三時間で巡る島

当時は『小さな飛行機』としか表現できなかった旅客機で

屋久島に行った

十二月だったろうか

とても暖かだったことを覚えている

持参した冬用ジャージが暑くて上着を脱いで腰に巻き

じっとりとした背中でリュックサックを背負い

山の頂まで登った記憶

でも、一番の記憶は

「一週間の宿泊期間中、一度も雨が降らなかった」という言葉

何日か目の辛い山道も、何日か目の頂上から見た黒と白の山肌

何日か目のエメラルドグリーンの滝

何日か目の変な名前の山、何日か目の野生の猿

何日か目の立ち入り禁止区域の岩だけの浜辺

何日か目の黒の群青色の海、何日か目の二メートル以上の高さがある岩

何日か目に夜、携帯電話で実家に電話したこと

宿泊先が自然保護団体、何日か目に車で資料館、何日か目に車で土産屋

あと「三時間程度で屋久島は一周できる」

修学旅行だったこと

一週間、誰かと一緒だったこと

名前が思い出せない

顔も思い出せない

景色の中にいるはずなのに

私は『三時間』だけ覚えている

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