第2話チートってすごい
ま、待て待て。なんかショボい気がするけど俺はトップバッターだ、みんなこんなモンかも知れないし、ここは生徒を安心させるために笑顔でいこう。
俺は水晶の前で振り返り、生徒たちに向けて笑顔で言った。
「た、大したことないぞ。みんな、安心して続けろ」
生徒たちはお顔を見合わせ、次に前に出たのは中津川だった。
「じゃ、オレが行く。お先に」
中津川は、中指と人差し指を立てて「ピッ」と振る。イケメンフェイスと気取ったポーズが女子のハートを鷲づかみ、クラスの雰囲気は完全にいつもの教室と同じテンションになった。
「よっしゃいけ将星!!」「先生に負けんな!!」「直せ直せ!!」
「バカ、なんだよそれ」「あははッ、ちょっと男子うっさい!!」
く……なんか俺の「
いや落ち着け、チートとかいっても大したこと……。
********************
【名前】 中津川将星
【チート】 光の
○光魔法 レベル1
○光の聖剣『ミリオンブレイド』 レベル1
********************
「ぶっ……!?」
俺は思わず吹き出した。
なんだこれ、テンプレ勇者じゃねーか。俺のチートが超雑魚に思える。
すると、生徒たちも大騒ぎ。
「すっげえ!! さっすが将星!!」「中津川くんすごーい!!」
「チートだチート、チート勇者!!」「やっぱ中津川だな!!」
俺の時とは全然違う……なんだよ修理って。
中津川は、頬をポリポリ掻きながら俺の隣へ。
「あ、はは……なんか、すごいですね」
「だな……はは、若いっていいな。なぁ中津川、二八っておっさんなのかな……」
「え、ええと……す、すみません先生」
「謝んなぁぁっ!!」
「あだだだっ、ちょ、先生っ!?」
なんか悔しくて中津川の頭をガシガシなでてしまった。
そして、次は女子の篠原朱音だ。ちなみに順番は男女交互に行う。
「あかね、気を付けてね」
「大丈夫よ。ありがとね、しおん」
篠原は、友人である
そして、篠原は水晶へ手を乗せる。
********************
【名前】 篠原朱音
【チート】 雷の
○雷魔法 レベル1
○雷の杖『エクレールワンド』 レベル1
********************
ま、そうだと思ったよ。
案の定すげぇチートだ。雷だってよ雷。
「雷か、篠原ピッタリだな」「雷の魔女だってよ、怖ぇな」
「でもカッケェな」「だよな、羨ましいぜ」「オレも早く知りてぇぜ」
うん、きっとみんなもスゴいと思う。先生は確信してるよ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
全員の鑑定を終え、カサンドラちゃんが前に出た。
「改めてお願い申し上げます。どうかこの世界をお救い下さい……」
生徒たちのテンションは上がってる。拒否どころかやる気満々だった。その証拠に、クラスの中心人物である中津川と、女子のリーダー格である篠原が言う。
「ここまで来たらやるしかないよな、そうだよなみんな!!」
「ええ、やりましょう。私たちの力を合わせれば、何でも出来るわ!!」
クラスのツートップが言うと、残りの生徒たちも叫ぶ。
「やってやるぜ!! オレに任せろ!!」「へへ、オレの鋼の
「バッカ、やるのはオレだぜ!!」「ふん、男子ばかりにいいカッコさせられないわ!!」
騒ぐ騒ぐ……おいおい、これが若さか。
でも、気になることがある。それを確認しようとカサンドラちゃんに聞こうとしたら、生徒たちの一番後ろにいた少女、
「あの~……ちょっと質問」
御影の声は不思議とよく通り、生徒たちの騒ぎはピタッと止む。
この雰囲気に酔っていない俺と御影だけが気になっていたことを質問した。
「やるのはいいけど……うちら、家に帰れるの?」
カサンドラちゃんの答えは、静寂だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まぁ、そんな気はしていたよ。異世界召喚のテンプレだ。
生徒は一気に不安になる。だがそうじゃない雰囲気のやつもいる、もしかしたら異世界召喚系のラノベを読んでるヤツかもしれない。
俺は教師らしく前に出て、カサンドラちゃんに聞いた。
「カサンドラさん、呼んだのはいいけど、帰すことは出来ないんですか?」
「……………残念ながら、現在の召喚魔術では」
「なるほど……」
さすがに、少し効いた。
異世界召喚あるあるだと知ってたが、自分に降りかかるとは思っていなかった。
でも、精神的に幼い生徒たちはもっと不安だ……現に、何人かの女子生徒は涙を流したり、自分のスマホで必死に連絡を取ろうとしてる。男子生徒もスマホをいじったり、顔を押さえて呻いている。
ここは俺がしっかりしないと。
「カサンドラさん、キミは『現在の』って言ったよね? つまり、これからはわからないってことだ」
「…………え?」
「みんな、聞いてくれ!!」
俺は生徒たち一人一人の顔を見ながら言う。
「どうやら先生たちは、とんでもないことに巻き込まれたらしい。現時点では家に帰ることはおろか、家族や親戚、隣のクラスの友達や部活仲間に連絡すら取れない」
俺は、現在の情報をまとめて生徒たちに言い聞かせる。
まずは、これが現実だと理解させる。その上で言う。
「カサンドラさん曰く、『現在の』魔術では帰れない……でも、未来はわからない。みんなのチートを見せてもらったけど、それぞれが素晴らしいチートばかりだ。もしかしたら、みんなの中に、召喚魔術を使える生徒がいるかも知れない。まぁ俺は
お、ちょっと笑いが上がった。よーっしこの調子でいくぞ。
「だからみんな、力を合わせて頑張ろう。本当は危険なことはさせたくないけど、みんなは一人じゃない、三〇人の仲間がいる。だから……帰るために、みんなで力を合わせて頑張ろう!!」
きっと、これが俺の役目だ。
巻き込まれて召喚されたんじゃない。三〇人の生徒を守るために召喚されたイレギュラーなんだ。
俺の演説は、多少なり効果があった。
「そうだ、相沢先生の言う通りだ……みんな、頑張ろう!!」
「そうね、相沢先生の言う通りよ」
中津川と篠原のツートップ、そして二人に同調してやる気は伝染する。
「やろうぜ、オレらなら」「ええ、できる」「へへ、なんか楽しくなってきた」
「相沢先生、カッケェじゃん」「修理だけどな」「バッカ、それ言うなって」
こうして、三〇人の心は一つになった。
まだまだ不安だけど、俺は教師の努めを果たせただろうか。
「…………31人目」
カサンドラちゃんが、ポツリと呟いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後、謁見の間を出た俺たちは個室に案内された。
今の時間帯は深夜のため、この国の王様は既に寝てるらしい。ぶっちゃけ眠気なんてなかったが、案内された以上は部屋で寝るしかない。
部屋は六畳ほどで、ベッドと机と椅子が設置され、クローゼットには軍服みたいな服が入っていた。もしかしてこれって王国の兵士の服かも。
「はぁ………なんて日だ」
別に芸人のギャグじゃない。本当にそう思っている。
寝る気にはなれず椅子に座る。机には花瓶があり、見たことのない花が飾ってあった。もしかして異世界の花かな……ちょっと手を伸ばす。
「っと、やべっ!?」
ガシャン……と、花瓶を落としてしまった。
やっちまった。来て早々これかよ……待てよ?
「確か、
ふと興味が沸き、花瓶に手を伸ばす。
やり方は知らんが、花瓶に触れて念じてみた………。
「………はは、やり方知らねーのにムリか」
花瓶は、元に戻らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます