第3話 現実世界に戻ったと思ったら時間戻ってるんだけどこれはバグか何かですか

俺は目覚ましの音で目を覚ました。


「起きなーっ!!」


遅れて聞こえたのは、姉の声だ。


やはり、あのアードとの出会いは夢・・・。


「・・・えっ」


右腕に身に着けていたのは、変わったアクセサリー。

紐に、黒色の透き通った、四角い宝石みたいなのがついている。


「ヤア、オハヨウ」


さらに聞き覚えのある声で目が覚めた。


「あっ!!お前、青ダヌキ!!って、どこから・・・」


左腕を見ると、青と水色のベルトの腕時計をしている。

こんなの買った覚えはない。


「マジかよ、お前...」


変なものに憑依された気分だった。

すると、ドンドンドンと足音がする。


ガチャッと扉を開けられた。


「何時まで寝てんの?月曜日だよ」


大学生の姉が呼びに来た。


「・・・?え?月曜日?今日何日?」


「あんたどうしたの?2020年6月29日月曜日の朝7時だよ」


(過去に戻ってる・・・?

俺があの日電車に乗ったのは・・・、7月7日火曜日のはずじゃ・・・)


「早くしなさいよ...、全く。あと20分で出るからね」


そう言い残し、部屋を出て行った。


「おい、お前どういうことだよ...」


「説明シタハズダヨ」


腕時計の彼は答えた。

確かに、時間がなんとかって言っていた。

文句を色々言いたいところだが、仕方ない。




姉に車で途中まで送ってもらっている。


学校へ行く途中、質問した。


「お前、学校では黙ってろよ...。後、俺は何すればいいんだ?」


「現実デ友達ヲ作ッテミヨウ」


「は?そんないきなり...」


「アードト、友達ニナッテ、君ハ何カヲ、手ニ入レタハズダ」




しかし、1週間をもう一度やり直すのは気が滅入る。

だが、1週間をやり直すことで、何か変化があるのか?


午前中の授業を終え、昼休みのことだった。


俺はいつも賑やかな教室があまり好きでは無い。

人がいない4階の廊下で昼飯を食べ、静かな図書室の2階で本を読む。

それが日常。


いつもの様に、昼飯を目立たぬ所で終え、図書室に行った。

普通は、推理小説を読むが、今日はアードウルフが気になったので、

それについての本を探す事にした。


ここのことは熟知しているつもりだったが、中々理想に合致する本が

見つからない。既に休み時間残り10分程。

ギリギリで見つけた。


(・・・借りるか)


普段は借りる事をしない。

もしかしたら、初めて借りるかもしれない。

カウンターに行き本を差し出した時だった。


「あれ、悠?」


「・・・ん?」


「やっぱり悠じゃん!覚えてない?

小学5年か6年の時一緒だった、三咲幸平みさきこうへいだよ」


幸平・・・?


思い出した。確か5年だ。同じクラスだった。


幸平は確か、サッカークラブに入っているとかで運動が得意だった。

俺と反対で、リーダーに相応しい人物だった。


思い返せば、彼は体育でペアを組む事があると、中々人に声を掛けられない俺を見て、

自ら"一緒にやろうよ"と言ってくれる人であった。


何回か一緒に帰った記憶もある。

2人で仲睦まじく喋りながら帰る同級生を嫉妬していた俺にとっては、とても嬉しい事であった。


だが、そんな彼も、6年に上がる頃に、クラス替えと共に転校してしまった。


「ああ...、あれ、玉戸たまどじゃなかった?」


「あぁ、両親が離婚しちゃってね。丁度5年の春休みくらいかな...。

今は母方の苗字なんだよ。

あの時はなんて言えば良いかわからなくてさ、悠に何も言えなくて本当悪かったな...」


「そうなんだ...」


だから、入学式の時気が付かなかったのかと、納得した。


「折角再会できたんだ、一緒に帰ろうぜ」




俺がアードウルフに出会ってなければ、彼との再会はありえなかった。

そういう意味で大きな変化だった。




彼の話によると、同じ県内の違う市に引っ越していたらしい。

中学に入った時、足を怪我してしまいサッカーを引退したそうだ。


「そう言えば悠は何部に入ってるんだ?」


部活...。

何となく人付き合いが不安で遠慮していた。


「いやぁ...、入ってないんだ」


「じゃあ、写真部入る?1年は俺しかいないからさ。

悠が来てくれたら嬉しいよ」


「写真部?」


「怪我で動けなかった時にさ、写真にハマっちゃって。

意外と良いもんだよ。明日、聞かせてくれよ!」


「あ、ああ」


幸平がいるなら、入ってもいいかもしれない。




家に帰宅した。

大学生というのに、本当に大学に行ってるのかと疑問符が

付くくらい、俺が家に帰るといつも姉がいる。姉は今2年生だ。

1週間前くらいに早帰りの日があり、12時過ぎに戻ったら、家に姉がいた

ので驚いた思い出があった。


何を考えているのか、何をどう過ごしているのか分からないが、

もし何か悩みがあったら、パークに行かせてやりたいと思った。



「ただいま。なあ、姉ちゃん、カメラって持ってたりしない?」


「なに突然...。まぁ、無いことは無いけど...」


後で渡す、と言った。



部屋に戻りベッドに座り、腕のアクセサリに語り掛けた。


「アードのおかげで、何か変われそうだよ」


「ソノ調子デ、友達作ロウネ」


「・・・ああ」






押入れの中から、使っていないデジタルカメラを取り出した。


(夕飯の時に持っていけばいいか...)


すると、携帯のメッセンジャーアプリの通知音が鳴った。


「・・・」

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