一時間の時間思考

馬鹿みたいだ

一時間も歩いて辿り着いた場所が神社だなんて

一本の公道を歩いていけば辿り着く

昔からある神社

三が日は混みに混み

これだけの人間がいるのかと思うほどだ

お守りや札、破魔矢などを納める人を横目に

私は参道よりも外れた端の砂利を踏みながら見上げる

そこは昔から見ていた本殿

いつからだろう、願い事が叶わないと教えられたのは

あそこは今生きている喜びを報告するだけの場所で

これからも見守っていてください、と祈る場所

神様はエゴの塊で傲慢、人を塵としか見ていない

片づける時は下々に命じて箒で掃くのだ

私は、これ以上苦しみませんように、治りますように

そう願った

一時間かけて訪れ、一時間かけて帰る

自己満足なのは分かっていた

せめて何かに縋りたかった

そして誰かのせいにしたかった

だから今日、馬鹿みたいに訪れて本殿を見ながら

お前のせいで、と頭の中で毒づいた

もう祈らない、来はしても祈らない

あの願いは決して苦しまずに死んでほしい訳じゃなかった

治る可能性を取り除いてほしい訳じゃなかった

そう私のせいではない、お前のせいだ

分かっている、私のせいでもお前のせいでもなく

アイツの不養生のせいなのだと

誰でのせいでもなく、こうして流れ祈り帰る人を見ると

そういうものなのだと分かっている

見えない誰かがいる、見守ってくれるという安心感

救ってくれるという安定感、言い訳を与えられる救済

孤独を忘れ、諸行無常を押し付ける。なんとも独り善がりで物悲しい

来年も訪れるだろう、祈らないために

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