第五話 舞台

 仲のいい男女にカップルの役をさせる。友人たちは恐らく善意でクラスの出し物だし台詞が読めないとか、演技ができないなどは問題ではなくただ舞台の上で脚本に踊る男女が見たかったのだと思う。


「いいかい君たちは敵対する国の王子と王女だ、ベタだがなにもかも愛の力で乗り越えて結ばれる」

「説明の前に、脚本を頂戴」

「すまないついつい熱くなってしまった。はい脚本」

クラスに一人くらいは映画マニアが出し物が劇に決まった時点で監督のようなことを始めた。どうせ誰もしたがらない役であるから誰も文句は言わなかった。


「キス?」

「そうだ誓いのキス、王道だ。君たちにやってもらいたい」

「それは俺たちにはできない」

「どうして?君たちの仲の良さはクラスどころか学校中の周知であり遠慮することはない。そういう関係でなくともだ」

「そういう関係…」

「いやいっそそういう関係になってしまえ!今回の舞台はさながら披露宴だ!最高の舞台を用意しよう!」


 本番の日、舞台の上でキスをした彼らは周囲の熱に負けてとうとう付き合い始めた。長く止まっていた関係はその日一つの線を越えた。

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