第七話 分岐

 卒業が近づくごとに進路の問題が付きまとい始めた。

 二人の行くべき道の違いは容易に埋められるものではなく、成績、容姿そういったもので差が出来。関係性に亀裂を生じさせる。あるいは社会的劣等感か。


「俺、卒業したら就職しようと思う」

「私も就職する」

 彼女は言った。一流大学への進学がほとんど確約されているといってもいい状態で彼女はそのエリート街道を自ら捨てることを宣言した。それは進路に選択の余地のない彼には嫌味や中傷の類であるとしか思えなかった。


「就職おめでとう」

「あなたもね」

 お互いに就職をした。一人は将来有望な企業、一人は親族経営の工場勤務。差は歴然としていたが選択は終わった、選んだ道をただ進むしかなかった。時間がすべてを洗い流しお互いを良しとできるまで。

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