ノンビリ×ノンビリ

「や、やばいっ」


 私の名前はドリー。

今日から狩りに参加するんだけど、先輩との待ち合わせに遅刻しそうだ。

ダイナドンの止まり木にやって来たものの、誰もいない。


「しまった…… 先行っちゃったのかな?」


 腕時計を見ると、10分オーバーしている。

もしそうだったら、どうしよう……

朝の連ドラを見ている場合じゃなかったかしら?

すると、向こうから武器を背負った女性が走って来た。


「はあっ、はあっ…… や、やっちゃったかな?」


 反対から来た彼女は、私に気づかないで独り言を呟いた。


「しまったなぁ…… ドラマの録画なんて帰ってからでも見れたのに」


「あ、あの」


「……ん? あれっ、あなた、もしかして」


「あはは、先輩もドラマ見てて遅刻しちゃったんですか?」


 事情を説明すると、私たちは2人でお腹を抱えて笑った。


「あははっ、でも、良かった~。 ほら、私だけだったら、何か気まずいじゃない?」


「それ、分かります。 私も一日引きずっちゃうんで」


 何だか、この先輩はスゴく話しやすい。

気が合いそうだと分かり、私はほっとした。


「私の名前はラザニ。 ねぇ、今日は初めてだし、街に行かない?」


「えっ、いいんですか?」


「いいのいいの。 親睦会も兼ねて、行きましょっ」


 先輩に腕を引かれて、私たちは街へと繰り出した。








「先輩、あれ飲んだことあります?」


 私が指差したのは、玉やミルクティーって言う、最近流行っている飲み物だ。

お店の前にはいつも行列が出来ていて、私も何度かアカデミーの友達と飲みに来た。


「飲んだこと無いけど、美味しい?」


「はい、ツブツブが病みつきになります」


「じゃあ、並んじゃおっか!」


 私たちは、15分程列に並び、玉やミルクティーを2つ購入して、それを飲みながら街中をブラブラした。


「ほうじ茶味って美味しいですか?」


 先輩が頼んだのは、ほうじ茶味。

一口貰うと、香ばしい風味が口にフワリと広がる。


「私もそっち、飲んでみたいな」


「はい、先輩」


 私が飲んでいるのは、マンゴー味だ。


「あ、私、こっちのが好みかも」


「じゃ、交換します?」


「いいの? やった!」


 ミルクティーを交換すると、小学生くらいの男の子が向こうから歩いてきた。

私たちを見ると、ぼそり、と言った。


「蛙の卵ジュース飲んでら」


「……」








 さっきの男の子のセリフで、急に飲む気が失せた私たちは、気を取り直して射的屋さんにやって来た。

このゲームは、手前のかごに入っているボールを数メーター先の商品に当てる、というゲームで、棚の上の商品を落とせばそれが貰える。

一回100メダル(この国の通貨。 1メダル1円)で、制限時間は10秒間。

球数の制限は無い。

お店の人にお金を渡すと、私はボールを投げた。


「ダメ、当たっても落ちないです」


 商品は全部超合金の為、簡単には落ちない。


「まあ、見てて」


 先輩は、おもむろに背負っている武器を手にした。

先輩の武器はスプーン。

ハンマーより威力は低いけど、石や土を投げつけて相手を怯ませることが出来る。

それでボールをすくうと、遠心力を効かせて、放った。

ズババババ、と玉の雨あられで、棚がひっくり返った。







 超合金の玩具で一番可愛かった水牛を貰うと、今度はお返しです、と先輩の方を振り向く。


「お返し?」


「はい、私、これを使うんですけど」


 私が取り出したのは、ホーン。

角笛の武器で、横のダイヤルを調節することで、色んな動物の鳴き声を出せる。

これで、普通はモンスターをおびき出したりするんだけど、今回はもっと可愛い動物を呼び出す。


「ニャーン」


 私は、ホーンで猫の声を出した。

すると、建物の隙間から猫がいっぱいやって来る。


「えっ、やだー、可愛い!」


 先輩は、猫に囲まれてご満悦だ。


「ねぇ、明日もここに来て、続きやりましょ」


「もちろん!」


「あれっ、あいつら……」


 こうして私たちは、一日を終えたんだけど、まさかアカデミーの先生に見られているとは思わず、先輩をシャッフルする羽目になってしまった。

いい先輩だったのに……

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