第18話 日本の神についての覚え書き

 序


 日本の重要なものを隠していることを示す漢字が六個ある。

 それは、禁、裏、秘、奥、隠、忌である。


  1、


 天は「あま」とも読め、「あめ」とも読める。どちらも使用は現場により、巧妙に入れ替えている。どちらのことばが正式で、どらちらが虚偽かは、その時々で変わる。統一するように整理しても、すぐに攻撃されてぐちゃぐちゃになる。

 あめは、雨であり、悲しくも恵みの雨である。日本は雨を嫌わない。

 「ドン」と呼ばれるものは、秘中の秘である。

 日本神話には、天船(あまつふね)という空飛ぶ船が記述されている。

 おみくじは、「大事な大事なくじ」という意味である。


  2、


 八百万(やおよろず)の柱(はしら)がある。多神教の日本にはたくさんの柱がある。

 一神教の柱もいる。一神教の柱も、八百万の柱の一柱にすぎない。

 社(やしろ)はやおろずの城を意味する。社は、「もり」とも読み、森を意味する。神社において、社と森は区別がつかない。

 鳥居は、鳥がとまるから鳥居という。

 大和(やまと)は、山の家を意味して、奈良県の家(ならされた土地の家)を意味する。そのまま、山の都を意味する。


  3、


 日本の王は、日嗣(ひつぎ)の御子(みこ)である。

 太陽の継承者という意味だ。

 人(ひと)は、人類を意味する日本語である。


  4、


 君は、貴身(きみ)であり、君主を意味する。忠誠の対象であり、たくさんいる。

 日本の王のことは、大王(おおきみ)という。


 風(かぜ)と、彼是(かぜ)は混同されている。上司の命令の実行を風(かぜ:彼是)ということがある。


 祭り(まつり)は、政治と神事と宴会からなる。

 祭りに従わないものを、奉わぬ(まつろわぬ)民という。反体制という意味である。


  5、


 三種の神器は、日本神話の象徴である。

 三種の神器(みくさのたから)は、草薙の剣、八咫の鏡、八尺瓊勾玉である。

 剣は、吊る木(つるぎ)であり、長細い棒のことである。

 鏡(かがみ)は、影見(かげみ)であり、姿を映すものである。

 勾玉は、曲玉(まがたま)であり、魂に似せた飾りである。誰がどのように魂の形を知ったのかはわからない。神代の日本で、魂(たましい)がどのような概念だったのかはわからない。

 三種の神器は、剣と鏡は緋緋色金(ひひいろかね)でできていて、勾玉はヒスイでできている。


 四種類の魂について記す。

 和魂(にぎたま)は、にぎやかな魂であり、仲の良い魂のことである。

 荒魂(あらたま)は、あらぶる魂であり、暴力的な魂のことである。

 幸魂(さちたま)は、しあわせな魂であり、結び、結婚を意味する。

 奇魂(くしたま)は、珍しい魂である。


 結びによってできるものを、娘(むすめ:結女)、息子(むすこ:結子)という。

 結びの儀式には、榊(さかき:賢木、賢い木の意味)の木を振る。


  6、


 おそらく、日本の神は、彼身(かみ)であり、「あちらの実体」という意味である。

 「あちらの実体」あるいは「あちらの存在」という意味の「かみ」は、自然の神、貴人、天皇に対しても共通概念として通用する神概念である。

 神(かみ)は神威(カムイ)より古く、神威とはアイヌ民族が神性なものの名前である神を格好よく言いかえて神威と呼んだのだろう。

 黄泉(よみ)は、夜身(よみ)であり、「夜の実体」を意味して、死後の世界を意味する。

 黄泉から帰ることを、蘇り(よみがえり)という。

 地返しの玉は、イザナギが黄泉から生還した象徴である。

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