第三話 彼の事情

 僕の両親は近所で評判になるほど仲睦まじい両親だった。僕はそれを誇らしく思っていたし自慢だった。

 けどある日父が浮気していたことが分かった。しかも相手は上司の奥さんで、社会に公表しない条件が責任を取って会社を辞めることだった。母はその衝撃で数日寝たきりになるほどだった。


「私たち別れましょう」

 父が家に帰ってきて、母が放った第一声がそれだった。父は唖然とした顔をした後覚悟を決めたようで口を開いた。

「ああ、別れよう」

 その一言で家庭は崩れ去った。後に聞いた話では父は同じく離婚した浮気相手と駆け落ちしたらしい。


 母は憑き物が落ちて解放された様なすっきりとした顔を浮かべていたよ、父は表面上はよい人間を装っていたけれど母にはひどい扱いをしていた。

 一緒に住んでいた僕にもわからないように巧妙に。


これが僕の事情、ここにいる理由の一つ。その後色々あって、まぁ今にいたるんだけどちょっと人に話せるような事じゃないしね。聞かないでくれると助かる。

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