第八話 僕から私
僕はどうやって帰ったのか、気づけばベットに倒れこんでいた。
僕になにが出来たのだろう。家まで送ることも、彼女を殴った男を殴り返すことも出来たかもしれない。
だが結局何もできなかった、何もしなかった。
浮かれていた、幸せだった、明日も続くと信じていた。全部打ち砕かれた。
失意と絶望の内に僕は大人になった。いつの間にか僕から私になり、身長が伸び、人を見る目も変わった。学校を卒業することも決まった。
「娘のためにできるのは、これくらいだから。せめて君がそばに居られように計らうことしかできない」
彼女の父は私が卒業の報告に行った日、彼はそんなこと言いながら私に自分の会社への就職を進めてくれた。精いっぱいの娘への手向けであったのだ。
そのうち実家を出て一人暮らしを始めるようになり、社会に順応し。精神だけがあの時に取り残されたまま生きていくうちに、自分のことくらいは整理がつくようになった。
そんなとき彼女が目の前に現れた。
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