第六話 同居

 文化祭の後、彼女に告白をした。感情が最早制御できぬところにまで達し。その情動は限界であった。

「俺と付き合ってください」

「お願いします」

 告白というには大仰であった気もするが若気の至りであったのだと思うしかなかった。そして世間様で言えば致すところをいたしたのである。


 ただその後が問題であった。喜んだ両親たちは次に日の内に両家の婚姻を確約してしまった。つまりは婚約を結んだのである。当人たちは付き合う程度の事しか思わっていなかったために自体の大きさに驚いた。さらに二人の新居と言って共通の家屋まで用意されていた。逃げようはなかった。

「ねぇ、どうなってるのこれ」

「わからない、寝て起きたらこんな有様だった」


 寝ているうちに家具、寝具。本人たちまで引っ越しが敢行された。疑念の余地もなく誰の仕業であるかは分かった。電話があったためである。

「おはよう、それと婚約おめでとう。新居を用意した仲良く暮らせよ」

「父さん何言って…」


 電話は切れた。どうしようもく今の状況に適合せざるを得なかったのだ。とりあえずは生活に必要なものはそろっていたし。二人で暮らすこと自体には異論はなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る