第10話 野村萬斎とボレロ

平成遺産なのに何故にクラッシックの「ボレロ」なのか、そこは最期迄お付き合い下さい。


そして野村萬斎、本当恐るべき方です。

まあシン・ゴジラのモーションキャプチャで方々の界隈の話題にも上がりましたけど、その真価は平成に入った出演作の数々でしょうか。


私的に野村萬斎のこれはと思ったのは以下2作。

2004年の教育テレビの劇場中継で見たギリシャ・アテネの古代劇場で上演された蜷川幸雄の「オイディプス王」での血塗れの迫真の演技。その因果の深さは見た後も、いや今も度肝を抜かれます。

そして本題に至る「ボレロ」。これは2013年のにっぽんの芸能で見た40人の日本舞踊家を率いた、あの正しくラヴェルの「ボレロ」です、いや、実に有り得ない。


でも「ボレロ」と言えば、バレエで頻繁に公演されるあれなのでは、それってモーリス・ベジャールの振付けなのではですよね。


その「ボレロ」。そもそもの出発から行くと、1928年にラヴェルがバレエ用に制作依頼されてのミムマム曲の体現で有り、年月を経て、いつの間にかオーケストラサウンドとして好評を博して行きます。


ですが、大きな分岐点はやってきます。1981年の映画「愛と哀しみのボレロ」です。

確か、思春期の頃に月曜ロードショーで前後編で見たのですけど、何か話が難解過ぎて、記憶がとびとびで、でも何か凄いスケールの映画だなと思ったまま大人に至りました。


映画「愛と哀しみのボレロ」。映像美と難解な物語で、ずっと心の中に止まっていたのですが、ミレニアムを越えた頃に無性に見たくなったので、地域密着のレンタルビデオ店に行ったら2巻セットが有り迷わず借りました。

まあです。大人になっても難解でした。一人何役もあるし、モチーフに心当たりあるぞとか、群像劇の配分が絶妙すぎて上手く感情移入も出来なかったりと。そして最期のスペクタクルシーンに至っては、今のダンサーの方が踊れるのではと思ったり。今にして思えば、その感受性若かったなと。寧ろ思春期で衝撃を確と受け止めた方が冴えていたのではと、ふと思います。


映画「愛と哀しみのボレロ」の最期のスペクタクルシーン「ボレロ」の振付けは、前述の巨匠のモーリス・ベジャールです。ここから波及しては、今に見られる「ボレロ」公演の殆どはモーリス・ベジャール作になります。

確かに、外国人のコンテンポラリーならば、もっと身体をフレキシブルを使ったアクティブな振付けも出来ると思うのですが、ここは敢えて身体に収め兎に角収め否が応にも収め、最期の大円団に繋げる訳です。

ここですよね。このエネルギーの向き所を楽しめる様にならないと、現代バレエの本質に近づけないものですよね。まあ初級者が言えるのはここまでです。


ここで漸く、野村萬斎の40人の日本舞踊家を率いた「ボレロ」です。

日本の舞踊家は、ここまで、揃いに揃ってエネルギーを内在か出来るものかと思ったら、ぱっと空間を取りに行く所行の華やかさ。

そして、野村萬斎に至っては、豊穣を喜ぶ天照大神如くの演舞の繰り出し。何と言うべきか、もはや祭典です。


単独の「MANSAIボレロ」も非常に有りなのですが、40人の日本舞踊家を率いた「ボレロ」を定期的に行って欲しいものです。


そして野村萬斎は東京五輪の開閉会式演出を行うのですが、この「ボレロ」あればこその催しが、きっと格段の出来で行われる事でしょう。バルセロナと北京の開会式越えられるなんて、今から胸が熱くなりません。いやそれ、平成の次の御世のお話になってどうするのですよね。

クラシック発、平成経由、新元号の祝宴。オリンピック開会式の歓喜の一入の後に”これって平成遺産だよね”と思って頂ければこれ幸いです。




最期の動画は、そのボレロを何遍か。


■『MANSAIボレロ』 野村萬斎 - 世田谷パブリックシアター開場20周年記念 MANSAI Bolero https://youtu.be/dCGzZmBDrJ8 @YouTubeさんから

もし自分がディレクターなら3倍の引きで撮りますけどね。野村萬斎 の所作に拘ったら、意図した「ボレロ」を違うと思う訳です。


□クロード・ルルーシュ監督が手掛けた名作!映画『愛と哀しみのボレロ』予告編 https://youtu.be/MPwruCUQnK0 @YouTubeさんから

もうトレーラーの段階でカオス感たっぷり。だけど最期の大円団で何もかも成立するのですよ。お話を広げ過ぎて悩んでる方、勉強の為に見られては如何でしょうか。

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