見合わせて笑っていた。
俺はというと、何もせず突っ立っているだけだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから数時間後、15人全員が武器を発現した。
さすがのアシュクロフト先生も脱帽していた。先生の予定では武器の発現に数日はかかると踏んでいたからだ。
「実に素晴らしい。では、武器の扱い方の勉強をしましょう」
すると、修練所に鎧を装備した騎士が何人も入ってきた。そして、マンツーマンで武器の指導を開始する。
取り残された俺は、中津川の指導を始めようとするアシュクロフト先生の元へ。
「…………あの、俺は」
「ええと、確か、センセイでしたね。貴方のチートは……」
「
「
「は、はい」
割れた花瓶は直せなかったけどな。
少し考え込むアシュクロフト先生は、小さく頷いた。
「では、基礎訓練をナカツガワと共に行い、チート訓練は支援グループと共に行いましょう」
お、そりゃいいな。生徒たち全員の様子が見られるし、身体とチートも同時に鍛えられる。
俺は中津川を見る。
「よろしくな、中津川」
「はい、相沢先生」
俺が挫折するのは、もうすぐだ
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