第九話 魔王

「よく来た勇者よ。決着を着けよう!」

「俺は勇者なんてガラじゃないんだが…お前は倒す!」

 これから殺し合いをしようというのに妙な気分だな。こんな気分は王を継ぐ儀式以来味わったことがない。血がたぎる。


「これで終わりか…」

「俺の勝ちか…?」

 勝負は一瞬で着いた。肉薄し、お互いの急所を狙って剣を突き出す。僅かにはやく勇者の剣が我の心臓を穿った。これまでの事が脳裏をよぎる、故郷の事、部下たちの事。恐らく結ばれるであろう和平条約の事が、そして今までの自分の生が。


「なぁ勇者、これからお前はどうする?」

「どうもしないさ、多分勇者だとか呼ばれてちやほやされて。それで終わりだ」

 ああ、なんと精悍で純粋な男か。もっと早く彼と出会っていれば違う関係を結べたのかもしれない、今思ったところで空想以外の何ものでもないのだが。


「さて、我はそろそろ逝こう。最後に話せてよかった勇者よ。せめてお前の行く道に幸福がありますように」

「お前がそんなガラかよ。まぁそうだな、ありがとう。さようなら。もう二度そのしけた面みせるなよ」

 最後に我は笑えただろうか、悲しみを持たずに消えれただろうか。死んでいった部下たちの分も生きれただろうか。わからないが報いたそう信じるしかない、それに最後に綺麗な朝日を久しぶりに見れた。戦の終わりを告げる新しい日。これからの時代があの朝日のように照らされんことを。

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