第6話 少し変わった動物園に姉弟で行ったら恋愛相談受けることになったけどどうすればいいかな

「は、はじめまして。お、弟さんの友達のアードウルフって言います...」


姉ちゃんはその場で2、3分くらい沈黙していた。

無理もないか。俺も最初はそんな感じだったし。


「あっ、ああ!そうなの。よろしくね、私はユウカ」


「俺はさ...、友達作らないとダメなんだってさ」


(だからちょっと積極的になってたのね...)



「あんたは昔から人付き合い苦手でしょ。

大船に乗ったつもりで私に任せなさい」


「姉ちゃん...、ありがとうっ!!

最高の姉ちゃんだよっ...!!」


「本当に仲良いんですね...」


引きつった顔でアードが言った。








そんなこんなで山の切り通しのような場所を3人で歩き続けていると。


アードが耳をヒクッとさせた。


「...あっ、止まって!」


そう言った瞬間。


「きゃあああっ!」


悲鳴と共に何かが崖の上から転がってきた。


「姉貴っ、空から女の子が!!」


「なに!?」


「いててて...」


茶色い犬の耳を有し、茶色いセーラー服を

着た女子が倒れている。


「だ、誰だ?」


「あ、大丈夫ですか?」


「痛ぁ...」


立ち上がって尻を撫でる。


「あなたいきなり崖上から落ちて来てどうしたの?」


「ええ...えっと...」







「フラれた!?」


俺は思わず驚いてしまった。

姉ちゃんが鋭い眼光を向けてきたので、咄嗟に口を手で隠し頭を下げた。


彼女はニホンオオカミという。

あの崖上から落ちてきた理由が失恋とは、

一体どんなフラれ方をしたのか。


(ていうか、そもそもこのパークって...あっ)


姉ちゃんは親身になって彼女の話を聞いていた。


「んで、何でフラれたの?」


「えっと...」


恥ずかしいのか、声を潜めてその理由を述べた。


「じゃぱりまんに...、マヨネーズを掛けるのが好きだからさ、いつも掛けて食べるんだけど...。それを勧めたら、逆ギレされて...」


「私もあなたの気持ち分かるわ。

最低ね、その彼」


(いや...、彼女なんだよなぁ...)


心の声で突っ込む。


「あの...、お姉さんに任せて大丈夫なんですか?」


アードが小声で尋ねる。


「ああ...。俺と違って滅茶苦茶コミュ力あるからな」




「自分を受け入れて貰える人と付き合うべき。自分を受け入れてくれないのは、元々縁が無いって事よ。そんな落胆する事ない。人生は長いんだから」


「ありがとう...、なんか気持ちに踏ん切りが付いたよ」


「それは良かった...、そうだ。

私の弟と付き合うのはどうかな」


「はぁ...!?」


「えっ!?」


何故かアードも驚く。


「いやいや...、ねーちゃん!

そういうのいらないから!

大丈夫だから!ニホンオオカミもやだよな?こんなみ、見ず知らずと...」


「別に...、いいけど?」


「ハア!?」


「ほら、そう言ってるじゃない」


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。

そんな、ユウさんはそんな乗り気じゃないみたいですし...」


代弁するアードを見て姉は衝撃的な一言を

放った。


「アドちゃんはユウが好きなの?」


「「ハァ!?」」


不幸にも声が重なってしまう。


「えっ?」


奇々怪々な状況にニホンオオカミも戸惑う。


「だっ、だ、だから、あ、あの、客観的な立場で意見を申した訳でありまして、け、けっして弟様と、れ、恋愛関係を持とうだなんてそんな、そんな考えは微塵も無いわけでございましてっ...!!あ、あくまでも、あくまで自分は友人であって...!」


若干早口で反論する。


「そ、そうだよ。友人は友人に助け舟を出すのは当たり前だろお...!

あ、あで、あでもさ、俺、友達作ってるんだ。ま、まずはさ、友達として色々サポートとか、してさ。将来の事はそれからでも遅くないと思うな」


「友達からでもいいよ!

いろんな人と仲良くなるの好きだから!」


明るい声でニホンオオカミは答えた。


「じゃ、じゃあよろしくな。

…それとねーちゃんさぁ...。

余計な事言い過ぎだよ」


「私はユウを思ってやっただけなんだけどなぁー...」


反省する気が全く感じられなかった。


「はぁー...」


アードも疲れきった様な溜息を吐いた。


何はともあれ、これで3人友達が作れた。

多分、後4人だ。

しかし、姉ちゃんには恋愛相談は控えよう。大変なことになるな。

そう思った。

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