第10話  コミュ障っていうのは自分がそう思ってるだけであって本当にコミュ障って病気はないと思う

(私からも、積極的に踏み込んだこと話さないと...)


「おはよう、ユウくん」


「おう...」


「あの、私のこと覚えてない?」


「えっ?」


「中学で一緒だった青柳だよ!」


「あおやぎ?...え、あの青柳?」


「青柳梓、今は親が再婚して島内になったの」


「...マジ?」


彼女は頷いた。


「全然気付かなかった...。あんときとめっちゃ印象違うじゃん...」


「ユウくんも大分変わってるよ」


お互いに同じクラスだったが、異性同士という事もあって、下手に目立つのを警戒して大胆に長々と声を掛けれなかった。


元々似た者同士、やっと気兼ねすることなく話せるようになった。






帰宅後


『現実デ、友達ハ出来ソウカイ?』


「青狸か...」


『ラッキービーストダヨ』


「友達の定義がわかんねー...。

フレンズは普通に友達友達言ってるけど、

現実に友達って何だよ...」


布団に埋まりながら言った。


『...キミノ周リニハ、友達ガ沢山イルジャナイカ』


「どういうこと?」


『キミガ友達ダト思エバ、ソレハ友達ダヨ』


「ん、それって自分がパワハラだと思ったらパワハラだみたいな?」


『友達ノ定義ナンテ、自分デ考エレバイイジャナイカ』


(友達の定義か...、俺の定義...)






「パークにこんな場所あるんだ...」


目の前に人工的な建物が立っている。


「てか、何の建物なんだろう?」


建物の前で立ち尽くしていると、


「何方ですか?」


声で振り向くと立っていたのは

俺の知ってる獣耳の女の子じゃなかった。

普通の女の子だ。


「あ、えっと...、すみません。

何の建物かなーってちょっと気になっちゃって...」


「つまらないかもしれないけど、興味あるなら、是非見てください」


彼女の笑顔に心を許した俺は言葉に甘える事にした。


「私の研究所なんです」


「へえ、こんなデカいのを1人で?」


「厳密には私を入れて3人ですけどね」


「...君の名前は?」


「私はかばん。あなたと同じヒト」


「ヒト...!?」


ここには獣以外にもいたのか。

驚いて、感心した。


「あー...、えっと...、俺はユウ」


「ユウさんは何しに来たんですか?」


「いや...、なんというか...、友達作れみたいな...」


「そうなんですか。お茶淹れるんで、お座りください」


「あ、そ、すす、すみません...!

いや、そんな、お気遣いしていただいて...」


彼女は自分を丁重にもてなしてくれた。

運ばれてきたのは紅茶とクッキー


なんとも上品かつ、女子力が高い。


あまりにも香ばしい良い匂いで、手を付けずにはいられなかった。

一口クッキーを囓った。


「私が作ったんですよ」


微笑みながら自慢してきた。


「美味しいよ!こんなの初めて食った...」


「喜んで頂けて嬉しいです」


それをきっかけに少しずつ、喋るようになった。


「そうなんですか...、それで友達を」


「そうなんだ」


「友達...、私、友達いないんですよ」


「えっ...、君も?」


「私にとって、この島のみんなは家族です。

みんな、家族だから、友達はいない。

それが私の友達の基準です」


「友達の基準...」


「友達っていうのは自分で決めるものだから。

だから、ユウさんはもう家族ですよ」


彼女はそう言うと、あのフレンズリングを

取り出した。


「つまり、私の言いたいことは、

友達がいるって思うのも、いないって思うのも自分次第って事です」


「...ありがとう」


「私ができるアドバイスはこれくらいかな

ユウさん、現実でも絶対、家族のように思える友達が出来るはずですから。

...応援してますよ」


彼女の笑顔は、とても美しかった。


清々しい朝を迎えた。

手首には6つの宝石がある。


(友達の基準は自分次第か...)


決めた。

最後の一つは、彼女しかいない。


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