第七話 眠る彼女

「落ち着いて、深呼吸してゆっくりと行こう。娘に会うのに悲しい顔を見せたくはないからな」

 階段を上り。廊下を渡り、ナースステーションの前を通り、彼女の部屋の前に来た。何があっても受け入れられるように気持ちを落ち着けて。


「さて、入るぞ。いいかい?」

「はい」

 僕は一歩病室に足を踏み入れた。鼻につく病室特有の消毒液の匂いと真っ白なベットが僕を迎えた。

 月明かりに照らされてベットに横たわる彼女のなんと美しく、可憐であったことか女神がそこに降臨したと言われても信じただろう。だが、その顔に生気はなく死人のようであった、


「肉体は健康そのものだが頭へのダメージが残って意識不明というのが医者の見立てだ」

「治るんですか?」

「分からない…いつまでかかるか分からないが目覚める可能性はあるそうだ。

私はいつまでも待つつもりだ。ずっと…」

「そんな…」

 ベットに横たわる彼女と、彼女の父親と隣で立ち尽くす僕。美しい月夜にはあまりにも悲しい光景だった。

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