第2話 うたをうたう

 いまもときどき高校時代を思い出すのだ。

16歳。高校入学。入ってまもなく校内の合唱コンクールの課題曲が配られた。曲はシューベルトの「野ばら」。ドイツ語での歌唱だ。

 

 クラスで自由曲の話し合いが始まる。ピアノが一番上手いらしい子が皆の前に出て自由曲の案を募り、自分のレパートリーから一曲を推薦するとそれに決まった。すぐに指揮者や各パートが決まった。揉めもせず女子達はグループを作った。指揮者はまんまるな体の心優しい子。私たちは朝夕に教室で練習を重ねることになった。


私はまだみんなの名前を覚えていなかった。


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