第7話 困ったときは占いに頼る事をオススメするが 朝のニュース番組の占いだけは信じるなよ
私の名前は島内梓。
七尾くんとは中学生の頃から一緒だった。
たまたま、同じ高校になったけど、彼は私の事を全く覚えてない。
恐らくは、自分も他人に声を掛けるのが苦手だったからかもしれない。
でも、高校では勇気を振り絞って、思い切って髪を切り、別人になった気分で話しかけた。
彼も私の様に変わって欲しい。
そう願って、彼に声を掛けているが、どうしても引っ込み思案な所が出てしまう。
どうすれば...。
「あ、七尾くん、おは...」
「おはよ」
私は驚いた。
いつも会釈だけで通り過ぎる彼が挨拶したのだ。
「えっ...」
単なる挨拶にもかかわらず、困惑してしまった。
(あのユウ君が...、挨拶!?)
「どうしたの?梓、顔赤いよ?熱でもあるの?」
ユキが声を掛けて来た。
「あっ...、あはは、何でもないよ!」
直ぐに手を振ったが、弁明になったのかは不明だ。
あのパークに行ってから、何か自分も変わった様な気がする。
「姉ちゃん、今日は...」
「私がいると気を使っちゃって悪いでしょ?
あのオオカミの子達とイチャイチャしてきなさいよ」
「イチャイチャってなんだよ!ただの友達だろ!?」
そう突っ込むと微笑んだ。
「なあに、あんたはどうせ現実で彼女できないでしょ?夢ん中でくらいコクって共同作業まで持ち込んじゃいなさいよ。汚しちゃっても私が洗っておくから!」
「お、おい!!な、何だよっ!
つ、つか、彼女できないってなに!?」
姉は時折デリカシーのない爆弾発言をしてくるのでおっかない。
「私はあんたの将来心配してんだから。
いざとなったら永遠にパークで暮らしても」
「それって遠回しに殺そうとしてるよね?
殺そうとしてるよね!?」
「冗談よ、冗談!」
楽しげな顔を見せて言った。
やはり、姉はドS気質なところがある。
「ハァー...」
家に帰っても、あの衝撃は抜けきらなかった。
もしかしたら、私は彼を気にかけるのが好きだったのだろう。
親元から子供が離れる時みたいな、
そんな喪失感。
(ユウ君は何で変わったんだろう...)
『ソレヲ知リタイ?』
聞き覚えのない声でハッとした。
「だれ...?」
『君ニ、教エテアゲルヨ...』
「...あの、どうしたの?2人とも喧嘩したの?」
「いや、違うんだ...、ニホンオオカミ...」
「....」
前回姉が変なことを言いふらしたせいで
互いに雰囲気が少しお見合い直前のよう気まずい。
じゃあ、呼び出さなければいいだけの話なんだけど...。
(どうしてユウ君は自分なんか...)
(どうして何も考えずに呼び出しちゃったかなぁ...)
「ねぇー...、本当に大丈夫?」
余計にニホンオオカミを心配させてしまう。
非常に申し訳ない。
「「大丈夫です!!」」
声がハモってしまった。
彼女は赤面し顔を反らした。
気まずい...。
すると...。
「ちょっとそこの人達」
「ん?」
何やら金色の卵の様な物を持っている、
鳥のフレンズだろうか?
「お時間ある?占ってみない?」
占いはあまり信じないが...。
状況が状況だ。
自分の悩みを聞いて欲しい。
「うらない?占いって?」
興味津々なニホンオオカミに俺はこう言った。
「アドバイスみたいなもんだよ」
「ふふっ、ありがと。
あなた達の...、特に2人」
彼女は俺とアードに指を差した。
「私はダチョウ。結構“当たる”の」
「お願いします!見てください!」
俺は直ぐに頭を下げた。
「自分がどうしたいのかよくわからないんです...!」
「だいぶ重症のようねぇ...」
苦笑いしてダチョウは言った。
「じゃあ、まずあなたから見ましょうか。
こっちにお願い」
ダチョウは俺を一旦二人から離した。
「実は...、恋愛について悩んでて...」
「わかりますよ。あなたのお姉さんのせいで
良好であった親友の関係が壊れようとしている。互いに友達であると意識するばかりに...」
「すごい...、なんでわかんの?」
「占い師ですから...。とにかく、あなたはその状況に白黒付けたい訳ですよね」
「ああ」
「では...、見ましょうか...」
ダチョウは卵を手で触り始めた。
「...どうですか?」
「見えますよ。
あなたの姿と...、もう一人の姿が...」
「もう一人?」
「うーん、随分とオーラが薄いこと...。
彼女のものとは比べ物になりませんね」
独りでブツブツとダチョウは語り出した。
「恐らくは、あなたの事をずっと前から目立たずに見守ってくれている。
あなたに気を使うことを楽しく思ってるわ」
「あの、誰だかわからないけど、俺はどうすればいいの?」
「あなたの道はあなた自身で切り開くの。
今の彼女を愛するか、それとも、現実の彼女を愛するのか。私の予見、どちらの未来でも結果は変わらないと思う」
「もっと具体的な事を教えてくれないんですか!?」
「ちょ、ちょっと...!占いはアドバイスって言ってたのはあなたでしょ!?
そこまで具体性を求めないでください...」
「す、すみません...」
「ハァー...、じゃあそっちの子」
「は、はい!」
先程と同じような行程を取った。
「見えるわ...。
もしかして自分はあの人が好きなんじゃないかと、戸惑っているのね」
小さく頷いた。
「そうね...。彼の側にいて、不安を感じないならあなたは彼のことが好きと言うことよ。
迂闊にすぐ結論を出すんじゃなくて、
一旦落ち着いて、自分自身と対話するの。
そして、決まったらなるべく早めに行動に移すべき。いいわね?」
「自分自身と...、や、やってみます!」
アードの占いも終わった。
「ダチョウさん、ありがとうございます。
少し頑張ってみます...。
あの、また、アドバイスして貰いたいんで俺と
友達になっていただけますか?」
「いいですよ。これも私、見えてましたから」
「ねえねえ!私も占って!!」
ニホンオオカミが言った。
「はいはい…、そうね…、あなたは...
今はあまり積極的に動かない方が良い時期よ。
今あなたには悪い運が付いてる。
安心して、これをあげるから」
ダチョウは黒っぽい羽飾りを彼女に渡した。
「それを持っていれば徐々に悪い運は消えていくでしょう」
「ありがとう!」
わかってんのかわかっていないのか、
とにかく嬉しそうだった。
占いが役に立ったか微妙なところだけど、
もう一人って一体誰なんだろう....?
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