第12話
【子淀、子淀です。お忘れ物のないように……】
アナウンスが聞こえて、私は電車を降りた。
あの日と同じ風景。建物、店。
吐きそうだ。酔ったわけじゃないけど。
この風景を見ると思いだす。あの日のこと。
少なくともあの日より気分はずっと重く、店を回ろうという気にはならなかった。なれる筈もなかった。
改札を抜けるなり人目につかないようにこそこそと、足早に歩み始める。
大通りを一心不乱に歩く。
あの日より一層寒さが増している。寒い。このまま暖を取るようなところには足を踏み入れないが、歩みを進めるうちに自身からポカポカとしてきた。
コンビニを右に曲がり、さらに30分程歩く。
少しガタガタ歯を震わせながら、私は神社に着いた。
冷たい風が、死に損ないの私を出迎えた。
鳥居を眺める。根元には苔とかが生えている。
とても古い神社で、草木は生えたいように生えていて、落ち葉は落ちるがままに。
私はそんな草木の生き様にくすりと笑った。
この子達は生きたいように生きて、枯れるがままに枯れていく。
羨ましい。
私もこんな風に生きてみたかった。空を見上げれば、どこまでも広がっていて、それは無限で、私はちっぽけで……。
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