クラス召喚に巻き込まれた教師、外れスキルで機械少女を修理する
さとう
第一章・【戦乙女型アンドロイドcode04ブリュンヒルデ】
第1話プロローグ
俺の名前は相沢(あいざわ)誠二(せいじ)。28歳独身で、職業は高校教師だ。
さて、俺は現在、受け持ちのクラスメイト三〇人と一緒に、とある王国にある城の「謁見の間」とやらにいる。
もちろん、課外授業で王国の城になど来るはずがない。これはそう、俗に言う「異世界召喚」とやらだ。
この手の話では、若くて勇敢な一六~一八くらいの少年少女が呼ばれるモンじゃないのか? なんで俺まで一緒に……と言っても仕方ない。
そして、この謁見の間には、俺たちを召喚した魔術師っぽい連中がどよめいていた。どうやら召喚が成功して喜んでるのか、それとも別の理由か。なかなか俺たちに話しかけては来なかった。
クラスメイト三〇人の反応は様々だった。
喜ぶヤツ、戸惑うヤツ、ほくそ笑んでるヤツ、女子同士抱き合い涙目のヤツ……こりゃわかってる奴とそうじゃないヤツが見事に分かれてる。
俺はと言うと、何も言わずにジッとしていた。
この手の召喚系の話はネットで読んだことがある。こういうときってクラスでもリーダー格が出てきて、みんなを纏めようとするはずだ。
「みんな落ち着け!! まずは現状を確認するんだ!!」
大声でみんなの注目を集めたのが、クラス委員長でクラスの中心的存在である「中津川(なかつがわ)将星(しょうせい)」だ。身長も高くスタイル抜群、読モのバイトなんかもやってるイケメンだ。
「まず、ここはどこか、そして何が起こったか……話を聞こう」
というか俺、教師なのに何もしてない。
こんな状況で大人を頼れ、なんていえない。でも俺だって教師の端くれ、生徒たちは生意気でムカつくヤツもいれば、タメ語だけど慕ってくれるようなヤツもいる。
ここは大人の俺が、行くしかないな。
「待て中津川、俺が聞こう……」
「相沢先生……」
俺は魔術師らしき人物の前に出ようとする中津川を押さえ、一歩前に。
言葉が通じるか知らんが、日本語で話すしかない。
俺はゴクリとツバを飲み、一〇人ほどいる魔術師集団全員に聞こえるように話す。
「あ、あの……ここは一体? それと、あなた方は……?」
ヤバい、ちょっと足が震えてる。
すると、フードを被った魔術師が一歩前に出て、被っていたフードを外した。
「………ぅお」
もんっっっのすごい美少女だった。
長くキラキラに光る銀髪に、青く透き通るような瞳、彫刻のように整った完璧な容姿。まるでどこぞのお姫様のような。
「………え?」
すると、銀髪の少女は手を組んで跪いた。
周りの魔術師も、全く同じ動作で跪き、目の前の少女が言った。
「勇者様……どうか、我らをお救い下さい!!」
どこまでも、テンプレな展開だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まず、この少女はカサンドラというらしい。
ここが『オストローデ王国』という大きな国で、カサンドラちゃんはお姫様だそうだ。
そして俺たちを召喚した理由は、やはり魔王だった。
この世界に現れた七人の魔王を倒すために、異世界から来たりし勇者の力が必要だと神託を賜ったそうな……それで三〇人も必要だったのか?
カサンドラちゃんは言った。
「神託では、大いなる三〇の光が希望となる、とあります」
ええと、それってクラスメイト三〇人のことだよね? じゃあ……………俺は?
すると、クラスメイト三〇人も落ち着いたのか、私語が目立ってきた。
「おい、異世界だって」「これってラノベの世界だよな」
「カサンドラちゃん可愛いよな」「魔王ってあの魔王? まさか倒せとか?」
「ねぇねぇ、これって帰れるの?」「わかんないよ……」
不味いな。歓喜の声もあるけど不安や動揺の声のが多い。
さらに、カサンドラちゃんは衝撃的で異世界ありがちな話をした。
「異世界召喚されたみなさん、あなた方には『スキル』と呼ばれる特殊能力が備わっています。これからみなさんに宿った『スキル』の鑑定を行いたいと思います」
わぉ、ありがち。
スキル、つまり特殊能力か。もしかして俺にも?
すると、クラスメイト三〇人は一気に興奮状態に。
「スキルだってよ!!」「やっべぇチートじゃね?」「な、なんか怖い」
「おいおい、マジで夢なのか?」「バッカ、現実だって」
騒ぐのも無理ない。現実の日本じゃお目にかかれないしな。
「ほらみんな落ち着いて、静かにしなさい!! 先生、みんなを落ち着かせないと」
「あ、ああ。悪いな|篠原(しのはら)」
真面目で成績優秀、オシャレ眼鏡を掛けて長い黒髪を纏めた少女・|篠原朱音(しのはらあかね)が俺の隣に立ってみんなをまとめる。
状況は理解出来た。とりあえずここの人たちに敵意はなさそうだし、スキルの鑑定とやらを受けるしかない。
「カサンドラさん、スキルの鑑定とやらは一人ずつですか?」
「はい、そうです」
「よし、じゃあみんな、出席番号順に並べ!! 落ち着いて、静かにな!!」
手をパンパン叩いてみんなを並ばせる。
異世界だろうと、いつもと変わらないやり方でいく。みんなを不安にさせないためにも、ここは俺が中心になっていくしかない。
全員を並ばせ、俺はカサンドラちゃんに向き直る。
「ま、まずは……俺から頼む」
「はい。ですがその……」
「ん?」
カサンドラちゃんは、言いにくそうに俺に言った。
「あの、あなたは『選ばれし三〇の光』ではなく、若い力でもなさそうです。恐らくですが、召喚に巻き込まれただけかも……」
つまり、俺は巻き込まれただけ。
そりゃそうだ。召喚されたとき、帰りのHR中だったからな。いきなり真っ暗になって、気が付いたら謁見の間ってオチだ。
「………じゃあ、俺にスキルとやらは」
「いえ、あると思いますが……」
「………それでも頼む。生徒を安心させたいし、どんなやり方か見せたいんだ」
「わかりました。ではこちらの水晶にお手を乗せて下さい」
カサンドラちゃんの背後に、巨大な水晶があった。
俺は振り返り、生徒たちを安心させるように言う。
「まず、先生が行く。みんなよく見てろ」
すると、生徒からからかうようなヤジが飛ぶ。
「死ぬなよ相沢先生!!」「骨は拾ってやるからな!!」「先生カッコいいーっ」
「うるせ、ったく……」
俺は苦笑し、水晶に手を触れる。
すると、水晶は淡く発光し、空中に映像となって現れた。
********************
【名前】 相沢誠二
【スキル】 修理(リペア) レベル1
○壊れた物を修理することが可能
********************
「……………」
「……………」
「「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」」
俺も、カサンドラちゃんも、生徒も、微妙な顔をしていた。
◇◇◇◇◇◇
新作公開しました!
最弱召喚士の学園生活~失って、初めて強くなりました~
https://kakuyomu.jp/works/1177354054921002619
久しぶりに新作公開です。
召喚獣、召喚士、学園モノです。
よかったら見てね!
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