第17話 BOOM BOOM SATELLITESとヤマハサンプラーA3000

BOOM BOOM SATELLITESの活動時期はメジャーから数えますと1997年-2017年になります。

川島道行との悲しい別れによって活動終了となりますが、確実に日本の音楽界に革新を齎してきました。


その音質面での中核ともなったのが、刻まれたフレーズの連打です。聞いた時こそ、まあDAWソフトで手動で凄い刻んでいるんだろうなと思ってましたけど、いやヤマハサンプラーA3000を使っていると聞いて、かなりの得心。


サウンド&レコーディングマガジンのインタビューでも、A3000を言及していないのにと思いつつ、これがブンブンの名刺代わりなのに何故と、ここは企業秘密なのかとも。


そのヤマハサンプラーA3000は、私自身の思い入れがかなり有ります。

当時のヤマハのサンプラーの製品群は貧弱で、ハンディータイプのサンプラーがあって、ヤマハのお客様相談センターに電話したのですよ。リボンコントローラーのフィルターはMIDI信号で操作出来るのかと聞いたら、次期開発のサンプラーの参考にしますとの回答。


そして、満を持してのヤマハサンプラーA3000発売。MIDI信号によるフィルター割当は勿論各種パラメーターを操作出来る、モンスターマシーンそのものでした。

各パラアウトにハードディスク拡張機能ボードのフルオプションで軽く20万は越えた筈。それでも当時主流のE-MUサンプラーより格安なので歓喜ものです。

日本ではそこそこのヒットも、ユーロではバカ売れした一文をネットで見ました。


もう購入間も無く説明書隈無く読んでは、フル稼働です。モンスターマシーン故にこれ一台で全てが完結する勢いです。

何よりも中毒性が高いのはその直列並列にも出来る3系統のエフェクター。これをつまみで各種エフェクターにリアルタイムに差し替える事で、アブストラクトな表現が可能で、トリップホップ的なフレーズには積極的に活用していました。今も尚使い倒しても、まだまだ底なしのモンスターマシーンと言えます。


ただ、2006年頃に電気用品安全法なる悪法が発布され、ビンテージマシーンは流通出来ない厳則となりました。まあ焦りましたね、いつかはA3000のバックアップは用意しなきゃと思っていましたから、形振り構わず後継機たるA4000x1台とA5000x2台を中古で急ぎ手に入れました。


ただ、A4000/A5000シリーズはパラメーター階層のアップデートが有り、そう簡単に、リアルタイムで3系統のエフェクターを同時に変える事は出来なくなっていたのです。

その後、坂本龍一が旗振り役となって電気用品安全法が撤廃されたので、やや持て余す事になり、本当の予備機になってしまいました。そこから、近年の時点で手放す事となりました。


手放す理由も、コンパクトで高機能のエフェクターが登場したからです。コルグのKAOSS PAD QUAD。あの指先でエフェクターを変えれるシリーズです。エフェクターの数は絞られますけど4系統のエフェクターをリアルタイムで操作出来るので、A3000から乗り換えるの止む無き事です。もし中古で見かけたらお勧めの一台です。



いや待て、ブンブンの話は何処かにいったかですよね。そうブンブンのフレーズの細かい連打はA3000系の【jump】エフェクト(注.1)に由来します。フレーズサンプリングをA3000に取り込んで、非破壊のエフェクターで予想の出来ない音の飛ばし或いは連打が出来ます。

もしくはフレーズサンプリングを破壊再構築する【ループ・リミックス機能】(注.2)も有し、偶発性をメモリ出来ないですからこちらを使ったかもと。

この音作りが波及し、テクノは勿論エレクトロニカにも波及し、A3000ではなくても、フリーのソフトウエアでも表現出来るものが登場します。


とは言え、ライブでそれが表現出来るかと言えば、ブンブンの後期は人力で連打となり刻みます。そこはサポートドラムの平井直樹あればこそですよね。

そこから発して、そこまで出来るなら、ただ王道のデジタルロックを駆け上って行くなのですよね。


優れた機材から、優れたミュージシャンが生まれるのは今も尚と言う事です。




最期の動画は、ブンブンでのA3000らしき飛ばしのエフェクターものをです。


尚、「Scatterin' Monkey」(映画『ピンポン』劇中歌 / ワーナー・ブラザース『ダークナイト』劇中曲 / 映画「YAMAKASI」劇中曲)が正しくそれなのですが公式チャンネルには無い様です。ここは探してみて下さい。



■【公式】BOOM BOOM SATELLITES 『PUSH EJECT-Full ver.-』 https://youtu.be/Yp0_q4Tb7c8 @YouTubeさんから

初期作品。ドラムのブレイクの刻みがA3000そのものです。



■【公式】BOOM BOOM SATELLITES 『JOYRIDE-Full ver.-』 https://youtu.be/Wbb2MsD56JY @YouTubeさんから

エスカレートしてゆくA3000の刻みに、浮遊感のあるシーケンス。どちらかとテクノですよね。



■【公式】BOOM BOOM SATELLITES 『KICK IT OUT-Full ver.-』 https://youtu.be/56KV6q9CH_4 @YouTubeさんから

ブンブンを世に押し出したスマッシュヒット。幾度となくTVから聞いたものか。グリコのガム、日産の車、爆笑問題の国会コメディ等々、その割りにはシングルカットされていないのですよね。

A3000の刻みがここぞのポイントに抑えられ、ドラムだけではなくボーカルにまでも適用が意欲的。もっともこの頃は、A3000ではなくDAWでの処理かもと。






【jump】エフェクト(注.1)

世界初のエフェクトと言って良い程斬新すぎるA3000の飛ばしエフェクト。どういう開発過程を経てたのかヤマハに聞きたい程です。強いて言えばドラムンベースのジャンルがあったので、そこを目指していたかもしれません。

【jump】はピッチ・パンニング・センス等々のパラメーターを触って、尚且つBPMと連動出来るので強烈なフレーズを再構築します。最高の刻みは1/32いや1/64果ては1/128までいけたかもしれません。



【ループ・リミックス機能】(注.2)

エディット画面でのフレーズサンプリングリミックス機能。A3000にもその機能あった筈なのですがA4000/A5000シリーズで追加された覚えも有りおぼろです。積極的に使った覚えが無いので、元data破壊方式だったからかなと。

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