02. ただいま

 五感を取り戻すのに、数分は要した。


 最初に目に入ったのは、雲一つない青空。

 どこかの野原で、俺は大の字になって寝ていた。


 暑い。

 上体を起こすのに、また数分。

 混濁した記憶を整理し、周囲を見回すと、野原ではなく児童公園の一角だと理解する。


 そう、頭の中は酷い有様だ。

 地球での知識が奔流となって甦り、激しい頭痛に襲われた。


 児童公園、公衆トイレ、ジャングルジム、どれも懐かしい。

 長い時間を掛けて頭が落ち着くと、ここがかつての自宅近くであることも思い出した。

 子供の走り回る、平和な日本。小さな女の子が、キコキコとブランコを独り漕ぐ。


「帰って来たのか……」


 見れば服装も白シャツにジーンズ、剣帯や抗魔マントは消え失せた。

 腕に幾筋も浮かぶ古傷が無ければ、長い夢だったみたいだ。

 目の前の光景とはかけ離れた、それでいて心に深く刻まれた夢。


 でもさ、あの仕打ちは無いよな。

 期待させといて下げ落とすのは、一番悪質だろう。

 この日本で、滅魔の一撃なんて何に使うんだよ。


 ヨロヨロ立ち上がった俺が次に口にしたのは、「あんのクソババア……」という、およそ勇者らしからぬ悪態だった。

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