第10話 暴走制御(オーヴァードライブ)
日本の最高司令部は、無城拠点要塞にある。
標準歴史線を日本が掌握した。無数の世界線の中で、物理学者が基準となる世界線を決めて、標準歴史線と名付けた。
「敵性反応。あと、五秒で被弾します。五、四、三、二、一、被弾」
「どこの国だ」
「ロシアですが、おそらく国籍を偽装しています」
掃除係が端末をいじって、敵の位置情報を画像認証で追尾。
「二十体います。前衛に二体、後衛に十八体」
「隊長、物理ガン、使っていい?」
「そこまでの敵か?」
「念には念を入れた方がいいでしょ。敵さんの装甲は、かなり硬そうに見えますよ」
「合金なら通常弾で十分だ。液体やゲル体、虚数装甲の場合は、やはり、物理ガンがいるだろうな」
「許可くださいよ」
「目視」
「ガラス越しの目視が必要な理由がわからないんですよ、おれ」
床が揺れた気がした。
「攻撃くらってるぞ」
「物理ガンの許可お願いします」
「敵襲に、虚数成分確認。物理実験です」
敵襲は物理実験か。国際条約で、兵器の使用より、科学開発に予算をまわさなければならないと定められているため、兵器の使用のたびに科学実験を行うのだ。
戦争を起こすなら、せめて文明を発達させなければ、誰もまともに戦わない。
「物理ガン、許可」
隊長が端末で認証する。
おれは物理ガンが必要になるのわかってたけどね、といいたげな掃除係が砲台席に座った。
「それじゃ、いくよお」
要塞の端末から、敵の電気系のプログラムをハッキングしようとする。
「回線接続。敵と無線オンラインです」
「よし」
プログラム暴走(オーヴァードライブ)!!
敵味方問わず、電気系が駆動する。
敵があがいている。
そうはさせるか。
「暴走制御!!」
よし。
手ごたえがある。
だが、決着がつくまで油断は禁物だ。たたみかける。
プログラムの情報基底を探し、敵のプログラムを物理記号に翻訳する。
敵の物質をとらえた。
物理的暴走(オーヴァードライブ)!!
そして。
物理的暴走制御!!
ぐわんぐわんと周辺が揺れる。
「隊長、敵機二十体の物理を支配しました」
「よくやった。整備係にまわして、情報を抜いたら、とっとと敵に送り返す」
「はい。今日も大勝利です」
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