第22話 菅野よう子とオムニバスサウンドトラック

エヴァンゲリオンだけは何故かほぼリアルタイムで録画で見ていたものの、既に社会人なのでアニメには無関心になっていました。エヴァのテレビの結末なら、もういいやにもなりますかね。趣味は終始一貫音楽のままです。


ただ機会は巡り、2003年のゴールデンウィークに『ラーゼフォン 多元変奏曲』に出会います。

長期の休みになれば、決まってオールナイトのテクノイベントがあるのですが、谷間かぽつんとスケジュールが空いて、東京ウォーカーの紹介記事で何か面白そうかなと軽い気持ちで、新宿の映画館に『ラーゼフォン 多元変奏曲』観に行きました。

山田章博の絵も充分堪能出来る、何より橋本一子の音楽が響いたのですよね。最近のアニメの劇伴はここまで聞けるものなのかで、アニメもチェックの対象になりました。


まあ「ラーゼフォン」から始まり、アニメをレンタルビデオ定期的に借りた先に、見つけました、あの「ブレンパワード」(注.1)。全26話と富野作品にしては短い傾向でしたが、物語もキャラもメカも一線を画し、何より劇伴ですよね。ここまでオケでブロー出来るものかと唸ったものです。誰なの音楽と、その時代にwiki無いので不便ですよね。やっとwebで見つけての菅野よう子(注.2)でした。


その音楽担当菅野よう子。いつの間にこんな人物が出て来たものかと驚愕しかありません。何より音色の配置が妙、ここはオケだろうと思いつつもシンセで正解であったり、デジロックも、ドラムンベースも有りもてんこ盛りです。


その購入も然るべきでして。ミレニアム近辺は本編は手元に置けるだけの懐の余裕が無いので、劇伴のCD「ブレンパワード ― オリジナル・サウンドトラック 1」「ブレンパワード ― オリジナル・サウンドトラック 2」を手に入れました。そして小説1-3巻(注.3)もですか。またかなり後でDVD-BOX(注.4)が廉価版が出ましたので購入もしました。

そのCDは何と言うべきか、これはもうサントラではなくオムニバスサウンドトラックだろうです。


今作に限らず菅野よう子名義のアルバムは、劇伴を主に収めるサウンドトラックと違い、ゲストボーカルを多く配置して、オムニバスの雰囲気を醸し出しています。

この傾向は「マクロスプラス」「カウボーイビバップ」でも片鱗を見せていますが、ここまで多用されるのは「ブレンパワード」位ではないでしょうか。後の作品では適度にピンポイントに戻っていますし。いや「マクロスF」はその限りどころか全開ですかね。ただそれもマクロス作品の必要性であったりもします。


そもそも「ブレンパワード」は何故そこまでに楽曲のクオリティが極限なのでしょう。


菅野さんのインタビュー曰く、富野監督のリクエストが難解するとかです。それはそうです、物語の中心たる超巨大生体宇宙船の大きさが150km。絵作りにしても、楽曲作りにしても限界を超えています。そしてアンチボディの無限の可能性。これを表現出来るのが不思議でありません。


まあその菅野さん。稀にいますよね、とんでも無い無茶振りでも完璧な仕事に仕上げて来る方。経験上、それ位当たり前の事と難なく交わすのですけど、そこは才能は多分に有りましょうが、きちんと根幹となる意図の把握に時間を掛けている様です。推敲だけでがクオリティを決して上がる訳では有りません。ここはビジネスの話になりますけどね…まあ生きていれば全てがビジネスですか。面白そうなビジネス書をたまに取り上げるのも大いに有りです。



さて。OST1・OST2通して、主題歌以外菅野さん関与作品のゲストボーカル多いなと思って、改めてプレイリスト調べてみたらクレジットが意外と少ないのですよ。


OST1

Sonne~光/Artur Stefanowicz

Flow/岩下清香

愛の輪郭(フィールド)/KOKIA


OST2

Light of love/坂本 真綾

True love/Steve Conte


確かにフルサイズ歌ってる曲がクレジット作品の様です。他もあるのですけど、ここぞでコーラス隊入って唱っているので、クレジットのしようもないのでしょうね。

普通であれば、こんなに沢山の人の声が入っていれば、CDとしても統一性が無かったり、劇伴でも浮くのですが不思議と本編として成立しています。


実はここもポイントでして。映像時のこのクレジット作品、画面作りの演出の際にはボーカル抜きの作品として流れている事も暫し。その逆の本編ではボーカル付きの作品も有り。それを言ったらCDにも収められていない劇伴も、やもあります。菅野さん、26話の作品なのにパワフル過ぎませんか。

「ブレンパワード」アニバーサリーイヤーの際には、配信で良いので完全版のオムニバスサウンドトラックを置いて欲しいものです。

その際には、主題歌シングルに収められた「天神さんの子守唄/ 勝沼恭子」(注.5)の収録もお願いします。


また「YOKO KANNO SEATBELTS来地球記念コレクションアルバムスペース バイオチャージ」みたいなクロニクルが発売されたら、菅野さんのフィロソフィーを体系化して欲しいものですね。Sony Music Shopさんが幹事になって20枚相当になっても買うかもしれないですね。勿論豪華ブックレット付きでお願いします。



とにも。今作品が金字塔たるが如く、アニメのみならず実写においても、オムニバスサウンドトラックの裾野が広がって行きます。

挿入歌有りきはハリウッド作品でも、今迄見受けられましたけど。音楽監督が演目を一手に担い、作品の世界観を統一したのは「ブレンパワード」が発露ではないかなとも思います。

現に今迄のテレビ番組は「ブレンパワード」の許諾BGMが多過ぎます。選曲は出来るだけ知られていない作品からセレクトして、且つ張りの有る曲を求めたら「ブレンパワード」のオムニバスサウンドトラックに集中せえざる得ませんか。


いや統一に関して、厳密に言うと違いますね。全部含めて謎過ぎるOP、その曲は真行寺恵里の「IN MY DREAM」だけは、菅野さんの楽曲とアレンジではなく、ハードロッックテイストの別チームの様です。ここも、実は菅野さんアレンジがあると思うのですけどどうなのでしょうね。




最期の動画は有りません。メインはFlyingDogですが、菅野よう子全面に押し出した動画が無いので、気になった作品を検索して見て下さい。


まあざっくり検索も溜息しかないですが、それにしても七夕ソニックですよね。youtubeのお勧めがプレイリストに上がって来て視聴したら、どれもまさかの全編盗み録りですよ。うっかり聞いてしまいましたが…言える事は七夕ソニックの作品化は菅野さん公言通り一生無いでしょう。難解なピッチが乱れ飛び歌い手がうっかり引かれては、歌い直しの仕様もないですからね。そこ完全に見据えての菅野よう子一世一代のチャレンジなのに、こういうのは行けません。記憶に止めるだけにしましょう。





ブレンパワード(注.1)

もう一言では語れないので、wikiでブレンパワード (https://ja.wikipedia.org/wiki/ブレンパワード)を検索してみて下さい。あらすじ見ては難解かなと思っても、本編見ると味わい深いもが有ります。メインデザインとしていのまたむつみと永野護が存分に入ってるの胸熱とも。



菅野よう子(注.2)

音楽家にしてピアニスト。先進的な音色も貪欲に、数々のマニュピュレータが受け持ち、あちらこちらの界隈でも納得の作品を提供。

とは言え、菅野さん機械が苦手でマニュピュレータのヘルプとの記事も出てるけど、どうかなでして。


まあ私事です。今は無き道玄坂のYAMAHA渋谷店でサンプリング音源CDを暇を見つけては探していたのですが、その同輩たるお客の中に、壁の棚を共に見つめおきゃんな女性がいて珍しいなと。ああまさか菅野さんかなと、気付いても素知らぬ顔で物色を続けました。まあYAMAHA渋谷店は芸能の方沢山寄られていたので、ここは九分位本人でしょうか。恐らく。



小説1-3巻(注.3)

WOWOWでの放映終了後に、ハルキ文庫から文庫本として刊行されました。本編では書ききれない部分を何処迄書いているかと思えば、ほぼ脚本通りでしたので、そうなのかと。


しかし窺うと、富野監督にしては意外に設定詰めないままに制作入ったから、書き込める余地も薄かったのかなとも。そもそものブレンパワード の由縁が謎であったり、ブレンパワード側の母船ももっと知りたかったりします。後はオルファンでの宇宙旅行も詳細にあればなと思いつつです。とは言えそれが新たな富野スタイルなのかなとも思ったり。


あとは私の小説読みのスタイルですけど、九分九厘実写の俳優さんを充てますので、参考迄に読んだときの俳優さんは以下です。


伊佐未 勇:山下智久

宇都宮 比瑪:堀北真希


カナン・ギモス:芦名星

ラッセ・ルンベルク:向井理

ナンガ・シルバレー:佐藤隆

アイリーン・キャリアー:水川あさみ


クインシィ・イッサー:上戸彩

ジョナサン・グレーン:小栗旬


人数絞ってるのは、日本所属のサバイバル艦における手元のプロット仕様。

今となっては、丁度の年齢では有りませんけどやや適役かと。またここから生じて、続編のプロットを考えてみたり、二時間映画のプロットも考えたりで、創作の良い勉強させて貰いました。



DVD-BOX(注.4)

お手頃になったEMOTION the Bestの廉価版のパッケージを差します。パッケージのBOXアートは全ていのまたむつみさん。その原画はレンタルビデオで借りたVHSのパッケージから来ています。もう艶があって、これ芸術品だよねとも。



「天神さんの子守唄/ 勝沼恭子」(注.5)

「天神さんの子守唄」ですが、サブスクリプション等でお聞きなれば分かりますが、まさに菅野よう子の真髄です。現代音楽と子守唄が渾然一体となった名作。作詞:井荻麟(aka富野由悠季)そして作曲・編曲:菅野よう子ともなればそうでもありましょう。本編でもこことぞばかりに声優さんが歌っています。もっと世に出ても良いと思います。

ここからAOR寄りになったのが「花は咲く」と私は思いますけどね。

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