異世界戦記・転魔撃滅ガッデムファイア ~ 地球から来た転生者どもはすべて倒す! 絶対神の魂を宿した最強の復讐者が、魔炎をまとって敵を討つ超必殺・撃滅譚!
第43話 転魔エリオン――ザ・プランダーシステム
第43話 転魔エリオン――ザ・プランダーシステム
晴れ渡った青い空の下、1人の少女が王都の路地裏を走っていた――。
それは金色の髪をあご先で切りそろえた、制服姿の少女だった。少女は細い水路に架けられた短い橋を素早く渡ると、幅の狭い石段を全速力で駆け上がる。そして
「あっちゃ~、やっばぁ~い。これもう完全に12時過ぎてるじゃん――きゃっ!」
思わず焦りの言葉を漏らしたとたん、不意に少女の足が突然止まった。何かに体ごとぶつかったからだ。いきなりの衝撃によろめいた少女は慌てて足を踏ん張り、すぐさま前方に顔を向ける。すると、すぐ目の前で誰かが倒れていた。
「だっ! だいじょうぶですか!?」
一目で状況を悟った少女は両目を見開き、倒れている人に駆け寄った。
「すいません! あたしがよそ見をして走っていました! ほんとにごめんなさい! ケガはありませんか?」
「……あ、ああ、うん、大丈夫かな」
狭い路地裏に尻餅をついていたのは中年の男だった。黒縁メガネをかけたその男は、短い黒髪をかき上げながら少女を見た。
「えっと、悪かったな。俺もちょっとぼーっとしてたよ。そっちは怪我してないか?」
「いえ、悪いのはあたしの方です。友達との待ち合わせに遅刻しそうだったので、思いっきり走っていましたから……。それでその、本当にごめんなさい。あたしは転んでないから大丈夫ですけど、どこか痛いところはありませんか?」
「ああ、たぶん大丈夫……いたっ!」
心配そうに見つめている少女の前で男はゆっくりと立ち上がった。しかしその直後、痛そうに顔をしかめた。男はよろよろと近くの壁に手をついて寄りかかり、自分の右足首に目を落とす。
「ちょっと足首をひねったか……」
「たいへん! あたしすぐに人を呼んできますので、ここでちょっと待っていてください」
「ああ、いや、これぐらいなら自分で手当てできるから」
慌てて駆け出そうとした少女に、男は手のひらを向けて言った。そして周囲を軽く見渡し、家と家の間の狭い横道に置いてある大きな木の箱に顔を向けた。
「……ああ、あそこなら座れそうだな。悪いけど、あそこまで肩を貸してもらえないか? そしたら自分で足首を固定できるから」
「あ、はい。もちろんです」
少女はすぐに男の右腕を肩に回し、支えながら歩き出す。そして狭い道の奥にある木の箱に男を座らせると、心配そうな表情で男の足首に視線を落とした。
「本当にごめんなさい。足首、すごく痛いですか?」
「いやいや、これぐらい大したことないから」
黒縁メガネをかけた男は軽く微笑みながら手を左右に振る。それから少女の後ろの地面を指さした。
「あー、悪いけど、足首を固定するから、そこの板を拾ってくれないか?」
「あ、はい。板ですね?」
少女はすぐに後ろを振り向き、狭い道を見渡した。しかし薄汚れた石畳の上には何もない。あるのは黒い染みと、建物の影だけだ。
「あれ……? えっとぉ、どこに板が……かひゅっ」
金髪の少女は小首をかしげ、足元と左右にもう一度視線を飛ばしながら男に尋ねた。その瞬間――少女の首が真後ろ近くまで一気に
「……悪いな、お嬢ちゃん。だけど痛くはなかっただろ?」
いつの間にか少女の背後に立っていた男がぽつりと呟いた。そして、少女の首を瞬時に
「ステータス・オン……」
男は再び呟き、仰向けになった少女の頭の横に目を凝らす。
「……名前はポーラ・パッシュ。年は14歳9か月。資質は2つとも
男は少女の
「
男は淡々と呟き、懐中時計と死体を交互に眺める。
「……心肺停止60秒経過――
誰も通らない無人の路地裏で男は淡々と呟いた。そしてさらに刻々と進んでいく秒針を、感情のない瞳で見つめ続ける。
「……心肺停止180秒経過――
2度目の呟きとともに男は再びポケットに手を突っ込み、今度は白銀のコインを取り出して指で弾いた。するとコインは回転しながら宙を舞い、死体の腹の上に落ちて止まった。
「
その瞬間、少女の死体が淡い光に包まれた。同時に細い首がかすかに動き、白い頬と青ざめた唇にゆっくりと赤みがさしていく。
「
男はさらに呟き、血色が戻った死体の顔に視線を落とす。するといきなり死体が両目を見開いた。さらに少女の死体は白目を剥いたまま、全身を小刻みにけいれんし始める。そしてそのけいれんが収まったとたん、死体の腹の上にあった白銀のコインは砕け散り、光の粒となって宙に溶けた。
「
その男の言葉が終わると同時に、死体の唇がかすかに開いた。そして
「
男は小さな息を吐き出し、木の箱から立ち上がる。そして懐中時計をポケットに突っ込んだとたん、少女の死体が動き出した。
金髪の少女はゆっくりと体を起こし、自分の白い両手を見下ろした。そして壁に手をつきながら立ち上がり、呆然とした
「えっと……ここは……?」
その
「転生おめでとう。ようこそ、異世界へ」
***
・あとがき
本作品をお読みいただき、まことにありがとうございます。
参考までに、明日の投稿時間をこの場に記載いたします。
引き続きご愛読いただけますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
2019年 1月 16日(水)
第44話 06:05 犬耳少女と朱炎の少年――
第45話 11:05 悩める少女と試練の少年――
第46話 16:05 初めての転生――
第47話 19:05 光と闇と、魔女と悪魔――
第48話 23:05 錬金術師が暮らす家――その1
記:2019年 1月 10日(木)
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