第9話  告白する練習だなんて今やる必要性あるんですか?

今夜でこの夢を見るのも5回目。

毎回見るのは楽しいんだけど...。


「あなたが七尾君ね」


「...何で知ってるの?」


「私はロイヤルペンギンのプリンセス」


「はあ...、えっと、質問してるのはこっちなんだけど...」


「あなた、好きな人はいる?」


何だコイツは...。

初対面の奴に『あなたの年収はいくらですか』と聞いてるようなもんだろう?


「あの...、いないです」


「なら良かったわ」


「良かった?」


「あなたに告白して欲しい人がいるの」


「ど、どういう...。話の展開が早すぎてついていけないんだけど...」


「こらっ!!口答えしないのっ!!

つべこべ言わずに誰かを呼びなさいっ!!」


「ひぇっ...、は、はいっ!すみません!」


急に逆ギレされて怖い。母に怒鳴られてるみたいだ。直ぐに頭を下げ、言うことに従った。




「アード!お前のことが好きだ!」


「ダメね。今のは0点よ。

本人気絶しちゃってるじゃない。

それに、全然ロマンチックじゃない」


「ふざけんなよ...、こっちはただでさえ顔が焼けるほど恥ずかしいのに...」


「全然丸焼きにしてもいいわよ」


「す、すみません...。次頑張ります...」




「マレーバク...

き、君のおしとやかで、上品な性格に心惹かれて...」


「いきなり褒め称えて...

何か裏があるわね...!結婚詐欺にでも引っ掛けてるつもり!?」


「えっと...」


「ストップストップ!

相手を不安にさせるって言うのはやっちゃいけないことよ、0点よ、0点」


(俺の責任じゃないだろ...)




ここまで来ると心労もピークに達してきた。


「ニホンオオカミ...、死が俺達分かつまで永遠に君を愛し続ける...、大好きだ...

結婚してくれ...」


「ニホもユウのこと好きだよっ!

だけどけっこんって、そんなに血がほしいの?」


「たんまたんま!2つ言わせてくれ!

1つは血痕じゃなくて結婚!2つ目は一人称そんなだった!?」


「ユウカちゃんがそっちの方が可愛いんじゃないって...」


「姉貴ぃぃぃいいいいい!!!!!

こっそりパーク来てんじゃねええええ!!!」


「せっかく良い所まで来たのにツッコミ入れる?空気が読めてないわ。まあ10点くらいにしてあげるけど、全然ッダメね。

ダメ男、さっさと次」


「評価が辛口過ぎるよ...、助けて...」





「...結婚してください」


「結婚?あなたと私が暮らす未来なんて全然見えませんわよ?」


「プリンセスさん...、ダメです...。

占いでフラれました」


「あんたねえ...、ダメね。

告る側じゃなくて告白される側になりなさい」


「そもそも何の真似ですか。

勝手にこんな練習だなんて...」


「ある人と作戦を立てたのよ。

彼女、告白する勇気がないから、

逆にあんたから告白させようってね。

100点取ったらその子教えても良かったんだけど」


俺は露骨に彼女の前で大きな溜め息を吐いた。


「君が強引にやらなかったら、多分俺一生

告白なんてやってないよ...。貴重な体験させてくれて、ありがとな。少しは挑戦してもいいかもって思ったよ」


そう言うと、彼女は上着のポケットの手を入れた。


「受け取って」


指で弾かれた物を手で掴んだ。


「これは...」


「告る時は私を呼んでね。

さて、もうすぐライブが始まるから、じゃあね」


彼女はそう言って去ってしまった。


「....、というか誰なんだ!?

誰と作戦を立てたんだよおおおおっ!?」

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