第六話 急転の夜

「もしもし!佐々木さんのお宅でしょうか?」

「はい、佐々木はうちですが」

「ああ、よかった。夜分遅くに申し訳ない。私佐藤と申します。一信君はご在宅でしょうか」

「ああ、佐藤さん。少しお待ちください、今呼んできますね?」

 母に呼ばれた僕は事態の重要性も知らずに電話に出たのだった。

「はい、変わりました。佐々木 真一です」

「佐々木君か、夜分遅くにすまない。実は娘が帰り道で悪漢に襲われた」

「えっ!佐藤さんは無事なんですか?」

「ああ、体自体は無事だ。ただ頭を叩かれたとかで意識が今も戻らないんだ…」

「今佐藤さんはどこに?」

「病院だ。きてくれるか?」

「待っててください!」


 僕は急いだ。彼女に一目でも早く会うために、会ったところで何もできないことなんて分かりきっていたのにとにかく急いだんだ。

「やあ、来てくれたか一信君」

「ええ、娘さんはどこに?」

「すまない、少し話を聞かせてくれ、最後に娘に会ったのは君だからな…」

 僕は今日の事を洗いざらいすべて話した。彼女を貶めた男がいること、彼は恐らく恨みを持っているであろうこと。そして彼女と僕は付き合い始めたこと。

「そうか…いや、ありがとう。君のような子と出会えて娘は幸せだろう。さて病室へ行こう、娘が待ってる」

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