第17話 海蔵経典

 浦島は黄金宮殿(金閣寺)にいた。

 浦島は、空想科学小説の読みすぎで統合失調症になった。

 浦島の心には幻聴が聞こえてきた。

 これは一大事と考えた浦島は、幻聴を治すために旅に出た。

 海岸の神社に行くと、巫女がいた。

 巫女は、土星神託、木星神託、火星神託、水星神託、太陽神託の五つの木の札を差し出し、

「好きなものを選んで取ってください」

 といった。

 浦島は、土星神託を選んだ。

 巫女は神懸かりとなり、土星神託を表していった。

「浦島よ、竜宮へ行け。竜宮へ行けば幻聴は治る。」

 と。

 浦島は竜宮へ行ってくれる船を探した。

 すると、海岸におかしな村人がいる。

 見ると、それは貧乏神、疫病神、死神(しにがみ)だった。

 貧乏神、疫病神、死神が巨亀をいじめていた。

 あんなでっかい亀がいじめられるのかよ、と浦島は不思議に思ったが、巨亀にも複雑な事情があるだろうから、仕方ないと思って巨亀を助けた。

 貧乏神、疫病神、死神は逃げて行った。

 助かった巨亀はいった。

「こんなことがあるはずない(ありがたい)」

 といった。

「おかげで助かりました。お礼に竜宮へ連れて行ってあげましょう」

 それは願ってもないことだと浦島は巨亀に乗った。

 浦島は、幻聴が聞こえるのでいらいらしていた。

 泡のようなものを巨亀が作り、その中に入ると海中でも呼吸ができた。

 そして、しばらくすると、海底にある竜宮に着いた。

 竜宮には、仙女がいて、浦島をもてなした。

「海蔵経典を探しているんですよ」

 と浦島が聞いた。

 海蔵経典とは、竜宮に隠された仏典のことだ。

「どこでそれのことを知ったのですか」

 と仙女が聞いた。

 仙女は驚いたようだ。

「幻聴で聞こえてきたんです。竜宮には海蔵経典があると」

「幻聴で?」

「はい。むかし読んだ空想科学小説と幻聴の記憶の区別がつかないんです」

「海蔵経典は、魚眼観音の巨大貝の中にあると聞きます」

 それではそこに取りに行ってきますと、浦島は巨大貝に歩いていった。

 巨大貝のところには魚眼観音がいた。

「海蔵経典をゆずってくれないか。そこに統合失調症の治し方が書いてあると聞く。」

 浦島がいった。

「なぜ、海蔵経典などを求めるのだ。竜宮には、金銀財宝、酒池肉林、他に楽しいことがたくさんあるだろう」

 魚眼観音がいった。

「いや、おれたち統合失調症患者は、金銀財宝でも手に入れることのできない『統合失調症の治し方』を求めているもんだ。『統合失調症の治し方』は、金銀財宝より尊いものだ」

「ならば、仕方ない。海蔵経典が欲しいのならば、力づくで奪うがよい。わしはそこそこに強いぞ。かかってこい」

 魚眼観音がけしかけ、浦島が受けてたった。

「望むところだ」

 そして、二人はぶつかりあった。

「八門遁甲」

「奇門遁甲」

 勝ったのは魚眼観音の方だった。

 悔しがる浦島。

 だが、魚眼観音はいった。

「勢いで喧嘩を売ってしまったが、別に海蔵経典を持っていくのではなく、書き写していくのなら、かまわないぞ。そうするがいい」

 それはありがたいと浦島は、紙と鉛筆で海蔵経典を書き写した。

 海蔵経典には、『統合失調症の治し方』が書いてあった。

 浦島はそれを実行して統合失調症が治り、里へ帰ってみんなに言い伝えた。

 そして、その後、統合失調症の冒険者たちが竜宮の海蔵経典を探し求めるようになった。

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